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Crisis  作者: Ren@
2/3

Chapter +01  知ってた

投稿遅くなりました!



途中、空港にある‘あれ’の名称が解らず表現に苦しみました…

なんて言うんだっけ…あの、エスカレータみたいな…


【注意!】今回グロい表現があります!R15にしようか迷いましたが自分がまだ15じゃないんでやめにしました

誕生日は数週間後ですので15歳になったら指定しようと思います

■同時刻  場所不明


「はぁっはぁっはぁっ!!!」


赤く光る月に照らされた摩天楼。

その鉄筋板の上を、一人疾走する少女。


背後には、ドロドロとした、スライムを連想させる怪物ウイルスが、波のように迫っていた。

大きさは少女の体長の半分ほどだが、いたるところから生えたり分裂したりして増えていく。


「倒してもきりがないよ!!」


そう独り言にしては大きな声を吐き出しながら、彼女は左手をウイルスに向かって振り上げた。


彼女の左手には大きなショットガンが装着されていた。

いや、もう左手そのものが凶器だと言ってもよいのかもしれない。

ウイルスに向かって銃口から‘何か’が放たれる。

命中すると、ウイルスは断末魔を響かせた。

同時にウイルスの身体は解け始めた。


「ったく!ボクの塩酸がいつまでもつか…」


顔に不安を残しながら彼女はガンを振り回した。


そう、彼女は武器に‘塩酸’をセットし、それをウイルスに当てることで相手を殺す、という戦い方を取っているのだ。

えんさん’が無くなったらしく、肩に斜め掛けしたベルト状の試験管入れから一つ試験管を取出し、本来で二の腕にあたる部分にそれをセットする。


だが勝負はもう見えていた。

彼女の体力は限界、相手は無限に増え続ける。

恐らく増殖の根源には何かのからくりがあるのだろうが、この数では戦うほかの選択肢が取れなかった。


「ったく!会長もボクの経験が長いからってこんな任務を押し付けるなんて…まあでも今は打開策を考えるしかない…無線はつながらないし…」


ふと上を見上げた。

摩天楼の、コンクリートが突き出た部分に、大きな緑色の宝石があった。


「…ライフだ!! ウイルスを倒してないのに見つかるなんてラッキー!!あれさえとっちまえばこっちのもんだな。」


満面の笑みを浮かべ、彼女は大きくジャンプをする。

コンクリートの上を身軽に飛び回りながら、距離を縮めていった。

もう、ライフと呼ばれたそれは目の前に迫っていた。


「ボクの勝……」


しかし、異変に気付く。ライフが動き出したではないか。

それは、宝石のように化けていた、ウイルスの姿だった。


「しまった!!」


逃げようとしたが至近距離にいるウイルスが、それを許さなかった。

刃に姿を変え、襲ってくる。

もう、逃げられなかった。


「がっ…ああっ……!!」


そのままウイルスは、


彼女の心臓を貫いた。

魔法が解けたのか、左手の武器が消え、本来の人間の腕に戻る。



一瞬にして、コンクリートは赤色に染まった。









■一時間後  廃ビルにて


「こ、これが、秘密基地…? 凄くボロいじゃん。震度3くらいで倒れそう。」


蓮は夏海に案内され‘なでしこ連合基地’まで来ていたのだが。

目の前にそびえたつ建物に、蓮は色々な意味で唖然としていた。


「こっちへ来な。それと、感想は入ってから言った方がいいよ?」


ドアの前に立つ夏海。蓮も後を追って、蹴っ飛ばせそうなほど古くなったドアの前に立った。

中は広そうだ、と蓮は思った。建物自体、すごく大きい。

だが、期待するのはよくない。


「(まあ、こういうところも、趣があるよね…。)」


蓮はそう思うことであきらめがついたらしい。

ため息をつきながら視線を下に落とすと、見慣れたものが目に付いた。


‘鍵穴’


先程見つけた‘鍵穴’

テリトリーと現実世界とをつなげる‘鍵穴’

それが今、目の前のドアに堂々とついている。



「なっちゃん!これさっき見た……」

「え?これ、あんた知ってんの?じゃあ話が早いや。これ使って行くんだよ。」


ウイルスに殺されそうになったことを思い出し、身構える連だったが、夏海にそのような気が感じられないのを不思議に思った。


「こ、この中に、ウイルスがいるんだろっっ?早く倒さなきゃじゃん!!」

「は?」

「え?」


お互いは顔を見合わせる。

蓮の額から汗が滴った。夏海が顔を顰める。


「あのなあ、この穴がいつもテリトリーとつながってるわけじゃないの。あたしたち‘ドクター’もこれ利用してんだから。」


「へ?そうだったの?」


「そ。この‘キー’さえ使えばどこにでも行けるんだからね。ま、ここで立ち話っていうのもなんだから、中に入ろ。」


そういいながら、夏海は懐から‘キー’を取り出した。

ごく普通の形をした、しかし異様な雰囲気を放ち黄金に煌めくカギに蓮の目は釘付けになった。

静かにそれを鍵穴へと運び、差し込む。



カチッ



心地よい響きだった。夏海がドアノブに手を掛け、そっと押した。

同時にまばゆい光がドアの向こう側からあふれ出した。

その向こうに行こうと踏み出す夏海が、刹那、消えてしまうのではないかと蓮は思った。


慌てて追いかけた。


「ちょっと待って!キーって何?ドクターって何? 他にも聞きたいこといっぱいあるし…!宝石の事と…か…、」


光が消えた。


「あ。」


視界が戻ってくるのと同時に飛び込んできた光景に、思わず声が漏れた。


つやを放つ床。それに敷かれた高級感を放つカーペット。絵画。2階への階段。カウンターテーブル。いくつもの扉。柔らかそうなソファ。


高級マンションの一室のような、そんな空間だった。


「(ここって…。)」


同時に蓮は違和感を覚えていた。


「ようこそ。ここが‘なでしこ連合基地’だよ。」

「……うん。凄い…。」


辺りを見回して、同時にため息が漏れた。


「よく、来てくれたな。」

「あ、会長。」

「え?!どこどこ?!」


どんな威厳のある人が来ているのかと、あたりを見回す。


「…いないじゃん。それとも何、私には見えないとか?」


鼻を鳴らして笑う蓮の足もとで「コホン」と咳が聞こえた。

蓮は夏海の視線の先に気づいた。


下。



恐る恐る見てみると。

そこには一匹の狐の姿が。しかも小さく、足も短いのに尻尾はやたら長い。

頭には太極を思わせる毛が生えていた。それが何となく現実離れをしている感じを出している。


「え??こんなぬいぐるみが会長??」

「殺すぞ?」

「……すみません…。」


小さい癖に殺気は鋭かった。








「ふーむ…確かにこいつにもドクターの素質はありそうだな。」

「でしょー。」


ソファにも前に乗り出すようにして座っている蓮をじろじろと見つめ、会長はうなずいた。

夏海も何をたくらんでいるのかにこにこと笑っている。


「ドクターって、ウイルスを倒す仕事してる人たちでしょ?」

「簡潔に言うとそうだ。だが簡単ではないぞ。命を落とすこともよくある。」

「よく?!」

「そりゃあ、いつも命がけだよ。」


ただでさえ気味が悪いのに、命の心配もしなくちゃならないのか…


と蓮は息をのんだ。

確かにあの時、助けられたときはかっこいいと思った。しかしここまで厳しい世界なら、自分は足手まといかもしれない。でも。


「あ、私……!」

「まあ、今日中に結論を出す必要はない。大切なことだしな。」

「はい…でも私、ここを前から知ってたんじゃないかって、そんな気がするんです。」

「!!」

「え?ドクターでもないあんたが??」


二人が思ったよりも驚きの表情を浮かべたので、蓮はたじろいだ。

両手を前で横に振る。


「いや、うん、でも!私記憶喪失だし…もしかしたら、似たようなとこにデジャヴを感じてるのかもしれないし!」


「(!! 記憶喪失!!)」


会長はまた何かに引っかかるようにして顔を顰めた。



カシャカシャッ




「あれ?会長、みんな呼んだの?」


夏海の声に蓮もドアの方を向いた。

ドアが開いた。もちろん人工的に。


「あれ?なっちゃんじゃーん!久しぶり!」

「お久しぶりですわね♪あら、あちらにいらっしゃるのは新人さんかしら?まあ、なでしこへようこそおいでなさったこと♪」


知らない顔。

が、4つ。


「ホントホント!みっちゃんこそ久しぶりー!!」

「あっ…えっと…。」


どうやら夏海の知り合い…というかなでしこのメンバーらしいが、蓮は顔を見たことがなかった。

恐らく違う地域の学生なのだろう、4人はさまざまな制服を着ている。

言葉に詰まる蓮。

その様子に気づいたのか、5人は顔を見合わせた。


「じゃ、自己紹介しよっか!」






「まずはわたくしですわね。私は桜山さくらやま祥佳さちか。よろしくお願いします。」


丁寧にお辞儀をしたのは紫色の長髪で、優雅な仕草の少女だ。

その丁寧な態度に、蓮も思わず頭を下げる。


「こ、こちらこそっ!」


「次はうち? あ、うちはね、茨木いばらき未奈みな!こっちは双子の妹の由依ゆい

「もう未奈ちゃん!勝手に言わないでよ~!あ、よろしくね!」


「えーと、青い髪の方がお姉ちゃんで、ピンクの方が妹だね、よしわかった!」


間違えそうなほどそっくりだった。


「あ、あたしが最後? えーと、柏原かしわばら早弥さやです。よろしく。」


向こうの方が照れているようだった。黄色い髪を三つ編みでまとめている。


「ありがとう。こっちこそよろしく。」


なぜかお礼を言った蓮であった。


「私は黒鋼蓮、です!ドクターになるかは、まだ決めてないんだけど…」

「いや」


蓮の話が会長によってさえぎられる。


「蓮はドクターにならなければならんようだ。」

「「ええっ??」」


全員が驚きの声を上げた。

蓮はもちろんだが、夏海たちも驚いたのはドクター就職を会長が強制したところを初めて見たからなのだった。

ドクターになるのを強制することはできない、というのは、ドクターの間では暗黙の了解のようなものであった。ドクターになる運命の者はドクターになる道を避けることはできないし、逆の場合も誰かに変えられるようなことではない。


だが、今回会長ははっきりと告げたのだった。


ドクターになれ、と。

たとえそれが、間違った道だとしても。破滅の始まりであっても…。



「詳しい事は後で話す。ところで、山田はまだなのか?」

「あ、そういえば」と、由依。

「でもあいつ、連絡つながらないしなあ…」

夏海がため息をついた。


「ま、どうせ戻ってくるだろ?あいつのことだから。」





「あいつはまだ、死とかそーゆーの、知らないしさ。」









■数分後  場所不明


「……ガハッ!」


少女が血を吐き出した。もう、死は確実だというのに、ウイルスは貫いた手を抜こうとしない。

彼女の口元が歪んだ。

笑った。


「油断したよ。‘廃人’の能力が無かったら死んでたね」


その瞬間。彼女は‘消えた’。

粉々になったようにも見えた。


次の瞬間、ウイルスの背後から声がした。


「ボクの勝ちだ。」


先程のショットガンから塩酸が放たれる。

慌ててウイルスは体を変形させ、ぎりぎりで躱した。


「君はどうやらここの隊長格らしいけど、残念ながら勝負は見えた。」


動揺のあまり腕を勢いよく突き出す。

彼女の首に的中し、そのまま横に振られた腕の先が首を‘飛ばした’。

しかしまたもや塵のように彼女の身体は消え、離れた鉄の中から穴を掘るようにして‘湧いて出てきた’。


「ぷはっ。……だーかーら、そんなんじゃボクは死なないって。」


服についている鋼の粉を丁寧に叩き落とした。

本当に鋼の中を掘って出てきたらしい。


ウイルスは隙を見て逃げ出した。

鉄にまとわりつきながら進むその速度は予想以上に速い。


「はぁ、やれやれ。手間をかけさせないでくれないかな。」


そう呟きながら彼女は銃口を向けた。だが今度は少し違う。

ゆっくりと、銃口が赤色に輝きだした。

さらに左耳についている小型無線機から半透明の赤い板が出て、左目に覆いかぶさる。

そのガイドに「標的捕獲ターゲットロックオン」の文字が浮かび上がった。


「チャージ開始。」


冷たく言い放つと、滑るように歩き始める。

ウイルスはまだ逃げ続ける。

彼女の歩み自体は遅い。しかし、まるで地面が動いているかのように、文字通り滑るようにして進む速度は、見た目の2倍以上はあった。


「カウントダウン開始。5、4。」


まるで鬼ごっこのような光景。

しかし、慌てて逃げ惑う子供に、鬼はあくまで容赦ない。


「3、2、」


遂にビルから突き出した棒の先に追い詰められ、ウイルスは逃げ場をなくした。

背後に迫る存在に驚いて、振り返るその身体は恐怖に震えている。


「1」


未来は見えたも同然だった。


「0」





どっ!!!







勢いを加えられた塩酸は、鉄棒の先もろとも破壊した。


「逆転勝利…かな。いや、はじめからボクは負けてなかったね。」


彼女の手には、緑色の宝石が握られていた。

テリトリーが消え、もとの住宅街に戻ったその上には。


白い三日月が微笑んでいた。






「……ぶえくしょん!!!…うー。誰か、ボクの噂してないか?……あっ!そういえば会長に呼ばれてるんだったっ!いそがねば!」



言い忘れてましたが、

山田と夏海はメガネかけてます(笑)

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