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魅了の冒険  作者: 塩味うすめ
16/66

信じる。ことに、頼る。①

信じる。ことに、頼る。①


********************


 ベイスンの街にいくつかある広場。その内、望みの塔から一番近い広場で三人はガイザックを待っている。


 1ヶ月の間に、三人はガイザックについて知った。


 18年ぶりに望みの塔90階層へと、到達したパーティー〈エイマー(目指す者)〉のリーダーである事。

 望みの塔で負傷した者を助け出したり、街で起こった問題を解決している事。

 

 英雄ガイザック。


 そんな人物を待たせる訳にはいかないと、約束の時間より早く待っているのであった。

 

「あのさ、ジャック。どうしてガイザックさんの誘いを受けたの?」


 レビンは顕現図を地面に書きながら尋ねた。ジャックは広場の入り口を見ている。


「えっ、いや。レビンもクイントも、お願いしますって言ってたし」


「ジャックも」


 クイントが目を光らせる。


「無駄に格好いいな、クイント。まっ、でもよ。あの時は助けられた後だったし、悪いようにはなんねぇと思ったんじゃねぇのか?」


「そうだね。断りづらかったってのもあるよね。もう、そろそろかな?」


 レビンは顕現図を描くのを止め、ジャックと同じように広場の入り口を見始めた。二人の言葉を聞いたクイントは何かを言おうと口を動かすが、決心がつかないのか開いては閉じを繰り返す。

 クイントの目が曇り始めた時、広場に入ってくる人達が見え三人の意識はそちらに集中する。

 

 先頭にいるガイザックが手を振り近づいてくる。後ろには5人の見るからに冒険者と分かる風体の者達が続く。じゃれ合う双子。姿勢良く歩く者。さりげなく周囲を警戒する者。三人を見定めようとする者。広場の雰囲気が変わる。三人以外の人々はガイザック達を見ると、敬遠するように離れていった。


「待たせたか?すまんな。こんな所で待たせて」


 ガイザックは周囲を気にする事なく、三人に話しかける。 


「ガイザックの加齢臭のせい」「同意よ。漂っているもの」


「加齢臭と待たせる事に因果関係はない。そもそも、時間通りに来ている」


「ロンウェルはつまらない」「同感ね。枕の綿を抜いておこう」


「!この前、綿が無かったのは君達か!?」


「「キキクリク」」


「キキクリク。後で、話がある」


「ひでぇや、姐さん達。内緒にするって話だったじゃん..」


「ちょっと、あんた達。静かにしなさい」


 次々に口を開く、ガイザックのパーティーメンバー。三人は雰囲気に飲まれ、ただ成り行きを見る。


「はは....えっ?ミーミー、メイメイ。俺の加齢臭は漂うタイプなの?」


「修行をすれば、さ迷うタイプにも」「寄り添うタイプにも」「「なれる」」


「もう!ミーもメイもそれぐらいにして。ほら、ガイザック。ちゃんと私たちを紹介して」


「す、すまん、ナタリー。そうだな・・・」


 ガイザックは気を取り直し、一人一人メンバーを紹介していく。ミーミーとメイメイは武闘家。ロンウェルは槍使いの治癒士。キキクリクは狩人。ナタリーは魔法使い。


「そして、俺は大剣使いのガイザック。一応このパーティーのリーダーだ。あと一人、コリンというのがいるが、今は俺達のホームでクラウドシープの世話をしている。以上が俺達〈エイマー(目指す者)〉のメンバーだ」


 ガイザックが言い終えると、すっとナタリーが横から出てくる。


「ナタリーよ、よろしくね。坊や達の名前はガイザックから聞いているわ。この中で私が一番年上になるけど、失礼の無いように注意する事、いい?氷漬けにされたくないならね」


 手のひらを前に出すと、魔力を放出させるナタリー。その魔力は普通と違い、冷気を伴っていた。空気中の塵が凍り、キラキラと輝く。

 その様子に三人はコクコクと頷きを繰り返す。ナタリーの後ろではガイザックが震え上がっている。


「ちょっちょっとナタリーさん。ビビらせてないで」


 居たたまれなくなったのか、キキクリクが割って入る。


「いやね、そんなつもりはないのよ。それで、あんた達の冒険職は何かしら?」


 三人は誰が答えるか、押し付け合う。


「く、クイント、頑強度上がったし」「レビン、憐れみだ」「僕は、ほ、ほらアレだから、ここはやはり斥候のジャックが」「アレってなんだよ!?」「アレはアレだよ」


「早く!」


 声に押されて出てきたのはジャック。背筋を伸ばし、腕は真っ直ぐ体に張り付けている。


「お、わたしは剣士と斥候です。レビンは魔法と弓を使います。クイントは大盾使いで、治癒士です」


「へーなるほどね。少ない人数を個人の役割を増やす事で補いたいのね?」


「お、はいっ」


 受け答えるジャックを見るレビン、クイント、ガイザック、キキクリクの4人の目は優しい。


「人数を増やす気はないの?」


「ね、ありません」


 ジャックの目に真剣さが増す。ナタリーは「そう」というと下がり、すれ違いにガイザックへ耳打ちをする。ガイザックが頷くと残りのメンバーを連れて、広場から去っていった。

 メンバーの見送りを終えたガイザックが三人の側に寄る。

 

「うちのメンバーがすまんな。皆、お前らに会うのを楽しみにしていたんだ。それで、場所を移そうと思ってな。あいつらは先に行って準備しておくそうだ」


「はい。わかりました。ですが、どうして僕達を?」


 緊張から放たれたジャックは半ば放心しており、クイントが介抱している。


「気になるか?まぁ、そうだな。お前らも気付いていると思うが、今は冒険者が少なくなっていてな。いや、違うな。冒険者の数自体は多いんだ、だが安定志向型というのか、望みの塔の低層階で収穫物(ハーベスト)を得て、それをベイスンの街の外に売りに行く者が多くなっているんだ」


「望みの塔の中で、他の冒険者にあまり出会わなかったのはその為ですか」


「そうだな。10階層より先へ行く者も、少なくなってきている。そこで、お前らみたいな有望そうな奴らに声を掛けている。というわけだ。あとは」


「あとは?」


 クイントが何かに押されるように、前に出てくる。ジャックはもう立ち直ったようだ。


「あとは、単純に気に入ったってだけだよ。お前らの事が。ほら、組合所で楽しそうにしていたのを見てよ」


 ジャックが嬉しそうに体をくねらせる。くねくねと。


「....勘違いだったかも」


 くねるジャックは両手をダラリと下げて腰を折り、ガイザックを見る。


「はは。冗談だ。さぁ、行こうか。お前らを誘ったのは、話をする為だけじゃない。お前らの実力を知りたいというのもあるんだ」


 そう言うと、ガイザックは望みの塔へと歩いていく。その後を三人は、遅れないよう付いて行くのであった。


************************


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