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【研修初日】遅刻ギャルと異能事件

やっほ〜!シエラだよっ!


今日はね、ついに!

超対課でのお仕事デビュー(仮)なんだけどさ…


聞いてよ!

あたし、寝坊したんだけど!!

マジありえなくない!?


いや〜テレビが面白かったんだよね。

責任は……まあ半分くらいあおいのせいだし?


とにかくっ!

みゆきに怒られるけど

現場に行っちゃったからさ!


ま、なんとかなるっしょ☆

かしこまり〜!←禁止らしいけど言う♡


【深夜1時】


深夜番組の芸人が

「かしこまり〜!」と叫び


シエラはソファで爆笑している。


「アハハ!この人たちウケるんだけど!」


廊下からあおいが登場。


「……朝早いんだろ。寝とけ」


「大丈夫大丈夫!あたし朝強いから!」


「絶対起こさんぞ?」


「任せとき!」


そのままテレビに釘付け。


あおいは小さくため息をつく。


「……知らんぞ」



【朝 8:30・リビング】


 カーテンの隙間から朝日が差す。

 シエラがむくりと起き上がり、スマホを見る。


「……ん?8:30?

 8:30!?えっヤバッ!!」


 シエラは飛び起き、寝癖を揺らしながらリビングへダッシュ。


「あおい!なんで起こしてくれなかったのさ!!」


 あおいはヘッドホンのままゲーム継続。


「俺は言った。絶対に起こさんって」


「いや言ってたけどさ!

 そこはさ〜友情ってもんがあるじゃん!」


「任せとき☆ってドヤってたのお前だろ。自爆じゃん」


「あ〜もう!あおいのバカ〜!!」


 鏡の前で寝癖を引っ張りながら大騒ぎ。


「みゆきに殺される……いや怒られる〜!」


 髪ボサボサのまま、玄関へ突っ走って消えた。




【9:00 新宿中央署・1階ロビー】


「……で、1時間遅刻したと。どう説明するつもりかしら?」


 朝のロビー。


 静けさの中で、みゆきは腕を組み、

 遅れてきた新人を冷たい目で見つめていた。


「ご、ごめんなさい……!ちょっとテレビ観てたら……」


「テレビ?夜更かし?初出勤で?」


「今度から気をつけます……ほんとです……」



 みゆきはゆっくり息を吐き、

 怒っているというより、呆れている様子だった。


「はぁ……もういいわ。次から気をつけなさい」


「はいっ!気をつけま〜す!」


 みゆきは眉を寄せながら視線を外す。


「……まあいいわ。今日から正式に、超越対策課での仮勤務になる。自己紹介してもらうわよ」


「かしこまり〜☆」


「その言葉……どこで覚えたのよ」


「昨日のお笑い番組!」

シエラがドヤ顔で言う。


「……大丈夫かしら……」




【9:50 超越対策課・オフィス】


みゆきが皆の前に立つシエラを軽く手で促した。


「今日から仮勤務になる子を紹介するわ。シエラ、前へ」


シエラが勢いよく一歩進み出て、元気に両手を上げる。


「はいっ!シエラです!よろしくお願いします!」


その様子を見ながら、拓磨が目を細めてじっと見つめてきた。


「……どこかで会った気がするな」


シエラがはっと目を見開く。


「えっ…あっ!あの時の……!」


拓磨の記憶が重なる。


「そうだ。ビル事件の時にいた金髪少女!」


シエラは照れくさそうに笑った。


「覚えててくれたんだ。なんかうれしい」


拓磨がわずかに口元を緩める。


「……印象に残る登場だったからな」


みゆきが手を叩き、会話を切った。



「はい、話は後。シエラには超越対策課の任務を学んでもらう。分からないことは私達に聞いて」


「はーい!頑張りまーす!」


その瞬間、小柄な女の子が勢いよくシエラの懐まで詰めてきた。



「ちょっと。あんたより、あたしの方がお姉さんなんだから、あたしのいうこと聞くのよ!いい?」


シエラがきょとんとみゆきを見た。


「みゆき、ここって…ちっちゃい子も入れるの?」


りんの眉が跳ね上がる。


「誰がちっちゃい子よ!二十三歳なんだけど!」


シエラは可愛さに耐えきれず、りんのほっぺを両手でむにーっと引っ張った。


「いや可愛い!!ぷにぷに!!」


「やめなさい!やめ…やめっ…!」


みゆきが半目になる。


「シエラ。やめなさい。彼女は西園寺りん。二十三歳で、れっきとした大人よ」


シエラが手をぱっと離す。


「あっ、そうなの?ごめんね」


そしてすぐに満面の笑み。


「今度一緒にパフェ食べよ!」


「パフェ!?行く行く!!」



そのやりとりを見ていた拓磨とみゆきは、同じ結論に至った。

(ちょろいな)




みゆきが書類を片手に、シエラへ向き直る。


「今日はインターンシップみたいなもの。ざっくり教えるわ」


シエラはすぐさま背筋を伸ばして返事した。


「わかった〜!」


みゆきが次の言葉を探すように小さく息を吐く。


「じゃあどこから話そ……」


その時、課のスピーカーが甲高い音を鳴らした。


《緊急通話音》


『至急応援!異常反応確認!』


みゆきはこめかみを押さえながら、うんざりしたように空を仰ぐ。


「タイミング良すぎるでしょ……」


「シエラ、準備しなさい。実地研修よ」


シエラの瞳が一瞬で輝きを増す。


「任せて!行こ行こ!」


みゆきは慌てて手を上げ、制止を入れようとする。


「異能力については移動中に説明すr……」


しかしすでに遅い。

シエラはみゆきの手首をがしっと掴んだ。


「早くーっ!!」


みゆきの身体がぐいっと前に引っ張られる。


「待ちなさいっ……!引っ張らないっ!」


「だって現場でしょ?超楽しみ!」


「楽しむものじゃないのっ!」


シエラは止まらない。

強引にみゆきを連行する形で、廊下へ駆け出していった。



【10:10 パトカー車内】


シエラは助手席、みゆきが運転席。


赤色灯の光がフロントガラスを赤く染め、道が後ろへ流れていく。


みゆきが前を向いたまま問いかける。


「シエラ。あなた、異能力ってどういうものだと思ってる?」


シエラは窓の外を見ながら、思いつくままに言葉を並べた。


「魔力を持ってる人、って感じ。

 持ってない人もいるし、上手くできる人とできない人がいる」


みゆきの口元が、少しだけ緩む。


「いい答えね。

 異能力は“魔力を外へ影響させる力”。

 それを制御できるかどうかが一番大事」


真白の顔がよぎり、シエラの声は少し小さくなる。


「真白ちゃんは……制御できなかった」


「そう。

 だから私たちは“暴走させない”ために動く」


一瞬、車内に静かな間が落ちた。

真白の出来事が、まだ彼女たちの胸に残っている。


みゆきは意図的に話題を切り替える。


「ところで、あなたは“魔力の位置”を感じ取れるのよね?」


シエラは胸を張るように、少し誇らしげに答えた。


「うん。みゆきの魔力もわかるし、どこにあるかもわかる」


「それがあなたの価値。


 この世界は魔力計測器に頼ってる。

 けれど機械には、微細な反応が拾えないことがある」


シエラはぽかんとした顔のまま、ふと笑った。


「じゃあ……あたしってすごいってこと?」


みゆきは視線を前に向けたまま言う。


「そうね……特別な存在だと私は思うわ」


シエラの頬が緩む。


「へへっ。特別って言われるのは、悪くないかも」


みゆきは釘だけは打っておく。


「調子に乗らなければ、ね」


「はーい!」


シエラは軽く返事をし、

パトカーは現場へと走り続けていった。




シエラは窓に額がつきそうな距離で外を覗き込み、

眉を少し寄せた。


「シエラ……何かわかったの?」


「……うん。微かだけど、反応ある」


みゆきがシエラへ視線を向けずに言う。


「そう。油断しないこと、いい?」


「うん」


車がコンビニ前で停まり、

みゆきはすぐにドアを開けて外へ出た。


「着いたわ」


入口付近では、一般警察官が数人警戒していた。

その一人が走り寄ってくる。


「超越対策課の方ですか?お勤めご苦労様です!」


みゆきは短く頷き、状況を確認する。


「ご苦労様。今、どんな状況?」


「店内に犯人が一名。拳銃を所持しています。

 店員が二名、それとお客さんが八名。

 計十名が、まだ中に取り残されています」


「そう。わかったわ」


「犯人は硬質化系の能力持ちとの報告が入っています。

 ですが詳細は不明です」


みゆきが短く頷いた。


「情報ありがとう。後は任せて」


横でそれを聞いていたシエラは、

期待で目がキラキラと輝き、思わず前のめりになる。


「ドラマみたい!!」



【10:30コンビニ店内】


「シエラ、今回は“見ているだけ”。

 私の後ろにいなさい」


みゆきがぴたりと振り返って釘を刺す。

シエラは唇を尖らせ、渋々頷いた。


「え〜……わかった」


自動ドア越しに見えるレジ前。

犯人が拳銃を振り回しながら吠えていた。


「動くな!!撃つぞ!!」


店員は震え、客たちの目には涙。

張りつめた空気が肌を刺す。


苛立った犯人が銃口を天井へ向ける。


パンッ!


眩しい火花。

甲高い悲鳴が店内に広がった。


――自動ドアが開く。


みゆきが一歩、静かに前へ出る。


「なんだてめぇは!!近づくな!!」


犯人が怒鳴る。

みゆきは視線を逸らさず、背後のシエラに小声で尋ねた。


「シエラ。あの人の魔力、どう?」


息を整えながらシエラが答える。


「うん……魔力が乱れてる。

 たぶん、開花したばっかり。

 硬質系の能力だと思うよ。この感じ」


みゆきは短く頷く。


「……そう。情報助かるわ」


「ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇ!!」


発砲。


銃口が向けられた先、

弾丸は一直線にみゆきへ――


だがその弾は、

みゆきの足元でストンと落ちた。


床に転がる弾丸。


「……は?なんだ今の」


犯人の顔が歪む。

みゆきの瞳が、青く微かに光った。


次の瞬間、

犯人の右手にとんでもない重さがのしかかる。


バキッ。


鈍い音。

拳銃が床に落ち、犯人は右手を押さえて崩れた。


「ぐっ……!くそっ……!」


歯ぎしりと荒い息。


「ちっ……なめられてたまるか!」


全身が硬質化し、金属が軋む音。

床を砕きながらみゆきへ突進。


みゆきは動かない。

微動だにしない。


犯人が目の前へ迫った瞬間――


ドンッ。


重力が一気に増した。

犯人の身体は**ビタン!**と床へ叩きつけられる。


顔は床に押さえつけられ、

硬質化が無意味になるほどの強烈な圧力。


完全拘束。


シエラはその光景を見て

思わず両腕を突き上げた。


「わぁ!みゆきすごい!めっちゃかっこいい!!」


「……大げさよ」


と言いながらも、

みゆきの耳はほんのり赤く染まっていた。


みゆきは腰のポーチから手錠を取り出した。

金属が小さく光る。


「シエラ、これが対異能力用の手錠。

 施錠すると、魔力の発動ができなくなるの」


シエラは目をまん丸にして、それを覗き込む。


「へ〜!」


みゆきはしゃがみ込み、

倒れたままの犯人の手首へ手際よく手錠をかけた。


かちり、と確かな音。


「よし、確保。……シエラ、初現場ご苦労さま」


緊張が解けたせいか、外の風がひんやり感じる。

周囲の警官たちも、やっと大きく息を吐いた。


シエラはその空気を吹き飛ばすような勢いで声を上げた。


「ドラマみたいだった!

 みゆき、めっちゃカッコよかった!!」


みゆきは息を整えながら小さく答える。


「……そう」


視線は正面のまま。

けれど口元には、ほんの少しだけ柔らかい笑みが宿っていた。


「帰るわよ。研修はまだ続くんだから」


「はーい!!」


元気よく返事するシエラに、

みゆきはまた一つため息をつきながら

その背を追った。



読んでくれてありがと〜っ!


ねぇ聞いて?

みゆき、めっちゃ強くない!?

あんなのチートじゃん。

そりゃあたしだって負けてないけどさっ!!


ていうかさ、

初日から現場って普通ある?

インターンってもっとこう、

事務所でお茶飲んで終わりとかじゃないの?ねぇ?


まあいいか。

みゆきがカッコよかったから全部オッケー♡

怒られたけど、怒り方が美人なんだよね〜…

次はジム仕事するらしいよ!


それじゃ、また次回もよろしく〜!

感想やブクマ待ってるよ!

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