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この人生の終わらせ方  作者: 妻鹿シジミ
4/8

保土ヶ谷 3

私は、いや私たちは寺社の客用トイレに篭って下半身を剥き出しにしていた。そして私たちの股間はそそり立っていた。



いや、失礼。急に卑猥な表現驚いたであろう。


私もなぜそうなったかあまり覚えていない。



順を追って話そう。

母方の実家は大きな寺社である。そこには私と同年代の従兄弟がいた。

毎年恒例で春先に実家へ赴き裏山の筍を掘るのだがその年は雨が降っており親たちだけで生えてきて欲しくない道の筍だけ掘りに行った。

寺社には濡れた私たちだけであった。これまでと同様一緒に風呂に入り出たところまではなんら変わらなかった。


どちらからであっただろうか、多感な年代である、ふと陰部の話になった。


そしてお互い精通していることを確認し合い見せ合おうと言う話になった。

そして話は戻り、客用トイレで抜きあうことになったのである。


覚えていないと、よく言ったものだ。我ながら白々しくて笑えてしまう。



なかなかディープな春休みも終え私は中学生となった。



さて、中学生というのは毎日が小宇宙のような日々である。何か特筆すべき話題があるかと問われれば何もないし、何もない平凡な日々だったのかというと実に非凡であった。


所謂、語るに語り尽くさないのである。


ここで現れるのが照井である。これは彼の通称なので本名ではない。サッカー部の彼はハットトリックを毎試合するなどと言った一角の選手であった。しかしなぜか運動音痴の私とよくつるんでいた。



最初は仲が実に悪かったのである。



中学一年生の頃、流行ったのはズボン下ろしである。

中学一年生の脳は小学一年生の脳と変わらないようで進学したはずがリセットされるという特徴がある。


かく言う私もリセットされた口だ。



なぜ仲が悪くなったのか、そう。ズボン下ろしが原因である。

私が彼のズボンを思いっきり下げたのだ。見事な下りっぷりであった。足首までストンと落としたのである。


冗談のつもりでやったその行為を彼は烈火の如く怒った。


彼は私を殴り蹴り、私はほうほうな体で逃げるしかなかった。謝罪したもののそれ以降彼とはしばらく口を聞かなかった。


しばらくして、彼が私に声をかけ一緒に帰るようになり蟠りは溶けていった。彼はこの件を今だに口に出さないし私も今日の今日まで忘れていた。

きっと彼はこれからも思い出さないだろうし、私は彼と話す内容が合わなくてもこのサバサバした関係が心地いいのでまた長電話をするのであろう。




声変わり。皆はいつしたか覚えているだろうか。


私はこの時まだ声が高かった。

私が入学した中学校は合唱コンクールに偉く力を入れていた。私は音楽が好きだしとても張り切っていたが、何せ周りの男子が出るような声量で低音を歌うのが難しかった。


私は1人、ソプラノパートに配属され「男子ちゃんとしてー」と言う側の1人としてその秋を過ごした。



中学生とは実にいいもので、体育が2でも英語が2でも進学できるのだ。

私は周りの生徒同様、2年生となった。



その頃私はラジオにハマった。


現在私には趣味などなく強いて言えば飲酒くらいのものであるが、この頃はラジオに取り憑かれていた。



その頃私の朝は12時に始まった。


朝起き昼ごはんを食べ、中学校へ登校する。チャリではない。ちゃんと歩いて真面目に制服も着てである。


そして4時間目と5時間目を教室で寝て過ごし、放課後は学校のグランドでサッカーを見ながら照井を待ち、19時には帰宅してラジオを聴きなが食事をとった。それからはずっとラジオである。


今あるかは分からないが、

19時から光邦のトレセン

21時からシェイミのなんだったか…

22時か23時から誰だったかのミューコミプラス

0時からは朝までオールナイトニッポン

そして、よく眠り、昼起きる。


これが中学二年生の私の生活リズムだった。

この一年の遅刻回数は三桁であった。逆にすごいと思う。

欠席日数はほぼゼロなのだ。

欠席日数の時は放課後まで起きなかった時だけであるし、放課後は制服を着て学校に行っていた。


今考えると頭がおかしいのではないかと思う。



そんな私も合唱コンクールの時期だけは遅刻しないのである。学年主任が「毎月合唱コンクールしようか」と私に相談してきたこともあるくらいである。



そんな偏った生徒をよく思わないクラスメイトはたくさんいた。

私は指定のカバンがお下がりで早々に壊れたため適当なトートバッグで通学していたが、その鞄の持ち方をオネエだと言われたことがある。


私にはそれが分からなかった。肘にかけて持っただけでオネエと言われるのは心外である。

今彼らに会って、目の前でオネエとはどう言うものなのか見せつけてやりたい。



さてその頃照井には彼女がいた。みずきである。私にもかんなという少し豊満な彼女がいた。私たちはよく遊んだ。

しかし、照井はみずきを好きすぎるあまり私たちとの時間を削るようになった。


実はかんなは照井と付き合った経験がありおそらく引きずっていたのだろう。

ある日輪から外れて行く照井を好ましく思わなかったかんなは照井の下足箱から靴を取り水に付けてまたしまうというなんとも幼稚な行動に出た。

ちょうどその頃登校した私と鉢合わせ、私も罪を被ることになったのだが私は「やるならもっとやっちゃえ」と葉っぱを掛けて教室で授業に出た。


ん?かんなは何をしていたのかと疑問だろうか。彼女は授業をサボり元カレの靴を濡らすと言う愚行をしていたのだ。



放課後、私は呼び出された。天気のいい放課後であった。


呼び出しを受けた原因はなんとなく心当たりがあった。

遅刻しすぎなのだ。それはそれは毎日のことであるから注意を受けるのもよくわかる。面倒くさいながら渋々向かった。



生徒指導室に呼び出されたのだが、そこにはかんなとかんなの金魚の糞、そして照井がいた。


おやおや、これは話が変わってくるぞ。


どうやらかんなとかんなの金魚の糞は私に葉っぱを掛けられたことでさらに水に浸しにいったそうだ。

そして見回りをしていた教員に見つかり、なぜか私の名前を出したと言うことらしい。


バカである。



照井は言った「何がしたかったの?」


私は言いたかった「何がしたかったの?」



かんなと金魚の糞は言った「スッキリするかと思った」



照井は言った「スッキリした?」


私は言いたかった「スッキリした?」



かんなと金魚の糞は言った「余計にむしゃくしゃした」

そして口々に謝罪をした。


私も形だけの謝罪をした。



その後、私は2人に言った「何がしたかったの?」



照井の部活をしている間、太陽が靴を乾かしてくれたので無事照井は帰ることができた。

そして私も照井と一緒に帰った。


バカなことを止められず申し訳ない。しかし前のように遊びたいと伝えた。

照井は言った。「お前のことはもう許してる。けどあんな幼稚なことする奴らとは付き合い方は考える」と。


実にまともである。




さて話はだいぶ進むが、この話題は避けて通れない。

時は2011年。卒業シーズンである。


私は人生初のCDを買った。RADWIMPS、絶体絶命である。3月9日のことである。


そこではない。わかっている。

3月11日。

その日が来てしまった。



私はいつも通り昼過ぎに登校し終業式前の短縮授業の放課後学校内をいつものメンバーと鬼ごっこをしていた。階段を駆け降りていたのである。


どこかで、ガンガンガンガンと工事のような騒音がしていた。

私は目眩がしたと思い立ち止まった。


しかし揺れていたのは地面だった。校舎から皆グランドに逃げて来て生徒たちは大混乱だった。


さっきしていた音はどうやら近所の打ちっぱなしゴルフ場の骨組みがなっていたようだった。


鬼ごっこどころではない私たちは全員耐震工事を終えたばかりの体育館に避難して余震が来るたび悲鳴を上げた。

その後体育館内で班が決められ団体で帰宅した。



さて母に逃げられ仕事に打ち込んでいた父は再度転勤を迫られていた。福岡へである。


父は単身赴任をする気であったようだが、私はもうすでに保土ヶ谷の街に飽き飽きしていた。私は意地でもついて行くと言い張った。


長男は高校卒業と同時に家を出ていたし

長女は高校卒業と同時に子供が生まれたし

次女は高校卒業後、宗教活動に打ち込んでいたし

三女はまだ高校生だった。


そしてうちには別居している母がいた。


この時第一次一家離散が決定した。

福岡へ行くのは父と次女、私である。

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