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Crisis  作者: Ren@
3/3

Chapter +02  いけるかも。

だいぶ間が空いてしまいました(汗

いつの間にか炬燵が似合う時期。



「うおりゃあっっ!!」


 ぶんっ!


 蓮は目の前に迫る‘スカルドラゴン’と間合いを取るべく銃を振り回している。

 スカルドラゴンとは名前の通り、その身体の大半を骨が占めているドラゴンである。


 蓮の持っている銃は‘チャージガン’に分類される特殊な形状をしており、名前の通り溜めからの発砲を主力とした武器だ。弾の代わりに起動者のエネルギーを使う。

 軽量系、重量系両とも高い威力を誇り使用者も多いが、間合いを取るのが難しく、溜め時間も長いので初心者には扱いが難しい。

 

 


「キシャアアアアッ!」



 スカルドラゴンは銃に驚き、後方ジャンプをするが、同時に毒の含まれる唾を吐き出した。

 蓮の服がジュウッと音を立て蒸発する。少し腕に痛みが走った。やけどみたいだ。


 銃を一旦消滅させて蓮は大きく跳躍する。ドクター状態だと月の表面に居るようだ。体が軽い。軽すぎて、まだうまく感覚がつかめないが。

 十分な距離が取れたところでもう一度銃を召喚する。蓮の召喚方法は腕を突出し、指をじゃんけんのぐっちょっぱのような形にする事で発動する。


 詳しく説明すると、初めに人差し指と中指を突き出すことで空中に光る青い弧が現れ、次に親指を立てることによって弧の中央に紋様が描かれる。その模様が示す武器を召喚することができるのだ。

 

 とはいえまだ武器をチャージガン、≪人食い鮫キラーシャーク≫しか持ち歩いていない蓮には召喚士ならではの多彩な攻め方はできない。

 

 狙いを定めてトリガーを引く。震える手を必死に抑え込んだ。青色に光り、数秒後光線が走った。


「キュオルルッッ!!」


 スカルドラゴンが叫ぶと同時に爆風が視界を包んだ。手ごたえがある! これでドラゴンを倒したかどうだかわからないが、致命傷を与えられたはずだ。


 視界が晴れてきた。蓮の予想通り、ドラゴンの身体にはいくつもの傷が見えた。≪人食い鮫キラーシャーク≫は拡散系の銃なので、恐らく体に触れた瞬間に弾が弾け飛んだのだろう。


「やった! いけるかも!」

「蓮ちゃん!いい調子だよっ」



 初めてのウイルス狩りに緊張しながらも調子をつかんだ様子の蓮を見て、早弥は微笑んだ。不意に、ケータイの着信音が鳴った。慌ててカバンから取り出し。


「もしもしっ?」 

『そう慌てるな。俺だ。会長だ。どうだ、蓮の様子は。』

「ビックリしたじゃないですかあっ! あっ、蓮ちゃんはいい調子です!Aレベルとはいえドラゴン系は初心者にはきついのに、流れをうまく引き込んでる感じで…」


 遠方を見ると、身軽に攻撃を躱す蓮がいた。




 何故このような状況になっているのかは、数時間前にさかのぼる。






■18:12  なでしこ連合基地


 全員をソファやいすに座らせると、会長は「コホン」と咳をし、説明を始めたのだった。


「俺が見るところ、蓮には才能がある。ドクターのな。それとお前ら、先日白夜が言っていたことを覚えているか?」

「近々新しいメンバーが登場するってこと? 予言めいた感じで言ってたけど…」


 首を捻りながら未奈は口を開く。蓮は白夜という人物については知らないが、様子を見る限りメンバーだということは分かった。


「あ、白夜っていうのはね、なでしこにもよく来るけど、多重契約しててほかの同盟にも行くから神出鬼没なんだ。すっごい強い男の子なの。」


 早弥が丁寧に説明をしてくれた。ありがたい。にしても、多重契約とかできるのか。

 蓮にとっては驚きの方が大きかった。なんか、いい人じゃないっぽいな。


「俺には前からしつこく、念を押されるように言われてきたことがある。」


 会長のその後の回想話をまとめると、こうだ。




 もともと白夜と会長は‘特殊な環境’に置かれていた。白夜とはちょっと違うつながりを持っている。そもそも白夜の父は<ドクターのメカニズムを明白にし、そのメカニズムを‘段階化’した>という、つまりはこの職の社長レベルで、白夜も業界では‘エリートの息子’という目で見られている。

 白夜も実力者なのだから大したプレッシャーにはならなかったのだが、そんな彼は数週間前のある日会長を呼び出しこういったのだという。


「‘クライシス’って、あんたは何か知っているかい?」

「伝説程度には聞いたことがある。願いを無限に叶えられるライフだろ?」

「僕は遂にそれを見つけたんだ。」


 狂気めいた笑顔で彼は確かにそう言った。


「なんだと…机上論じゃなかったのか、奴の存在は…」

「銀色の髪の女の子」

「ん?」

「近々、あんたのとこにやってくるだろう。そいつが鍵を握ってる。」

「は?」

「じゃあね、期待してるよ。」

「ちょっと待て!どうしてそんなことが解る??」


 その質問に答えとして不敵な笑みを浮かべながら去って行った。







 この話には興味がある。

 たしかに自分は銀色の髪だがなにもクライシスについて全く知らなかった。だが蓮は別な部分に興味を抱いているのだった。



 ドクターのメカニズム


 知っているようで知らない。それだけではない。先程の話だと、それはまるで‘段階的’に起こるという。だんだんエスカレートするという意味だろうか。何だか悪い意味しか浮かばない。


 蓮は額を寄せながら考え込んだ。

 


 その予測が当たっていることなど、その時の彼女が知る筈もない。




 一方で会長は、蓮にドクターについての説明が曖昧だったことに気づいた。


「ドクターというのは、ウイルスを倒し、ライフを集める仕事をするものだ。一見狩りがメインに見えるが、実際のドクターたちはライフ集めが本職だろう。なんたって願いを叶えられるのだからな。」

「願いをかなえる??」


「そうだ。ライフには5つの種類がある。赤は戦闘系、青は勉学系、オレンジは金銭系、緑は治癒系、紫は心理系。それぞれを一定の数集めると、願いをかなえることができる。その‘一定の数’は、個人によって違い、ドクターの所持品である‘紋章’が教えてくれる。」


 夏海が紋章それを取り出した。なでしこのマークらしきものが描かれている。そのマークしか見えないが、ライフの目標数値カウンターは他人には見えない作りになっているらしい。


「主にライフは宝石の形を取っている。ウイルスのレベルが上がると、その形も変わってくるんだがな。まあ、‘習うより慣れよ’。兎にも角にも契約から始めなければならない。白夜は少なくともそういう意味で俺にこの仕事を託したのだろうからな。蓮、こっちへ来い。」

「は、はい…」



 言われるままに二階の一番奥の部屋に連れて行かれた。会長はドアノブに飛びつき、自分の体重を利用してそれを回転させる。器用だが可愛い。


 部屋の中は真っ白だった。あの時のテリトリーみたいだ。奥に書斎らしき机が浮いている・・・・・。まあ恐らく床に置いてあるのだろうが、この空間では境界線さえもはっきりしないので、浮いて見える。書斎にはこれでもかというくらい本や資料らしき紙が山積みにされていた。掃除しろよ。



「召喚。」


 会長が呟くと同時にその背後に紋様が現れる。巨大な、‘何か’が現れた。



 それにはまるで時計の中身のようにびっしりと歯車が詰め込まれている。その歯車が動かしているのは大きな針。

 外側の縁を見ると何か絵が書かれていた。

 絵には12ほどの種類があるが、ごちゃごちゃして何を表しているのか解らない物の方が多かった。

 蓮が読み取れたのは、髑髏と、マスケット銃、剣、大の字の人。

 何かを指し示す機械なのだろうか。時計のようだが、その針の動きは行ったり来たりとめぐるましい。


「廻れ、奇跡の一族の末裔よクロック・オブ・ヘブン、かの人の運命を指し示せ。」


 すると時計は蒸気をあげ、針が勢いよく廻りだした。だんだんとその動きは遅くなり、一度大の字の人を指し示した。


「ん?」


 会長が顔を顰めたが、針はその動きが完全に止まる前に、もう一度ゆっくりと円盤の上を滑り、今度は違う絵の上に止まった。目を凝らしてみると、円と、その内側に何か模様が描かれている。先程会長が召喚したときのマークに似ている。まさか召喚士になるのだろうか。


「……お前の能力は召喚系魔術師。色は赤色だ。」


 かっこいい名前だが実際はただの召喚士だ。そういえばなっちゃんが「召喚は誰でも使える」って言ってたな。


「能力は大概熟練してから身に付く。そういやそうな顔をするな。お前にはお前に見合った能力が必ず与えられるさ。」


 心の内が顔に出ていたようで、蓮は顔を真っ赤にした。


「これがお前の‘マスターキー’。それと‘紋章’だ。失くすなよ。」

「マスターキー?」

「テリトリーやここのような特殊空間に入るための道具だ。生命体は誰でも持っているが、それを自覚し、所持することは医者だけが可能であり、医者だけに許された特権だ。また、俺たちにとってはライフでもある。壊されたら…どうなるだろうな?」

「ほぇええ…死ぬ、ってことですか?」


 会長は何も答えなかった。

 マスターキーと紋章は、夏海のそれと違い、赤を基調とした感じであった。マスターキーの身体は黄金だが、はめ込まれた宝石の色は赤色。なっちゃんのは確か緑だったな。紋章も、なでしこのマークはやはり金だが、バックはえんじ色となっている。



 一通り終えて部屋を出ると、山田、と呼ばれた人物が帰ってきたらしく盛り上がっていた。


「君が新人さんかな? ボ、ボクは山田ヤマダ里央リオ。同じ唐草学園…っていっても解んないだろうな。クラス離れてるし。君の事は知ってるよ。よ、よろしく。」


 一人でべらべらと喋ってくれた。噛みまくっていたのは聞かなかったことにしよう。


「こう見えてもあいつ女だから」

「えっ??」



 

「お、早速ウイルスが現れたみたいだぞ。レベルAだから訓練にちょうどいいな。早速戦ってこい。因みに武器は俺が昔使っていた奴が入っている。柏原!観てやってくれ。」

「は、はい!」

「え?ちょっと待って!レベルって何?あと召喚の仕方解んないんだけどー!!」











 それで今に至る。

 驚いたことに、マスターキーを使ってテリトリーに入ると服が変わっていた。

 マフラーと、コートと、ショートブーツと、かぼちゃパンツと…いつの間にかネクタイまでつけている。

 色は、コートやブーツは真っ黒だが、袖の折口やマフラーなどはピンクが基調となっている。

 予想より赤っぽくないが、これがまあ、自分の戦闘服なのだろう。


 見渡す限り岩。岩。

 とにかくごつごつしたフィールドだった。

 ドラゴンがいかにも住んでいそうな。

 


 召喚方法は紋章が教えてくれた。


『召喚は人によって違ってきます。』

「はあ。」

『貴方の召喚は、大体こんな感じです。』


 声はどこかで聞いたことのある柔らかい機械音だった。 

 指が勝手に動いた。すると紋様が現れ、中から銃が出てきた。銃の上に、サメのような鎧が被さっている。そんな感じだ。

 見慣れない形だったが、想像以上の軽さだ。軽量級という事と、両手に違う武器を持って交互に攻撃していくのを考慮されて造られた武器らしい。

 って、それも紋章さんが言ってました。



 どうしてスカルドラゴンが最下級であるA級に分類されるのかがわかった気がする。奴は、こちらが攻撃してくるまで一歩も動かないのだ。つまり性格は争いを好んでいない。攻撃的ではない。

 

 ところで蓮には、まだチャージガンのショットした感覚が残っていた。

 ウイルスを傷つけた感覚。銃は比較的殺しの感覚が残らないというが、それは全くのウソだ。

 蓮にはわずかな罪悪感が残っていた。

 

 (ホントは躊躇しちゃダメなとこだよね…ここ…。)


 静かに構えを崩した。

 銃を下した瞬間、自分がまだ震えていたことに気づく。


 (みんなは…怖くないのかな…。)


 指が上手く動かせない。

 銃に張り付いたまま、右手首は静かに震えていた。


 しばらく爆風は治まらなかった。




 しかし。




 「蓮ちゃん!危ない!」


 急に早弥の声が飛ぶ。

 はっとした蓮の目の前には粉塵を裂いたドラゴンが迫っていた。



 (いつの間…!!!)


 思考回路が停止する。

 気が付くと背中を痛みが襲ってきた。

 痛い。やられたんだ。

 と後で気づく。


 テリトリーの岩場に背中を打ってしまった様で、余りの痛みにゴホゴホとむせた。

 同時に血を吐いた。

 余りの赤さに蓮は驚いて飲み込もうとする。


 「!!」


 口の中は石が入り込んでいたようだ。

 歯が砕かれるような痛みと、無機質な味覚が蓮を襲い、頭が真っ白になる。



 (強い……!)




ウオオオオオオオッッ!!!


 オオカミのような咆哮が木霊する。


 動けない。


 どうすればいい?


 咄嗟に銃を構えその先をドラゴンに向ける。


 震えんな自分!

 今撃たなきゃ…今撃たなきゃ…っ!!

 

 視界がにじむ。



 ゆっくり歩いてくる。

 ゆらゆらと体を揺らしながら、爪をギラギラと反射させながら。

 その口内でエネルギーが凝縮されていく。


 赤く、白く、熱を放ちながらそれは大きさを増していく。

 

 もう駄目だ…。

 血と涙でくしゃくしゃになった顔のまま、蓮は何もできなかった。


 そのとき。


 「メロディースロット!【共鳴】!」

  

 ドガン!



 突然目の前を閃光が走った。同時に琴の音が波紋のように広がり、ドラゴンのエネルギー体が破壊される。


 ようやく晴れてきた視界に映ったのは、魔法少女のようなフリル満載の服を纏ってこちらを振り返る柏原早弥の姿だった。



 「遅くなっちゃってごめんね!」



 もう、大丈夫だよ。





今回短い割に色々と設定が出てきて分かりにくかっただろうと思います。。。



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