starting story
初投稿になります。
日々更新していこうと思いますので、興味がある方は是非読んでいってください。
一章 ユメの始まり
夢を見た。
楽しい、怖い、悲しい、残酷、寂しい、辛い、その全てが降り混ざったような不思議な物語。
校庭、女の子、夜、会話、大切な話、衝撃
そんな断片的な記憶が頭のなかで渦巻く。途中までは覚えているがそこから記憶がない。その先が知りたいがわからない。何かが起こった気がする。とても重要な何かが…
「いってきまーす!」
玄関の方で声がした。すぐに扉がしまる音がして家のなかには一人しかいなくなった。
急に寒気がして体がぶるっと震える。自室は二階の奥にあり、玄関から一番遠い。そして向かい側には道をはさんで山がそびえている。冷たい空気が入り込んでくるのでとても寒い。
冬のこの部屋は一言で形容すると極寒地獄だ。しかし布団の中は天国と形容出来るほどである。
今日は日曜日、つまり休日だ。このまま二度寝することも可能だ。そう考えるだけで幸せになれる。特に用事もない、と言うことは…
「おやすみー」
二度寝は本当に気持ちよくて、俺の意識はすぐに現実世界から切り離される。
運がいいのか、はたまた悪いのか同じ夢を見た。
目の前に立っているのは、あの子だ。そうさっきの夢で出会った…誰だっけ?
「君は面白いね」
急に言われても何がなんだかわからない。そんな俺に向かって、さらに声をかける。
「さっき会ったばかりなのにもう忘れてるの?」
「いや、大丈夫。覚えてるよ!」
先のことを考えずに行動するのは俺の悪い癖だ。ここがどこかもわからないうえに、よく覚えていない女の子に嘘をついてしまう。
まず情報を整理しよう。
ここはどこだ?・・・・・・・・・
この子は誰だ?・・・・・・・・・
よし、わかった!わからないということが!!
少しの間回想に浸っていた俺は目の前でお腹を抱えて笑う女の子に気付かなかった。
「何でそんな顔できるの?」
「そんな顔!?」
笑われても不快だが顔で笑われるのはもっと不快だ。友達にも顔は整っていて結構美人だなーって誉められたことはある。それにしてもかわいいわらい方だな。
「ごめんね。久しぶりのお客様だから」
お客様という単語に違和感を感じるが…ようやく笑いが収まった女の子は話始めた。
「じゃあ、説明しますね」
女の子に俺の返事を待たずに話続ける。
「君はここが夢だって知っているよね。その通りでもあるし、そうでないとも言えます」
ここで声のトーンが変わる。今までの少し子供っぽいかわいい声ではなく、大人びた威厳のある声。
「ここはみんなの夢世界。その名も『マルチ』」
「マルチ?」
聞きなれない単語に思わず聞き返す。そんな言葉にも少し間を置いて返答がくる。
「君がいつも見ている夢は『シングル』そこは理解してね」
これから説明されるであろうことを聞き漏らさないように真剣に聞き入る。
そこから数十分退屈な話を聞き続けた。どういうことか、あまり記憶がない。
この仕事に任命されてからもう三年がたつ。つまらない日常が過ぎるなかでも、よりつまらないものだ。初めてこの世界に来たか方々に現状説明する、ただそれだけの仕事だ。寂しいわけではない、物足りないのだ。現実世界では何も期待されないひ弱な女の子として生きている。まだ仕事を与えられているだけましなのだろうが…。楽しく過ごしたい、冒険したい、スリリングなこともしたい、不真面目にもしたい、心から笑いたい。
教えるのはこの世界とルールだけ、それを教えれば終わる。三ヶ月もたつと覚えている人間はほぼ皆無だ。覚えているとしても友達と呼べる人はいない。
「―と言うことで、ここら辺の地形はわかったね?じゃあ、あとは………」
あっけにとられた。人の話を聞かない愚か者が目の前にいたのだ。すーすーと可愛らしいいびきをかきながら寝ている。
自分の説明を聞いていない愚か者に腹が立った。でも、それだけではない。何か他の人とは違うものを感じる。
「この人なら連れていってくれるかもしれない」
耳元で言っても聞こえない位小さな声で呟き、同時に目の前の愚か者を力一杯殴り飛ばす。
ヒグッと目の前の男は短い悲鳴を放つと五メートルほどぶっ飛ぶ。
「君には口で説明しても分からないようだね」
不思議と両の拳に力が入りその指先を突き立てる。
「これから君には身をもって理解してもらいます!私によって手取り足取り!!」
この時、まだ気づいていなかった。この決断が二人を楽しく、辛く、残酷な冒険に駆り立てることになる。
全くもってこの世界は面白い。それが自称(案内人)の少女との手ほどきで感じたものだ。物を思うだけでそれが現実になる。これは比喩でも何でもなくこの世界では、確かな―
思っているうちに次のモンスターが沸いてくる。
モンスターは三匹。猪のようなシルエットで毛は金色、大きさは猫ぐらいだ。見るからに猪の攻撃は弱そうだがとにかく素早い、らしい。
らしい、と言うのは先程から100は倒している筈なのに一体も出てこなかったからだ。
どのモンスターもエレメント、イメージ…だっけ、を使えば効率的に倒せるらしい。
右側から猪が猫もビックリの素早さで接近してくる。
慌てることなくエレメントを出す左右の手に意識を集中させる。左右の手の中が弱い光で満たされていく。このまま、なにもしなければ光は消えてしまう。だが、ここで追い討ちをかけるように左右の手にイメージを注ぎ込む。すると、弱い光は半透明な結晶に姿を変える。更にガラスを加工するときのように―、パリンッと薄いガラスが砕けるような音がする。
両手に握られているのは鋭い刃を持つナイフに変わっている。
ここまでの過程で一秒も経っていない。だが、予想以上に速い猪は俺の半径五メートル以内に侵入している。
すぐに猪の体当たりが飛んでくる。俺は体を右に反らすように猪の攻撃を避ける。そこに絶好のチャンスが生まれる。
右手のナイフを猪の横腹に突き刺す。手応えは思った以上に大きい。お構い無しに腕を振り切ると猪は数メートル飛んで空中でまばゆい光となって飛び散る。
端から見ると交差しただけで片方が消滅した。そのような絵になっているかもしれない。なってたとしたら、ワクワクするなー♪何てことを考えながら残り2匹に照準を合わせる。
残った二匹の猪たちは少しの間、固まっていたがすぐに体当たりを試みてくる。
今度は左右からの同時体当たり。小さい体であるとしてもこのスピードでぶつかればただでは済まないだろう。
俺は体勢を低くとり、左右の手の力を抜く。そうこうしている内に猪たちは左右から襲いかかる。
低い体勢にしているところから更に膝をつくところまでしゃがむ。猪たちは俺の真上に位置することになる。あとは手を三十センチ程上に動かすだけ―。
「いやー勝った勝った♪」
目の前の一瞬の攻防を見て声がでなくなった。さっきのうとうとしていた男とは別人のようだ。
「さっきのって、初心者向けのモンスターだろ。次はどんな強いのが来るのかなー♪」
あり得ない、基礎の基礎を教えただけだ。エレメントイメージは制御が難しくはじめは暴走したりするものだ。私は当然使いこなせますけど…
それに何か他の人間とは違う雰囲気を持っていて、
人間嫌いの私も一緒に行動することになっている。
「もっかい、何か倒しとく?」
無茶言わないでほしい。手解き含めてのこの三時間でもうくたくた。さっきの戦闘だって、任せっきりだったのに。
「あなたわかってるの!?さっきの、モンスターこの辺りでは一番強いんだよ!!」
「え?てっきり雑魚だと…」
本当に恐ろしい男だ。あれを秒殺するとは信じられない。まぁ、報酬はたんまり貰えたけど…
「アイスクリーム食べにいってくる。―あなたの報酬で」
あー、どうしていつもこういう対応をしてしまうんだろう。と思いながらも少し期待を込めて後ろを見る。
「俺も行く」
内心ヤッターと思いながら、なんであんなそっけない態度を…って思ったり。
やっぱりこっちも名乗るべきかな?でも、迷惑かもしれないし、何も言わなかったら失礼よね、よろしく位なら大丈夫かも。
「…よ、よろしく、お、お願いします。一真くん」
我ながら本当に恥ずかしい返事だ。さっきはちゃんと言えてたのにー。慣れないことは苦手だ。絶対におかしな人って思われた。やっぱり誘わない方がよかったのかな?
「アイスかー。夢の中にもあるのか」
久しぶりに頭を使った。多分、今私の頭からは湯気がもくもくと吹き出しているだろう。
そんな私には気付く素振りも見せずに一真くんは隣を歩いてくれた。
第一部書き終えました。
ヒロインのキャラが何気にかわいいと書いてて思いました。
キャラの性格が不安定になってるきがして少々心配です。まだ二人しか出てないのに厳密には三人か―
これからも頑張ります!!