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転生したら巨人でした。~人間サイズの街を踏まないように生きるの、難しすぎるんですけど~  作者: nekorovin2501


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第2話 飯と服と、巨人の日常問題

森の奥深く。

俺はリナを掌に乗せたまま、慎重に歩いていた。

一歩ごとに、木々がバキバキと折れる音がする。

地面に足跡が残る。

いや、足跡じゃなくて、陥没穴だ。

俺の体重だけで、土が沈むんだから仕方ない。

「ケンタ、もっとゆっくり! 揺れるよぉ!」

リナが掌の上で文句を言う。

この子、さっきまでガクガク震えてたくせに、慣れるの早いな。

「悪ぃ。巨人の歩き方なんて、習ったことねえよ」

ようやく、開けた場所を見つけた。

川が流れる渓谷で、周囲に高い岩壁がある。

ここなら、俺が動いても村に影響が出にくいはずだ。

掌を地面にそっと下ろす。

リナが飛び降りる。

「ふぅ……。生きてる」

「お前、俺のこと信用してないだろ」

「信用してるよ! でも、でっかいんだもん。怖いよ」

リナは笑いながら、俺を見上げる。

その視線が、なんだか新鮮だ。

前世じゃ、こんな風に誰かから見上げられることなんてなかった。

腹が鳴った。

グゥゥゥ……と、低い地響きみたいな音。

リナが耳を塞ぐ。

「うわっ! また雷みたいな音!」

「腹減ったんだよ……。何か食うもんないか?」

リナは周りを見回す。

「森だから、木の実とかベリーとか……あ、川に魚がいるかも!」

魚か。

いいね。

俺は川に近づいた。

川幅は俺の足の長さくらい。

深さは……膝くらいかな。

覗き込むと、小さな魚が群れをなして泳いでいる。

「よし、捕まえるぞ」

手を伸ばす。

でも、指が太すぎて、魚がつかめない。

水面に触れただけで、波が立って魚が逃げる。

「くそっ……」

次は、掌で掬ってみる。

ドボン。

水しぶきが上がって、リナがびしょ濡れになる。

「きゃあ! ケンタのバカァ!」

「すまん! 力加減が……」

結局、魚は一匹も捕まえられなかった。

腹はますます減る。

「……もういいや。木食うか」

近くの木を一本、引き抜く。

根っこごと。

土が飛び散って、リナがまた文句を言う。

木の葉をむしゃむしゃ食ってみる。

味は……苦い草みたいな。

でも、腹の足しにはなるか。

「ケンタ、それおいしいの?」

「不味い。マジで不味い」

一本じゃ足りない。

二本、三本……五本目を引き抜いた頃、リナが止めた。

「待って! 森がハゲになるよ! もっと効率いい方法ないの?」

効率か。

前世の知識で、何か……。

そうだ。

罠だ。

いや、俺のサイズなら、網みたいなの作れるかも。

「リナ、村に縄とかある? 持ってきてくれないか」

「縄? うん、倉庫にあるよ。でも、なんで?」

「魚捕まえる網作るんだよ。巨人のサイズで」

リナの目が輝く。

「わかった! 待っててね!」

リナは走って村に戻っていった。

一人残された俺は、座って待つ。

ドスン。

またクレーターができる。

……暇だな。

この体、どれくらいデカいんだろう。

立ち上がって、近くの山を見上げる。

いや、見下ろす。

山の頂上が、俺の胸くらいの高さだ。

「30メートル級か……。東京タワーより小さいけど、十分ヤバい」

服がないのも問題だ。

今は下半身に木の皮を巻いてるだけ。

でも、これじゃすぐボロボロになる。

リナが戻ってきたのは、30分後くらいか。

村の男たちを数人引き連れて。

「おーい、ケンタ! 縄持ってきたよ!」

男たちは俺を見て、青ざめている。

剣や槍を持ってるけど、手が震えてる。

「リ、リナ……本当にこいつは味方なのか?」

「うん! ケンタは優しいよ! さっきも私を助けてくれたんだから!」

俺はしゃがんで、声を抑える。

「……よろしく。危害加える気はないよ」

声がでかいせいで、みんな後ずさりする。

リナが縄の束を差し出す。

人間サイズの縄が、数十本。

俺の指でつまむと、糸みたいに細い。

「これで網作るのか……。細かすぎて無理だろ」

「えー! じゃあどうするの?」

そうだな。

木の蔓とか使えばいいか。

「俺が作るよ。みんな、ちょっと離れてて」

俺は森の蔓を集め始めた。

一本の蔓が、俺の手じゃ針金みたい。

編むのも一苦労。

指が太すぎて、細かい作業ができない。

結局、粗い網になった。

網目が人間の家くらいの大きさだ。

「これで魚捕まえられるかな……」

川に沈めて、待つ。

数分後、引き上げると……。

魚が数百匹。

いや、数千匹か。

網がデカすぎて、川の魚を根こそぎ捕まえた。

「すげえ! ケンタ、天才!」

リナが喜ぶ。

村の男たちも、恐る恐る近づいてくる。

「こ、こいつ……本当に味方か?」

「魚、分けてやるよ。村で食え」

俺は網から魚を振り落とす。

地面に山積みになる。

村人たちが目を丸くする。

「こ、こんなに……! 村の食料庫がいっぱいになるぞ!」

「ありがとう、巨人さん!」

……巨人さんか。

まあ、いいけど。

俺は残りの魚を、むしゃむしゃ食う。

生魚だけど、意外とイケる。

腹が少し満たされた。

次は服だ。

「リナ、布とかないか? 服作るのに」

「布? 村に織物屋さんがあるよ。でも、ケンタのサイズじゃ……」

そうだな。

人間の布じゃ、俺のハンカチにもならない。

前世の知識で、何か……。

そうだ、葉っぱとか樹皮で服作れるかも。

いや、それじゃ原始人だ。

村人たちが相談し始める。

「巨人のために、みんなで布を縫い合わせたらどうだ?」

「いや、それじゃ足りない。森の巨木の皮を使うか?」

巨木の皮か。

いいアイデアだ。

俺は近くの古い大木を一本、引き抜く。

バキバキッ。

皮を剥がす。

厚くて丈夫だ。

これを巻きつけて、蔓で固定。

即席の腰巻き完成。

「どうよ、これ」

リナが笑う。

「原始人みたい! でも、似合ってるよ」

村人たちも、少し安心した顔になる。

「巨人さん、ありがとう。魚のお礼に、何か手伝うことあるか?」

手伝うことか。

そうだな。

「寝床だ。寝るところがないんだよ。地面に転がると、地震みたいになるだろ」

村人たちが頷く。

「確かに。村の外れに洞窟があるよ。あそこなら、ケンタが入れるかも」

洞窟か。

いいね。

リナが案内してくれることになった。

洞窟は森のさらに奥。

入り口が俺の身長くらい。

中は広くて、天井が高い。

「ここなら、寝返り打っても大丈夫だろ」

試しに横になる。

ドスン。

洞窟が少し揺れるけど、外に影響はなさそう。

「よし、決まり」

夕方近く。

リナが村に帰る時間になった。

「ケンタ、明日また来るね! 何か持ってくるよ」

「おう。気をつけて帰れよ」

リナと村人たちが去っていく。

一人になった洞窟で、俺は天井を見上げた。

……これからどうするんだろう。

この世界、ファンタジーっぽいし、魔法とかあるのかな。

魔物とか、冒険者とか。

腹は満たされたけど、心はなんか空っぽだ。

前世の俺は、ただのサラリーマン。

毎日同じルーチンで、面白くなかった。

でも、今は……。

「面白くなりそうだけど、面倒くさそうだな」

ふと、外から音が聞こえた。

ガサガサ……。

野生動物か?

いや、なんかでかい。

俺は起き上がって、外を覗く。

そこにいたのは……。

狼?

いや、狼の群れ。

でも、普通の狼じゃない。

体長3メートルくらいの、巨大狼。

目が赤く光ってる。

「魔物かよ……」

群れのリーダーが、俺に向かって吠える。

ガルルルゥゥ!

その声で、洞窟が振動する。

俺はため息をつく。

「せっかく寝床見つけたのに、邪魔すんじゃねえよ」

一匹が飛びかかってくる。

俺の足に噛みつこうとする。

俺は、軽く足を振る。

ドン。

狼が吹っ飛ぶ。

木にぶつかって、気絶。

他の狼たちが怯む。

「ほら、帰れ帰れ」

手を振る。

風圧で、数匹が転がる。

リーダーが逃げ始める。

群れ全員が、尻尾を巻いて去っていった。

「……楽勝すぎる」

巨人の力、ヤバいな。

でも、村に近づかれたら危ない。

明日は、村の守り方とか考えないと。

こうして、俺の巨人生活、二日目が始まろうとしていた。

(続く)


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