動き、動かす。思い。④
動き、動かす。思い。④
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「すまない。声も掛けず、割り込んでしまって。君達の状況が悪いと判断したんだ。許して欲しい」
「いえ、有り難うございました。私達は三人パーティーで、ア・サードと言います」
「ア・サード?変わったパーティー名だね。僕達はパーティー名は付けていないんだ。僕はクオーグス、右にいるのがジェルードで左がレーミル」
「そうなんですね。私はクイントと言います。二人は」
クイントが二人に視線を向ける。
「ジャック」
「レビンです」
軽く会釈するジャックとレビンに微笑むクオーグス。
「ところで。もし良かったら、この先一緒に行動しないか?僕達も3人しかいないからさ」
三人の体がピクリと動く。それを見てクオーグスは更に続ける。
「ん?何かあるのかい?だったら、今すぐの返事じゃなくても良いよ。とりあえず今日は一緒に行動してみてさ」
今日一日だけならとア・サードはクオーグスの提案を受け入れる。そうして彼らは暫くの間、共に行動することになった。
望みの塔41階層の怪物を倒した彼らは先へと進む。
この岩山の階層に現れる怪物から獲られる収穫品は革や羽である。地上で獲られるそれとは違い、軽くて丈夫であり、加工もしやすい。加工された物は2年程前からベイスンの街で売られ始めている。
また他の国でも見かけられており、ツゥトリービヤ帝国製の物は質が良く人気も高い。
「ソンネル?レミマルク共和国にあるんだ」
「はい。田舎の村ですけど、自然がとても美しい所です」
「へー、レミマルクは魔法が盛んな国だって聞いたけど?」
「私は魔法を使えません」
「えっ?そうなの!?レミマルク出身なのに?」
「ええ、恥ずかしながら」
「あはは。そういう僕もツゥトリービヤ帝国出身だけど、鍛冶は全く出来ないんだけどね。でも代わりと言っては何だけど」
癒しの光を手に宿して見せるクオーグス。
「癒しの光、先程フテラリュコスに噛まれた腕を治すのを見ました」
「あは。見られていたか。そう、僕は癒しの力が使えるんだ」
クイントが同じように癒しの光を手に宿して見せる。
「おお!君も使えるのかい!?」
「はい!」
微笑みを絶やさないクオーグスに、クイントはいつもより饒舌になる。今までもソンネルの村にも居なかった年の近い兄の様な存在はクイントをはじめ、ジャック、レビンには新鮮に写るのであろう。
「二刀流難しくねぇ?」
「お?なんだジャック、二刀流に興味があるのか。難しいが、格好いいだろ?」
自慢するような見透かした笑顔を見せるジェルード。
「いや~別に。それにかっこいいとは言ってねぇ」
「ふっははっ。素直じゃないねぇ。いいぜ、二刀流教えてやっても」
「ほんとか!?」
「ああ。次、戦いが始まったら後ろで良く見とけよ」
気安いジェルードにジャックは嬉しそうに付いていく。自分の剣を見せて、自慢し返す姿が微笑ましい。
「魔法は誰に習ったの?」
レーミルが興味深そうな眼差しでレビンを見る。
「...基本はお母さんで、基礎は師匠達に習いました」
「へぇー。とても丁寧で迅速な顕現図だったから。よっぽどいい人達に師事したんだね」
屈託なく笑うレーミルにレビンの警戒心も薄れる。いつしかキキクリクに「クイントは純真で騙されやすいからレビンとジャックがその分を補うように」と、言われた所為もあり疑い深くなっていたレビン。
「その通りです!」
だが、今はその事など忘れてしまったかのようにレーミルの笑顔につられて笑っている。
「あちゃ~。この橋は使えないみたいだね。戻ってあの洞窟の中に入ってみようか」
6人で岩山を進み吊り橋のある所まで来たが、先の吊り橋が落ちてしまっていた。仕方なく引き返す事にするようだ。
岩山を頂上まで進み、先の50階層を目指す彼ら。その頂上までの道は何百とあるが、怪物により途絶えてしまっている道もあった。
落ちてしまった吊り橋は一日経てば元に戻るのだが、そう待ってられる冒険者は少ない。洞窟内も行き止まりがある為、行ったり来たりとしている内に日が暮れていく。
「残念だけど、今日はここまでだね」
6人の青年達も、類に漏れずうまく進めなかったようだ。40階層の転移陣の前へと戻ってきた彼ら。
「怪物の対処が出来るようになったのにな」
そう言ったのはジャックで、今までア・サードに足りなかったものを如実に表していた。
意図せず出した言葉であったのだろう。気まずい雰囲気を出すジャックにクイントとレビンがいたたまれないのか身じろぎをする。
「?どうだろう。また一緒に行動しないか?僕達は大通りにある〈ヘッドリーフ〉に泊まっているから良ければ明日にでも訪ねてきてくれ」
「おう。待ってるぜ」
「またね」
クオーグス、ジェルード、レーミルの3人は先に帰還する。
「僕達も帰ろっか」
転移陣から消えていくア・サードの三人の背中はどこか寂しく見えるのであった。
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