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魅了の冒険  作者: 塩味うすめ
28/66

時に。従って、変わり。④

時に。従って、変わり。④


************************


 ダン、ダン、ダン。


 足の鳴らす音。


 ダン、ダン、ダン。


 規律の守られた音。


 ダン、ダン、ダン。


 地面を踏む音。


 ダン、ダン、ダン。


 迷いを寄せ付けない音。


 スカルポーンは、スカルナイトの号令に従い行進を続ける。スカルナイトも、決まった号令を寸分違わず出し続ける。続く廊下の先にはエントランスホールがあり、そこにはア・サードがいる。


怪物(モンスター)様の、お出ましみてぇだな」


 三人は笑みを納め、やって来る気配に備える。クイントが大盾を、レビンが弓を構えだし、ジャックが壁を背に廊下を覗く。


「あれは?人間?100は居るぜ」


 ジャックが振り返り、二人に告げる。クイントがジャックを呼び戻し、三人は一ヶ所に集まり話し合いを始めた。


「接触まで2分も無いが、どうする?」


「この広間で100人に囲まれたら、危ない」


「蟻の時と違い、退路が1つしかないからね」


 レビンが入ってきた扉を、視界に収める。


「魔法で地下には逃げられねぇか?」


「ここに入った時、試してみたけど浸透率があまり上がらないんだ。この建物自体が誰かの魔力で出来ているみたい」


「あ!」


 クイントが先程崩れ落ちた所を指差すが、崩れた箇所は元通りになっており、落下物も消えていた。


「なるほどな。普通の建物とは違ぇのか。狭い通路で戦うにしても、相手がどんな動きをするのか分かんねぇし、挟まれたら厄介か」  

 

 ジャックが迫る気配に圧されたのか早口で話す。


「差し当たり、扉を背に待ち構えるしかねぇな」


 今に、怪物(モンスター)達と対峙するア・サード。今までとは違う様相の怪物(モンスター)に、ジャックの緊張感が増す。レビンとクイントもジャックに当てられ、口を閉じ気配察知に集中している。


 ダン、ダン、ダン。


 足の鳴らす音。


 ダン、ダン、ダン。


 言葉の無い声がホール響く。


 ダン、ダン、ダン。


 地面を踏む音。


 ダン、ダン、ダン。


 ホールを埋め尽くす音。


 三人が固唾を呑む中、スカルナイトとスカルポーンはエントランスホールに入ってきた。ア・サードの存在には気が付いているだろうが、彼らは城に入ってきた者を前に整列を始めた。

 今までと違う怪物(モンスター)の動きに、虚をつかれたのか。三人共、怪物(モンスター)達の行動を見守り続ける。整列が終わった時、1体のスカルナイトが進み出てきた。


「貴サマラ、ハ何ダ?」


「喋った!?ぐぇ」


 レビンが驚きのあまり前に出そうになったのを、クイントが襟首を掴んで止める。


「レビン守れないから。下がって」


「うん。ごめん」


 まごつくア・サード。


「貴サマラ ハ何ダ ト聞イテイル!!」


 スカルナイトが怒声がホールに響く。三人は身を(すく)ませるが、他のスカルナイトやスカルポーンは当然のように身動き1つしない。ジャックが1歩スカルナイト達に近付いた。


「冒険者だ」


「ボウケンシャ?ソレガ、ハ王ノ 城ニ、何ノヨウダ?」


 近付けば襲ってくるのが怪物(モンスター)。だが、ここでは少し勝手が異なる。スカルナイトはア・サードを、その眼窩(がんか)に捉えているが襲う様子は見られない。  


「城には用はねぇが、上に行きてぇんだ」


 ジャックは明け透けに言う。


「上ダト!? 貴サマラノ様ナ モノ共ヲ、王ニ 会ワセル訳ニハ、イカヌ!」


 微動だにしないスカルナイト達から、物々しい雰囲気が漂い始めた。三人が警戒を高めるのを余所に、一体のスカルポーンが怒声を放ったスカルナイトの横に並ぶ。


「上官ドノ、オ待チヲ」


「ナンダ? ポーンノ、分ザイデ イ見スルキカ」


 スカルナイトが槍をスカルポーンへと向ける。


「イエイエ、滅相モゴザイマセン。ナニ、王ガ 何ト仰ルカ 気ニナッタ、ダケノ事」


 槍を向けられたスカルポーンはカタカタと、槍の穂先を潜ってスカルナイトの正面に立った。スカルナイトはガタガタと槍を戻す。


「分カッテイル! オマエ 速ヤカニ、オ知ラセ シテコイ」


 ジャックはスカルポーンが1体ホールから出て行くのを視界の端で確認し、クイントとレビンに問いかける。


「なんだ?増援か?」


「どうだろう。何か揉めてるみたいだった」


「取り敢えず、怪物(モンスター)の力量だけでも確認したいね」

 

「何ヲ、カクニン スル、ト言ウノダ?」


 ア・サードの背後に4体のスカルナイトが突如、現れた。三人は身の毛がよだった反応をし、クイントが大盾を4体の前に広げる。


「ソウ 慌テルナ。イマ、王 ノ、ゴ判ダンヲ 仰ギニイッテイル。シバシ待テ」

 

 クイントを背にしてジャック、レビンが並ぶ。言葉も交わさず、呼吸を整えている。クイントと4体の間に張り詰めた空気が流れ、スカルナイトとスカルポーンの軍団の異様さがジャックとレビンに隙を与えない。

 そのまま誰も動かず15分程経った頃、1体のスカルポーンが戻ってきた。


「王ヨリ アチラニ、連レテクルヨウニ トノ、オ達シダ」


 戻るや否や、スカルナイトに駆け寄り顎の骨を上下させるスカルポーン。伝達を終えると、ア・サードの方にカタカタと歩み寄る。  

       

「ヤァ。悪イヨウニ、シナイカラ 着イテ来テ、クレナイカ」


「いきなり気安いね。僕達が大人しく従うと?」


 レビンが不信を(あらわ)にして、弓の弦を引いた。スカルポーンはカタカタと歩み、申し出を引かない。


「無駄ダヨ。コノ人数サダ 君タチガ、イクラ強クテモ。ソウダ。ソノ矢 放ッテミナヨ」


 言葉に遠慮無く、矢が放たれた。空気抵抗を受け(やが)て失速する物だが、放たれた矢は初速で飛んでいたにも関わらず、スカルポーンの指骨の間に挟まれた。


「ネ? 悪イヨウニハ ナンナイッテ」


「レビン、クイント。行こう」


 ジャックの目が静かに揺れる。三人は饒舌なスカルポーンに従って、スカルナイトとスカルポーンの軍団の後に付いて行くのであった。


************************


   

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