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魅了の冒険  作者: 塩味うすめ
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演じて、隠す。理由。②

演じて、隠す。理由。②


**********************


「どひゃ~」 「ぐへっ」 「ぺぎゃ」


 受付の前を飛んで行ったジャック、クイント、レビン。無様な声と着地後の姿が周囲の笑いを誘い、可笑しな出来事に空気が緩む。

 若い男性は自分が殴り飛ばした者達を見て驚いている。


「すげー」 「やるじゃん」 「おおー」


 歓声が上がり、声を掛けられるハーレムパーティー。一連の出来事に誰もが注目していたのだ。

 先程までの近寄り難い雰囲気も無くなり、誉めそやされて上機嫌な面々。受付に並んでいた事も忘れたようだ。


「これに懲りたら二度と僕達に近づくなよ!」 


 素敵な台詞を残し、4人の若者は冒険者達に誘われるままに酒場へと足を運んでいく。受付の前に人が居なくなると、三人は起き上がり服に付いた埃を払う。

 

「これで良かったの?」


「さぁな、まぁ切っ掛けにはなったろ」


「そうだね。あとは任せよう」


 ア・サードは冒険者達が酒場へと消えていったのを見届け、ベイスン協同組合から速やかに出ていく。その後ろではミリリアーテとムリリアースが大きく目と口を開け喜んでいるのであった。


「先日はありがとうございました」


 後日、再び所長室を訪れたア・サードにマリリアーネがお礼の言葉をかけた。受付での騒動は協同組合がア・サードに頼んだ事で、今日はその労いをしようとホーリーリルテが呼んだのだ。

 前回と同じようにソファに座る三人。


「あれ、今日は所長さんは居ないんですか?」


「はい、視察に出掛けております。改めまして、先日はご協力頂き感謝致します。今日はその報告をさせて頂こうと思いますがよろしいですか?」


 マリリアーネはそう言うと、ア・サードが帰った後の事から丁寧に話していった。緩やかに流れる時間の中、1階の受付ではミリリアーテとムリリアースが忙しそうにしている。

 

「・・・それで現在の所、孤立すること無くいくつかのパーティーと交流を持たれているようです」


「そうですか、それは良かったですね」


 報告を聞き終えた三人は一様に安堵の表情をしてみせた。


「たけどよ、騒ぎを起こした俺達に何の咎めもなしでいいのか?」


「ええ、大丈夫です。要らぬ騒ぎでは有りませんから。今後もよろしくお願い致します」


「講習では出来ない?」


「はい。講習で他の冒険者と仲良くして下さいとか、冒険時の行動に助言をするのは冒険者に多少なりとも制限を加える事になりますから」 


「冒険は自由でないといけないから?」


「はい。それが我々の存在する理由です。ですが、協同組合として無為に無くなっていく者達を見過ごす訳にもいきません。そこで皆様にご協力頂いた次第です」


 ベイスン協同組合を離れ、広場へとやって来た三人。以前にガイザック達と待ち合わせした場所だ。木陰で、すっかり変わってしまった街の様子を眺めている。


「ガイザックさん達、エイマーが100階に到達してから、日に日に冒険者が増えたね」


「ああ。今は怪我して休んでるんだっけ?」


「うん。コリンさんに聞いた話では、もう少しすれば全員回復訓練に入れるだろうって」


 エイマーは121階層にて、彼らでも手間取る怪物(モンスター)や慣れない環境の連続により大怪我を負った。撤退を余儀無くされた彼らであったが、未だその意欲は衰えていないようだ。


「俺達も41階層に入ってから遅々として進めてねぇ」


「うん」


「崖が多いから、景色に視界を奪われる所為だね」


 レビンはそう言うが、30階を越えた辺りから三人では出てくる怪物(モンスター)の対応が難しくなってきていた。代わる代わるに襲来する怪物に体力が持たない事が多いのだ。技能(スキル)を駆使しても人手が足りず、敗走する場面が多く見られた。

 10日が過ぎ強制的に望みの塔から出される事もあったが、自分達で帰還を選択する事がほとんどだ。


「また頼まれれば手伝うの?」


「ああ」


 行き詰まるア・サード。彼らは誤魔化すかのようにベイスン協同組合の依頼に応えるのであった。


**********************

  

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