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魅了の冒険  作者: 塩味うすめ
27/66

時に。従って、変わり。③

時に。従って、変わり。③


************************


「ツマラヌ。我ヲ。マンゾク サセヨ」 

 

 望みの塔、20階。関の主の部屋。黄金の冠を乗せたスカルが、一段高い所で豪奢な椅子に座っている。


「王ヨ。舞踊カ ウタ ヲ 披露、イタシマショウカ?」


「慰ミハ イラン! 我ラノ 一族イガイ 誰モ、コノセカイニハ 居ランノカ!」


 壮麗な衣装を身に纏ったスカルの進言に、王と呼ばれたスカルは、腹立たしげに椅子に手を叩きつけた。


 セカイを与えられたスカルキング達。このセカイには彼らの繁栄を邪魔するものなど無く。彼らの戦う術が否定される事も無い。


 皆、満足する筈であった。


 セカイを手に入れようと動き、それが出来たのだ。スカルキングも目覚めた当初「セカイハ、我ラノモノ」と配下の者達と一緒になって喜んでいた。

  

 もう何も欲する事は無い。


 セカイを与えた神は一族の意思が満たされ、次に何処へ向かうのかを期待していた。新しいものを見せてくれるのではないかと。だが、神の思いが通じる事は無かった。

 

 彼らは満足しなかったのだ。


 不死の体では、どれだけ繁栄をしても無為となり。彼らの一族だけでは、戦う術を守っても誇りとなる事もない。 


「我ラヲ 畏怖シ、羨望ノ マナザシデ、ミル者ハ 居ランノカ!」


 スカルキングが椅子から立ち上がり、天を仰いだ。配下の者達も、王と不満を同じくしている。時を選ばず、足を踏み鳴らす音が鳴り響く。

 高くそびえ立つ建物から、今日も地団駄が聞こえるのであった。


***************************


 望みの塔、16階から20階。


 ア・サードは天井を見上げていた。


 望みの塔の16から20階層は、全ての階層を用いて1つのセカイを為している。そのセカイの中に一際目立つ建物がある。5階建の城だ。

 21階層へは、この城の最上階にある扉から行くことが出来る。


 16階層に着いた三人は、その一際目立つ城へと入っていった。大きな門をくぐり、庭園を抜け、大きな扉を開けた。要所に発光する物が設置されており、城の中は明るい。壁際には人の形を模した彫刻像があり、栄華を知らしめる。


 今、三人は広いエントランスホールで天井を見上げている。天井の高さは20m。その天井には美麗な絵が描かれていた。


「でけぇな」


「高い」


「綺麗だね」


 城の豪華さに、圧倒されるア・サード。暫くの間エントランスホールから動こうとしなかったが、レビンが目を見開く。何かを思い付いたようだ。  

  

「ねぇ、ジャック。トーテムポール!」


「ああ。キキクリクさんから聞いたヤツな」


「トーテムポール?」


 ジャックとクイントの視線を受け、はしゃぐレビン。


「そう!僕達が肩の上に乗って積み重なるアレ。キキクリクさんの出身国には似たような物があるらしくて。それの名前がトーテムポールって言うんだって!」


「それがどうしたの?」


 クイントの疑問にレビンは顎に手を添え、うんうんうんと何度も頷く。


「天井が高く、天井には絵画が描かれている。怪物の気配はなく、もっと近くで見たい。僕は背が低い、そこでトーテムポールの出番。という訳だね」


「何が、という訳だね。だ!レビン、やんねぇからな」


 ジャックの指摘にレビンは手を散らし、フルフルフルと何度も首を振る。


「何時でもしてくれるって言ったのに」


「!?何時でもなんて言ってねぇ。しかも、それはガキの頃の肩車の話じゃねぇか」


 レビンの髪の毛がしなしなと萎えていく。ジャックの片目が閉じられ、背を反らす。クイントの目がジャックを責めるように見はじめる。

 

 ジャックから「しゃぁーねぇなぁ」と声が絞り出された。


 クイントの肩の上にジャックの足が、レビンの足がジャックの肩の上に。高さ5m以上のトーテムポールが完成した。 天井の絵画は20mの高さにあり、5m高くなったとしても詳細には分からないだろう。


「どうだ?」


「あんまり変わんないね」

 

 レビンはそう言いつつも、満足そうな顔をしている。だが、下の二人にはレビンの表情は見えない。ジャックとクイントは不満げな顔をした。


「クイント。行こう」


「うん」


 クイントがジャックとレビンを上に乗せたまま、移動し始めた。


「え?ちょっとクイント?待って。ジャック?止めてよぉ」


 クイントは待たない、ジャックも止めない。エントランスホールの天井は20mだが、それに続く廊下の高さは4mだ。5mの高さの物は4mの高さには入らない。

 

 レビンがエントランスホールの壁に激突はしなかった。器用にジャックの肩から壁の装飾部に飛び移り、大事には至らなかったのだ。


「移動式トーテムポールなんて聞いていないよ!」


 レビンが怒って言うと、掴まっていた装飾部が崩れ落っこちてしまう。ジャックが落ちてくる装飾部を払い、クイントがレビンを受け止める。大きな音と埃が舞った。


「ぶつかる前に、ちゃんと投げてやったろ?」

  

「落ちたじゃないか!でも、二人とも助けてくれてありがとう。トーテムポールもしてくれてありがとう。だけど!5mの高さで移動するのはまだ早いよ!心の準備があるから!」

 

 ジャックは頭を掻いている。レビンがクイントから降り、指を立てて二人に準備の大切さを説く。


「しししっ」


「ったく場所を選んでよ。くすくす」


「ははっ」

 

 クイントが笑いだす。レビンも説教しているのが可笑しくなって笑い。ジャックも二人を見て笑う。このホールで笑い声が聞かれたのは、いつ振りだろうか。

 

 三人の陽気な声が、高い天井に反響していく。


 天井の絵画には王を中心とした一族の姿が描かれている。地面に置かれた壁際の彫刻像達は、全て一様に天井を見上げ、崇拝するような姿で作られていた。


 城の一階、奥。

 

 エントランスホールの音に反応し、動き出したモノ達がいる。それらは揃いの鎧を身に纏い、一糸乱れず足並みを揃える。96体のスカルポーンと24体のスカルナイトがア・サードに向かい、行進を開始した。


************************ 


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