望み。魅せられた、願い。③
望み。魅せられた、願い。③
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雨風が窓に当たり、水滴が何度も流れていく。ベネットの宿り木には雨の音だけが聞こえる。
ベイスンで冒険者が宿を長期に借りる場合には、ひとつの約束事がある。それは連絡無く11日を越えて宿を空けた時は、自動的に契約を解除するというもの。
2階の部屋が契約解除されたのは昨日の事だ。最後に三人が出掛けてから、もう12日になる。
ベネットが受付に座り、いつ開くとも知れない扉をじっと見つめている。
「リズ...」
望みの塔3階。雨の降る中、駆けていくリズベット。望みの塔に初めて入ったにも関わらず、勇ましい足音だ。
走り進むので、怪物と接触する機会が少なく、また天候の為に冒険者も少ないので、萎縮せずに進めるのかも知れない。
だけど、そうではない。
目的があるからだ。どうしても叶えたいものが。
「っ!」
丸い水の塊が体に当たり、転んでしまう。すでに服は雨に濡れ、今ので泥が付いた。脇目も振らず走るリズベットは、キューにも自分の姿にも構わず、立ち上がると、また走り出す。
息切れの音がずっと聞こえている。
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昨日から寝むれていなかった。
三人から連絡が無いのは何かの間違いで、きっとまた帰ってきてくれる「悪ぃ、連絡すんの忘れた」ってちっとも悪ぶれた様子無く「朝食は食べただろ?」って。そう思っていた。
「食べてないじゃない」
朝食の時間が過ぎ、望みの塔へと向かう。その途中、ジョゼットに呼び止められる。
「リズ!何処に行こうっていうんだ?」
「ジョゼ。望みの塔よ」
「...もうじき雨が降るよ」
「だから何?雨が止むのを待つの?思いは先延ばしにしたら、いつか枯れてしまうわ。たかが雨で躊躇するようなら尚更よ」
「リズ…」
目の前に立ち塞がるものはもう何もない、目付きの悪い男の姿が現れる事も。
望みの塔はいつの時も変わらずそこにあった。いつか私も訪れる事になるのだろうかと、子どもの頃からずっと見上げていた望みの塔。こんな風に訪れる事になるなんて1つも思わなかったけど。
目の前に大きな扉がある。呼吸を整え、高鳴る心臓の前で手を握る。扉を開くと、火を吹く大きな蜥蜴の姿が目に入る。
話には聞いていた。
だけど想像していたのより、火は熱く、動きも早い。
蜥蜴は火をかわし続けていると、転がってきた。そう言えば武器を持って来ていない。でも、魔法がある。『水よ・珠と成す・弧を描き・衝突せよ』
「きゃっ」
痛みが全身に走る。
蜥蜴の体当たりで飛ばされたのだ。気付けば壁の近くまで来ている。
水の珠では蜥蜴を止めることすら出来なかった『水よ・溜まりと成す・湧き・留まれ』
擦り傷ぐらいなんだ。こんな痛みなら、いくらだって耐えられる。
獲物を追い詰めた蜥蜴が勢いを増して転がってくる。一度体当たりを受けたおかげか、恐怖心が薄らいで落ち着いていられる。『水よ・滾りと成す・そこに在りて・気化せよ』
水蒸気が広がり、私は横に飛び退く。
凄い音がした。思い通りと後ろを見る。
「よかった。なんとかなった」
壁に衝突した蜥蜴が霧散していくのを見て、私は立ち上がる。これからが本番なのだから。
今まで無かった扉が現れて、息を飲む。絶対に失敗したくない。私を見守る人はいないけど、出来ないかも知れないなんて思わない。近付いて扉に手をかける。
「ねぇ!神様!聞こえているんでしょ!」
前々から思っていた事がある。
誰にも話した事はないけれど、望みの塔で技能を得るには扉を通る必要があり、その時に想像した技能が手に入るという話を聞いてから、私は神様と話せる可能性について考えていた。
扉を通った時に技能が与えられるのなら、その瞬間に神様と繋がっているのではないかと。
「神様、お願いがあるの。あの人達と会わせて欲しいの!少しの時間でいいから。まだ、さよならしたくないの!お願い!」
届かない思いなんてないと信じて、声に出す。大きく息を吸ってもう一度呼び掛けようとした時、何故か扉が消え始める。
「待って!お願い!」
持っていた取手も無くなり、扉が完全に消えてしまう。どうしてなのか、目の前が朧気になる。
「なんじゃ?お主、あんな奴らには出ていって欲しかったのではなかったか?」
「!?」
扉の消えた先に知らない子がいる。驚きの声も出せない、そんな私を呆れたような目で見てくる。
「聞いとるのか?」
「あ、あなたは?」
「今しがた呼んでおったろうが」
神様!?
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