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転生したら巨人でした。~人間サイズの街を踏まないように生きるの、難しすぎるんですけど~  作者: nekorovin2501


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第1話 踏み潰し注意報

俺は死んだ。

トラックに轢かれて。

最後の記憶は、信号待ちの横断歩道でスマホを見ながら「やべ、赤だ」と呟いた瞬間。

次の瞬間、視界が真っ白になって、意識が途切れた。

……んで、目が覚めたら。

「……は?」

目の前に広がるのは、森だった。

いや、森というより……木々が俺の膝くらいの高さしかない、おもちゃみたいな森。

俺は仰向けに寝転がっていた。

体が重い。

いや、重いというか……デカすぎる。

ゆっくり上体を起こす。

すると、ドスン、と地面が震えた。

周囲の木々がガサガサと揺れて、小鳥たちが一斉に飛び立つ。

「うわっ、なんだこれ……」

自分の手を見下ろす。

掌だけで、俺の旧居のリビングくらいありそうだった。

指一本が、成人男性の胴体より太い。

「……巨人?」

俺は立ち上がった。

その瞬間、地響きが鳴った。

ドドドドンッ!

視界の高さが変わる。

木々の天辺が俺の腰くらい。

遠くに見える山が、なんだか近く感じる。

そして、視線の先に……。

小さな村があった。

中世ヨーロッパ風の、藁葺き屋根の家々が密集した、人間サイズの村。

俺の足元から数百メートル先に、ポツポツと煙が上がっている。

家畜の鳴き声、子供の笑い声がかすかに聞こえる。

「……マジかよ」

俺は息を呑んだ。

だって、俺の足のサイズだけで、あの村の広場全部を覆える。

一歩踏み出せば、村の半分が消し飛ぶレベルだ。

「落ち着け、俺……。まずは状況把握だ」

深呼吸する。

でも、息を吸っただけで、周囲の木々が俺の方に傾いた。

吐いた息で葉っぱが舞い散る。

「息だけで風圧発生とか、チートすぎんだろ……」

とりあえず、座ってみることにした。

ゆっくり、ゆっくり腰を下ろす。

ドスン。

地面が陥没した。

俺のお尻の下に、直径30mくらいのクレーターができた。

「……ごめん」

誰に謝ってるのかわからないけど、心の中で村人に詫びた。

腹が減った。

死んでから何時間経ってるんだろう。

腹の虫が、グゥゥゥと鳴く。

その音だけで、近くの木々がビクッと震えた。

「食うもの……」

周りを見回す。

木の実? いや、あまりに小さい。

俺の指でつまんだら、粉々になりそう。

視線を下げると……。

村の近くに、牧場らしき場所があった。

牛が数十頭、のんびり草を食んでいる。

「……いや、ダメだろ。牛食うとか」

でも、腹減りすぎて理性が飛ぶ寸前。

その時。

村の方から、悲鳴が聞こえた。

「きゃあああああ!!」

「巨人が! 巨人が起きたぞぉぉ!!」

「逃げろぉぉ!! 村が踏み潰されるぅ!!」

人々が蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

子供を抱えた母親、荷車を放り出した農夫、みんな必死だ。

俺は慌てて手を振った。

「待て待て! 違うんだ! 俺は危害を加えるつもりは……!」

でも、その声。

俺の声は、雷鳴みたいに轟いた。

ゴロゴロゴロォォォン!!

空気が振動して、村の屋根が何枚か吹っ飛んだ。

悲鳴がさらに大きくなる。

「うわああああ!! 声だけで攻撃してきたぁ!!」

「魔王復活か!?」

「神よ、どうかお助けを……!」

……終わった。

俺、何もしてないのに、完全にラスボス扱いされてる。

仕方なく、俺はしゃがみ込んだ。

慎重に。

超慎重に。

膝をつくだけで、また地面が揺れる。

村の外れの木々がバキバキと倒れていく。

そして、俺は村に向かって、一番小さな声で話しかけた。

「……あの、すみません」

それでも声はでかい。

村全体に反響する。

一人の少女が、逃げ遅れて立ち尽くしていた。

10歳くらいだろうか。

金髪のツインテールで、麻のワンピースを着た子。

少女は俺を見上げて、ガタガタ震えている。

俺は、できるだけ優しく微笑もうとした。

でも、俺の顔が近づいた瞬間。

少女の髪が、俺の息でバサァッと舞い上がった。

「ひぃぃぃ!!」

少女が尻もちをつく。

「……ご、ごめん! 息、控える!」

俺は慌てて息を止めた。

息を止めたまま、ゆっくり指を差し出す。

指先だけで、少女の家の倍くらいの大きさだ。

「乗って。安全なところまで運ぶから」

少女は泣きそうな顔で俺の指を見た。

「……ほ、本当に……食べない?」

「食べねえよ! 俺、人間だったんだよ! 昨日まで!」

「……ほんと?」

「ほんとだよ。トラックに轢かれてさ……」

少女は少しだけ安心した顔をした。

そして、恐る恐る俺の指に登ってきた。

掌に乗せると、めちゃくちゃ軽い。

まるで小鳥みたいだ。

「わ、重っ……」

「失礼な!!」

少女がぷんすか怒る。

可愛いな、こいつ。

俺は立ち上がった。

今度は慎重に。

一歩ごとに、地面が揺れないよう、爪先からそっと。

村人たちは遠くから見ている。

誰も近寄ってこない。

「……とりあえず、森の奥に連れてくか。そこなら安全だろ」

少女を乗せたまま、俺はゆっくり歩き始めた。

一歩ごとに、地響き。

でも、なんとか村は踏み潰さずに済んだ。

少女が俺の掌の上で呟いた。

「……ねえ、おにいちゃん」

「ん?」

「名前、ある?」

「……佐藤。佐藤健太。よろしく」

少女は少し笑った。

「私はリナ。よろしくね、ケンタ」

「……お前、俺の名前呼び捨てかよ」

「だって、でっかいんだもん。敬語とか似合わないよ」

「……まあ、確かに」

俺たちは森の奥へと進んだ。

これからどうなるんだろう。

飯はどうするんだ。

服はどうするんだ。

寝るところはどうするんだ。

でも、今はひとつだけ確信があった。

この世界で、俺は絶対に「普通」には生きられない。

そして、それが、

すごく、すごく面倒くさそうだった。

(続く)


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わくわくする第1話ですね! 続きを楽しみにしています!
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