時に。従って、変わり。④
時に。従って、変わり。④
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ダン、ダン、ダン。
足の鳴らす音。
ダン、ダン、ダン。
規律の守られた音。
ダン、ダン、ダン。
地面を踏む音。
ダン、ダン、ダン。
迷いを寄せ付けない音。
スカルポーンは、スカルナイトの号令に従い行進を続ける。スカルナイトも、決まった号令を寸分違わず出し続ける。続く廊下の先にはエントランスホールがあり、そこにはア・サードがいる。
「怪物様の、お出ましみてぇだな」
三人は笑みを納め、やって来る気配に備える。クイントが大盾を、レビンが弓を構えだし、ジャックが壁を背に廊下を覗く。
「あれは?人間?100は居るぜ」
ジャックが振り返り、二人に告げる。クイントがジャックを呼び戻し、三人は一ヶ所に集まり話し合いを始めた。
「接触まで2分も無いが、どうする?」
「この広間で100人に囲まれたら、危ない」
「蟻の時と違い、退路が1つしかないからね」
レビンが入ってきた扉を、視界に収める。
「魔法で地下には逃げられねぇか?」
「ここに入った時、試してみたけど浸透率があまり上がらないんだ。この建物自体が誰かの魔力で出来ているみたい」
「あ!」
クイントが先程崩れ落ちた所を指差すが、崩れた箇所は元通りになっており、落下物も消えていた。
「なるほどな。普通の建物とは違ぇのか。狭い通路で戦うにしても、相手がどんな動きをするのか分かんねぇし、挟まれたら厄介か」
ジャックが迫る気配に圧されたのか早口で話す。
「差し当たり、扉を背に待ち構えるしかねぇな」
今に、怪物達と対峙するア・サード。今までとは違う様相の怪物に、ジャックの緊張感が増す。レビンとクイントもジャックに当てられ、口を閉じ気配察知に集中している。
ダン、ダン、ダン。
足の鳴らす音。
ダン、ダン、ダン。
言葉の無い声がホール響く。
ダン、ダン、ダン。
地面を踏む音。
ダン、ダン、ダン。
ホールを埋め尽くす音。
三人が固唾を呑む中、スカルナイトとスカルポーンはエントランスホールに入ってきた。ア・サードの存在には気が付いているだろうが、彼らは城に入ってきた者を前に整列を始めた。
今までと違う怪物の動きに、虚をつかれたのか。三人共、怪物達の行動を見守り続ける。整列が終わった時、1体のスカルナイトが進み出てきた。
「貴サマラ、ハ何ダ?」
「喋った!?ぐぇ」
レビンが驚きのあまり前に出そうになったのを、クイントが襟首を掴んで止める。
「レビン守れないから。下がって」
「うん。ごめん」
まごつくア・サード。
「貴サマラ ハ何ダ ト聞イテイル!!」
スカルナイトが怒声がホールに響く。三人は身を竦ませるが、他のスカルナイトやスカルポーンは当然のように身動き1つしない。ジャックが1歩スカルナイト達に近付いた。
「冒険者だ」
「ボウケンシャ?ソレガ、ハ王ノ 城ニ、何ノヨウダ?」
近付けば襲ってくるのが怪物。だが、ここでは少し勝手が異なる。スカルナイトはア・サードを、その眼窩に捉えているが襲う様子は見られない。
「城には用はねぇが、上に行きてぇんだ」
ジャックは明け透けに言う。
「上ダト!? 貴サマラノ様ナ モノ共ヲ、王ニ 会ワセル訳ニハ、イカヌ!」
微動だにしないスカルナイト達から、物々しい雰囲気が漂い始めた。三人が警戒を高めるのを余所に、一体のスカルポーンが怒声を放ったスカルナイトの横に並ぶ。
「上官ドノ、オ待チヲ」
「ナンダ? ポーンノ、分ザイデ イ見スルキカ」
スカルナイトが槍をスカルポーンへと向ける。
「イエイエ、滅相モゴザイマセン。ナニ、王ガ 何ト仰ルカ 気ニナッタ、ダケノ事」
槍を向けられたスカルポーンはカタカタと、槍の穂先を潜ってスカルナイトの正面に立った。スカルナイトはガタガタと槍を戻す。
「分カッテイル! オマエ 速ヤカニ、オ知ラセ シテコイ」
ジャックはスカルポーンが1体ホールから出て行くのを視界の端で確認し、クイントとレビンに問いかける。
「なんだ?増援か?」
「どうだろう。何か揉めてるみたいだった」
「取り敢えず、怪物の力量だけでも確認したいね」
「何ヲ、カクニン スル、ト言ウノダ?」
ア・サードの背後に4体のスカルナイトが突如、現れた。三人は身の毛がよだった反応をし、クイントが大盾を4体の前に広げる。
「ソウ 慌テルナ。イマ、王 ノ、ゴ判ダンヲ 仰ギニイッテイル。シバシ待テ」
クイントを背にしてジャック、レビンが並ぶ。言葉も交わさず、呼吸を整えている。クイントと4体の間に張り詰めた空気が流れ、スカルナイトとスカルポーンの軍団の異様さがジャックとレビンに隙を与えない。
そのまま誰も動かず15分程経った頃、1体のスカルポーンが戻ってきた。
「王ヨリ アチラニ、連レテクルヨウニ トノ、オ達シダ」
戻るや否や、スカルナイトに駆け寄り顎の骨を上下させるスカルポーン。伝達を終えると、ア・サードの方にカタカタと歩み寄る。
「ヤァ。悪イヨウニ、シナイカラ 着イテ来テ、クレナイカ」
「いきなり気安いね。僕達が大人しく従うと?」
レビンが不信を露にして、弓の弦を引いた。スカルポーンはカタカタと歩み、申し出を引かない。
「無駄ダヨ。コノ人数サダ 君タチガ、イクラ強クテモ。ソウダ。ソノ矢 放ッテミナヨ」
言葉に遠慮無く、矢が放たれた。空気抵抗を受け軈て失速する物だが、放たれた矢は初速で飛んでいたにも関わらず、スカルポーンの指骨の間に挟まれた。
「ネ? 悪イヨウニハ ナンナイッテ」
「レビン、クイント。行こう」
ジャックの目が静かに揺れる。三人は饒舌なスカルポーンに従って、スカルナイトとスカルポーンの軍団の後に付いて行くのであった。
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