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魅了の冒険  作者: 塩味うすめ
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脆く、儚い。望み。②

脆く、儚い。望み。②


**********************


「何ぼーっとしているんだ?」


 ジェルードが不思議そうに首を傾げる。忙しそうに小舟の選定をしているクオーグス達と比べ、階段を上り切った所から一歩も動かない三人は怠けているように見える。クオーグスは不機嫌そうに、少し三人を見ると選定に戻る。レーミルにいたっては見向きもしていない。

 

「そうだよな...」

 

 責められる態度にうつむきかけるジャックだが、ふと隣を見る。そこには同じように、うつむこうとしているレビンとクイントがいた。

 ジャックは顔を上げ、隣りにいるレビンとクイントの背中をポンと叩く。


「そうじゃねぇ。そうじゃねぇよな?」


「うん」


「だね」 


 三人の体が大きく伸び、深い呼吸音が聞こえる。顔を見合わせると揃ってクオーグス達の所へと歩いていく。左から順に、頭の位置が上がっていく姿がどことなく可笑しい。


「さぁ君達も6人が乗れそうな舟を探してくれ。あちらの方にもあるみたいだ」


 クオーグスが両手を広げ、舟のある方向を顔で指している。しかし、動かない三人に怪訝な表情を次第に強めていく。


「どう「あのよ、俺達はもうクオーグス達と行動はしねぇ。だから、ここでお別れだ。俺達は一度地上に帰るよ。ここまで、ありがとうな」


 ジャックに続き、お礼とお別れの言葉を口にするレビンとクイント。言い終えると三人は階段のある方へと向き、クオーグス達に背を向ける。


「待つんだ!」


 両手を広げたままのクオーグスが三人を呼び止めた。


「何を言っている?どうして君達が僕を否定する?」


「否定?いや否定なんかしていねぇよ。ただ一緒に行動するのを辞めるってだけだ」


 振り返る三人。ジャックが不可解な様子でクオーグスを見る。クオーグスは広げた両手を握りしめ、小刻みに震えていた。

 大きく開かれているが、三人の誰一人も見てはいない目が揺れる。


「いや、僕の想定を否定している。完璧でなければならないこの僕の想定外の行動を取るという事はこの僕を否定している事になるんだ!」


 クオーグスが声を荒げ、ジェルードは呆れた表情で三人に溜め息をつく。レーミルは関せずに舟を見ている。別行動をしようと言っただけのジャックと同じように、クイントとレビンも状況についていけていない。


「ジェルードさん」


 レビンが助けを求めるように見るが、更に溜め息を返される。


「はぁー。お前らが悪いよ、これだから劣っている奴らは」


「僕は完璧なんだ。君達には今後とも僕の手足となり、動いてもらう。それが君達にとっても良い事なんだ。わからない?」


 自分の言葉が絶対の真実であるかのように話すクオーグス。荒げた言葉も落ち着き、三人を駄々を捏ねる子どもみたいに見る。


「わからないです」


「そう。残念だね、じゃあ君達とはここでお別れだ」


 クイントの答えにクオーグスは両腕をだらりと下げる。そして、そのまま三人の方へ一歩二歩と足を動かす。

 そして、不適な笑みを浮かべたクオーグスがクイントの目の前に立つ。


「永遠に」

 

 クオーグスの手がクイントの首に添うように当てられる。クオーグス達が得意とする気配隠蔽の技能(スキル)を使っての急襲だ。

 クイントの首を握り潰すつもりだったのだろう。

 だが、気配察知の技能(スキル)で反応され首の皮一枚を掠めるだけに終わる。


「完璧な僕を否定する存在は有ってはならない。完璧とは何人にも否定されない存在」


 振り返り手を伸ばすクオーグス。ようやく状況を理解したジャックとレビンがクオーグスを止めようと動くが、そこにジェルードとレーミルが割って入った。


「3対1は卑怯だろ?」


「ああ?なに言っているんだ?急に襲ってきて止めろよ」


 事態が飲み込めないクイントはクオーグスの手を振り払い防戦する一方だ。助けに入ろうとする二人だが、ジャックは体を押さえられ、レビンは杖で行く手を塞がれる。

  

「お別れだって言っただろ!」


 蹴り飛ばされるジャック。ジェルードは飛ばしたジャックを追い、剣を抜く。ジャックも体勢を立て直すと剣を構えた。ジェルードとジャックの剣が交差する。

  

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