ヲタッキーズ111 ヲタ友の価値
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第111話"ヲタ友の価値"。さて、今回は東秋葉原のカフェで大量殺人事件が発生します。
背景にセレブの警視庁エリートを巻き込むスキャンダルが浮上、さらにヲタッキーズ初のスキャンダルも重なって…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 カフェ殺人事件
SATO司令部。心理作戦部長室。
「南秋葉原条約機構もZ世代からずいぶん変わった。昔は貴女のような傭兵は珍しかった」
「つまり…妖精の傭兵?」
「いいえ。先頭に立つ妖精って意味ょ」
モリン・モール心理作戦部長の慎重な言い回し。
「昔、SATOのタスクは人気がなかった。貴女の仕事ぶりを知ってる。今やSATOの希望の星だわ」
「どうも」
「私のように、SATOの部長の椅子に長く座っていれば、組織が個人より上位の存在だとわかる。貴女は、テリィたんではなくてSATOに尽くすべきだわ」
対するエアリは、必死にあくびを噛み殺す。退屈ょ…
「自分の責務は理解しています」
「あの敵性次元への情報漏洩は、ルイナの独断だったの?ソレともテリィたんの指示?」
「良いですか?テリィたんは、ルイナを惑わせたりはしません」
秒で"揚げ足取り"に転じるモリン・モール。
「では、テリィたんとルイナの意思疎通は、不十分だったと言うワケね?」
「ルイナは、テリィたん推しです。意見の相違はあっても最後は上手くコトが運ぶ。ただ、ルイナには天才としての矜持がアル」
「では、ルイナがテリィたんを振り切り、1人で動いた結果と言うコトね?」
エアリは、辛抱強く首を振る。
「いいえ。そうは言ってません」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
当のルイナは、僕の晴れ姿?にホレボレしてるw
「どうかな、ルイナ?」
「もぉ最高ょテリィたん!大成功!」
「やった!成功かな?」
ルイナのラボに持ち込んだバイクに跨り、僕は"お面ライダー"のコスプレをしている。緑の服に赤い目のマスク。
バイクの正面からは、レースクイーンのコスプレをしたスピアが、ロケで使う巨大な扇風機で僕に風を当てている。
「OK。"お面ライダー"のコスプレにより、気流は1000分の1秒改善したわ」
「その差がロードレースでは勝敗の分かれ目になルンだ」
「バイクメーカーからのリクエストで空気力学の実験なんて久しぶりだわ!」
頬を上気させてルイナはハシャぐ。彼女は首相官邸アドバイザーを務める超天才。トレードマークは車椅子にゴスロリ。
「チーム・ルイナ!ピットストップ!」
ラボのモニターに最高検察庁ミクス次長検事の顔…彼女は、僕の渋谷時代の元カノだ。自分のオフィスから電話してる。
「神田花籠町のカフェで異次元人を含む8人が射殺された。既に万世橋警察署が現場に急行してる。貴女達にも最初から噛んでもらいたいな」
「OK。ヲタッキーズにも声をかけるわ」
「ありがとう…で、ラッツ。貴方には別の話がアル」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕は、ラボの別室でミクスとアプリで通話。
「御機嫌だな、ミクス」
「まぁね」
「嫌な予感しかしないけど、どーした?」
ミクスは、誕生会の秘密企画を明かすようなルンルンぶりw
「神田リバーからファーストクラスで週末ニューヨークへ飛ぶの。しかも無料ょ」
「そりゃ最高だねー。やったな!」
「向こうの大手法律事務所から面接に呼ばれた。パートナーを1人、同伴出来る。旅費はモチ、先方払い」
ちょ、ちょっち待てw
「カフェで8人死亡だろ?」
「万世橋が頑張ってる。ラギィ警部の仕事ょ。ね、私と行きたくないの?ニューヨーク。面談ナンて形だけ。夜はライブハウスやミュージカル三昧ょ!」
「おいおい。花籠町の被害者は"blood type BLUE"。異次元人絡みの事件だから、どーせラギィはSATOとの合同捜査をリクエストして来る。後でユックリ話そう」
あら?意外だわ、って顔のミクスw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田花籠町の現場には、万世橋のパトカーが集結。黄色いテープで規制線が張られ、制服警官、刑事、鑑識が右往左往w
「テリィたん!カフェの中はまるで"聖バレンタインデーの虐殺"ょ。8人の内5人は後頭部を撃たれてる。処刑スタイルだわ」
「ヒドいな。動機は何だょラギィ」
「強盗ポイけど…レジのお金は手つかずなのょね」
万世橋の敏腕警部は頭をヒネる。彼女とは彼女が前任地で"新橋鮫"と呼ばれていた頃からの付き合いだ。
"舞い降りた"ヲタッキーズのエアリ&マリレと現場のカフェに入る。中は血の海。思わず眉をひそめる。
因みにエアリとマリレはメイド服。ココはアキバだからね←
「チェラ・ロウラ。ベテラン女刑事で店の常連。非番だった」
「え。ラギィの部下か?」
「署を挙げての麻薬取り締まりの時、彼女は警ら班を指揮してたわ」
元軍人のマリレがしゃがんでロウラの腰の辺りを観察。
「ホルスターのスナップを外して音波銃を抜いてるわ」
「あら残念。撃とうとしたけど間に合わなかった?」
「シェフは包丁を出したけど音波銃にはかなわなかった」
通路に包丁を握りしめたシェフの遺体。
「ラギィ。コチラの男性は?」
「ソレが所持金も身分証もナイのょ」
「シェフに続いた勇敢な客って感じ?let's roll的な?」
ラギィ警部の案内で奥の廊下に進むと…遺体が数体折り重なる凄惨な殺人現場だw
「5人は、この廊下に連れて来られて処刑されました」
「コチラの人、ローレックスしてるわ」
「どーやら、金やブランド品目当ての犯行ではなさそうね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
何と現場に警視庁の諜報官が顔を見せる。
「私は、外事諜報課のシュミ・メット」
「所轄のラギィょ」
「迅速な捜査に感謝する。ロウラは、諜報課にいた時の私の部下だった。優秀な部下だったが…こんな最後はムゴ過ぎる」
シュミは、180はありそうな長身。
ソコへ、店内で何かモメる物音が…
「あ。通してくれ、私が呼んだ」
「そうょ。この御紋が目に入らぬか!」
「スピア?」
何と殺人現場にレースクイーン?まぁ既にメイドが2人w
で、レースクイーンのコスプレの上に貼られたワッペン…
「警視庁外事諜報課のワッペンょ。ルイナのSATOの処分を知って、私達に桜田門が声をかけて来たワケ。条件はポリグラフにパスするコトだけだったわ」
「あのさ。せめて僕に話せょ」
「さっき召集されたのん!」
慌てて取りなすシュミ。
「万世橋の鑑識が現場検証の時間を取りたいそうだ」
「被害者達がカフェのどの席に座っていたかは、凝集性モデルでわかるって、ルイナが」
「今度はルイナかょw」
既にスピアのスマホ画面にルイナが映ってる。
「例えば、大学のカフェテリアでは、学生が座る席は最初に来た集団に左右されるでしょ?先ずチアリーダーが来る。そして、運動部。当然彼等は、チアリーダーのそばに行く。次に来るのはアニヲタね。いじめられないように、運動部から遠い席に着く。カフェでも、トラック運転手は1人でカウンター。老婦人はジュークボックスから遠い席」
「そして、カップルはボックス席!」
「その通り。カップルって死語だけど…凝集性モデルを被害者達の特徴に当てはめ、属性を絞り込めば、各自がどの席に座ったか自ずと見えてくるわ」
珍しくわかりやすいルイナの説明w
「え。何だょラギィ」
「ウチの上の方がカート・ヤーグに会いに行けって…でも、私は苦手なのょね。SF映画専門の映画会社"銭洲スタジオ"のやり手社長ナンだけど、大物スターや政財界に顔がきくって噂ょ。ヲタッキーズの方で相手してくれない?ホラ、合同捜査の岩崎ヨシミで。じゃ大至急」
「え。岩崎良美?友人と結婚したけど…」
第2章 凝集モデルの結論
晴れた日の銭洲スタジオは華やかだ。アチコチに宇宙人やスーパーヒーロー、怪獣や宇宙服の俳優がウロウロしてる。
"クリアランス16"の大物搬入口。
「万世橋のロウラ刑事が今朝殺されたって?」
「早いな。名前は公表してないし」
「この街の情報源はニュースだけじゃナイ」
カート・ヤーグ社長は、アラフォーで脂の乗り切り男子。
「実は、2年間ロウラには脅迫されてた。奴は、桜田門の外事で長くスパイをしてた」
「脅迫されてたのか?」
「YES。しかし、警察には相談出来なかった。罪は犯してないが、ココまで登り詰めるには、色々恥ずかしいネタがあってね」
頭をポリポリ掻くがネタが何かは逝わない。
「ん?もしかして、そのファイルを探せと?」
「俺に貸しをつくるには絶好の機会だぞ」
「実に興味の湧かないオファだ」
やり手社長は鼻で笑う。
「"貸し"は、誰にでも必要だ。君のボスも、俺のために動いた。だから、こうやって俺達は会ってる」
逝うだけ逝って、スタスタ歩き去るカート・ヤーグ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部で捜査会議が開かれる。
「じゃ警部は、犯人の狙いはロウラだったと?」
「だって、マリレ。カートには彼を殺す動機がアル。殺し屋を雇ってロウラを殺させ、その巻き添えで7人が死んだのょ」
「とりあえず、ヲタッキーズは殺されたタクシー運転手の動きから調べてみるわ」
ヲタッキーズは、僕の推しミユリさんが率いるスーパーヒロイン集団で妖精のエアリとロケットガールのマリレがいる。
「マリレ。ロウラには2人子供がいたの」
「コッチのウェイトレスには4人。シングルマザーだったのね。ソレから殺されたシェフ。車椅子の父親の面倒を見てたそうょ。ロウラは刑事だというだけで、特別なワケじゃナイわ」
「警察では、刑事殺しは最重要事件なのょ」
エアリは、慎重に言葉を選びながら断言。
「殺された8人にとっては、等しく重要な事件なの」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ラボで無邪気に歓声を上げるルイナ。
「万世橋と言い外事諜報課と言い、警察って素晴らしい組織だわ!SWATや電気街に密接した組織づくりに薬物防止教育の先駆者でもアル」
「最近では"ドラグネット"の主人公も警官ょね?」
「YES。彼のバッチ番号714は永久欠番になったのょ!」
相棒のスピアとキャピキャピ話す超天才ルイナ。
「街で売ってる怪しい薬にも同じ番号が刻印されてるらしいわ…あ、深くは聞かないで。使ってナイわょ私」
「楽しそうでよかった。ルイナ。貴女、輝いてる」
「輝いてる?うーん"分子の再配列"とでも言うべきかしらね」
ココでスピアのPCがpeepと鳴る。
「ルイナ、解析結果が出た」
「OK。テリィたんに連絡しましょう」
「違うでしょ。外事諜報課のシュミ・ミットさんょ」
思い切り残念そうな顔のルイナ。
「そっか。そーだったわね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したら居心地良くて(僕含むw)常連が沈殿、回転率が落ちて困ってるw
「ロウラに脅迫されてたのなら、カートが第1容疑者ね」
「警視庁の外事諜報課って知ってるか? 」
「CIAのようなモノ。過激派に潜入したりして、ヤリ過ぎだという声もあった。その後、職務を逸脱、スキャンダルも起こして改組されたって聞いてたけど…政治家や役人、文化人や財界関係者の秘密ファイルを集めてたって噂ょ」
ソンなコトをマジでやってたのかw
「まるでFBIだな」
「ロウラの銀行口座を開示するよう令状を取ってる。カートの証言の真偽が直にワカルわ」
「そっか」
あ、話の相手は次長検事のミクスだ。渋谷時代の元カノなので、カウンターの中のミユリさんは警戒態勢だ←
「ラッツ、忙しそうね。何だったら面接は1〜2週間伸ばしてくれるわ」
「ニューヨークの話?でも、どうせ別の用事が出来るし」
「令状を確認スルわ」
顔を曇らせお出掛けするミクス。
一部始終を見ているミユリさん。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「凝集モデルによって、被害者の座席位置を確認出来たわ」
捜査本部のモニターに、カフェの見取図が映し出される。
被害者のサムネイルがそれぞれが座っていた座席を明示。
「ルイナってスゴいな。SATOの処分には感謝しかナイ。でも、7人分か?被害者は全部で8人だが」
「そうなの、シュミさん。被害者3番のロバト・アバスは何処にも収まる場所がナイ」
「ソレどーゆー意味?」
ラボからリモートで解説するルイナ。
「再び大学のカフェテリアに話を戻すわね。学生がそれぞれの席に座ってる。でも、転校生は友達がいないから、何処に座るべきか迷う」
「つまり、アバスはウロウロしてたってコト?」
「YES」
ソレを聞き、ラギィは重要情報を明かす。
「被害者番号3番ロバト・アバスの手からは発射残渣の硝煙反応が検出されてる」
「え。どの程度?」
「ウチの鑑識が言うには7発程度」
自分を除く被害者数に一致w
「でも、彼が犯人なら銃は?」
「現場からは出てないわ」
「ソレに…そもそも誰が彼を殺したの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
1時間後。
「警部!ロバト・アバスの素性が割れました。10週で警察学校を中退してます」
「クスリでクビになったらしいわ」
「だから、知識と腕を活かせる裏稼業に鞍替え?ヤーグ社長に雇われてロウラを殺したとか?」
部下の妄想に苦笑するラギィ。
「ソレで気が咎めて本人は自殺。そして、彼の銃は静かに店のドアから出てったとか?ねぇアバスは、いつ警察学校をクビになったの?」
「2015年です」
「ロウラが卒業した年だわ。薬物検査で引っかかった男が、警察学校のカフェテリアでベテラン刑事のロウラと仲良くお茶してたとは思えないわ」
ラギィは頭をヒネる。
「ロウラの情報屋だったんだわ。多分」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部にはヲタッキーズも詰めている。
「エアリ。通報は何時だっけ?」
「えっと散歩中の女性が銃声を聞いて…5時30分に通報したみたいね」
「その頃、刑事のロウラが4度も同じ番号に電話してるわ。最初は5時20分。最後が5時28分」
本部のモニターには、電話会社が任意で提出したロウラの電話履歴の画像が映っている。
「アバスの目を盗んで発信したのね?しかし、4度も?」
「銃撃戦が始まる直前だわ。誰に電話してたのかしら?」
「なぜか警察ではなくリンタ・ポッタ。神田山本町在住」
第3章 魔性のイケメン
エアリとマリレがワンルームマンションのドアホンを押す。薄くドアが開いて、人懐っこい顔のイケメンが顔が現れる。
「ヲタッキーズです。私はマリレ。コチラはエアリ」
「え。僕、何かしちゃったかな?」
「いいえ、未だょ」
リンタ・ポッタはイケメンだ。ニコリと笑う。
「ヲタッキーズって、ホントにメイド服ナンだね。メイドさんを外に立たせるワケには行かないな。さぁ中へどうぞ」
顔を見合わせるマリレとエアリ。
「万世橋警察のロウラ刑事とは面識が?」
「だから、来たんでしょ?でも、俺は8人も殺してナイょ」
「でも、ロウラは死ぬ直前に4度も貴方に電話してるわ」
慌ててスマホをイジるイケメン。
「ホントだ。メッセージがナイから気がつかなかった」
「昨日の朝5時、どちらに?」
「ソファーで眠ってた。"シン・ウルトラマンタロウ"を見てて寝落ちした。えっと、ロウラとは去年出逢って、軽くつきあった」
涼しい顔でスラスラ話すイケメン。
「刑事が殺される前に、通報もせズ、貴方に4度も電話してるのょ?1度も気づかなかったワケ?」
「ふだんスマホは切ってる。必要な時しか使わない」
「ふーん」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、捜査本部のギャレー。僕は、ココのパーコレーターで淹れた薄いコーヒーが好きだ。濃い珈琲は、鼻血が出るw
「ミクス。転職したかったのか?」
「わからない。ただ可能性を探ってるだけ。せっかくハーバードのロースクールを出たんだし、もちょっと年収を稼いでもバチは当たらないかなって」
「ニューヨーク逝きは、チャンスだね。ただ、僕は…」
一緒にコーヒーを飲んでるのは検察庁のミクス次長検事だ。国際的な大手法律事務所から引き抜きの話が来てるようだw
「なになに?私に何か?ねぇ話して!」
「その、何て逝うか…」
「テリィたん!予備の弾道検査の結果が出たって。被害者全員が同じ9mm銃で撃たれたらしい!」
マリレがギャレーに飛び込んで来て慌てて"離れる"僕達←
「全員が同じ銃で?」
「YES。未だ予備検査だけど…ソレから、使われた弾丸だけど、全て警察専用の刻印の入った弾丸だったらしいわ」
「じゃ発砲したのは女刑事のロウラか?」
ミクスが尋ねる。現場にいた警察官はロウラだけだ。
「あれ?でも確か、硝煙反応が出たのはロバト・アバスだけだったょね?」
「警察学校中退のジャンキー?」
「でも、警官でもないのに、なぜ彼が警察専用の弾丸を?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
早速、捜査本部にいるシュミを捕まえ詰問だ。
「わ、ミクス次長検事!何でココに…わかった。所轄やSATOには話せない事情があった。実は、ロバト・アバスは外事諜報課の情報屋だ。事件の時は極秘任務に就いていた」
アッサリ重要情報を明らかにするシュミ・メット。
やはり、一緒に来てくれたミクスの存在は大きい。
検察は、無条件で警察を威圧スル←
「その情報屋のアバスはカフェで何をしてたの?」
「ソレが…彼は、実はロウチ刑事とは親交があった。ただの情報屋との関係を逸脱スルような…」
「ソレは、男と女の関係ってコト?じゃ2人は逢引き中に、たまたま事件に巻き込まれたワケ?」
何という不運…ってか、御愁傷様←
「恐らく。ただ、そう簡単に殺される2人じゃない。恐らくロウチが撃たれ、アバスが反撃に転じて、犯人に発砲したんだと思う」
「(ソレ早く教えてょ)で、被疑者の見当は?」
「デレク・ブロクだ。銀行強盗でロウチに捕まり、蔵前橋(重刑務所)に7年服役した。公判では、アバスが裁判で証言している」
直ちにマリレがデータベースに照合スル。
「デレク・ブロク。"blood type BLUE"異次元人だわ…3ヶ月前に保釈され、その日のうちに"リアルの裂け目"の向こう側に強制送還になってる」
「何が"向こう側に送還"だ。昨夜、ウチの外事2.5課が奴の女を神田佐久間町で捕まえたバカりだ」
「女がいるなら、奴も秋葉原にいるわね」
外事諜報課シュミ・メットがヤタラと手際良くまとめる。
「デレク・ブロクは、ロウチを追ってカフェにたどり着き、ソコでアバスとも出くわし殺した。その場の目撃者も始末して合計8人を殺した…としても不思議は無いな」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ルイナ。警視庁外事諜報課の顧問の仕事、楽しそうだな(SATOの顧問の時よりw)」
「そぉ?でも、実は自分でも驚いてる。秋葉原の仕事が、こんなに恋しくなるナンて。"リアルの裂け目"関連の犯罪現場とかね」
「そりゃマズいな。立派なヲタクだ」
僕は、心底良かったと思う。しかし、ルイナは…
「SATOのモリン・モール心理作戦部長が容赦ナイの」
「彼女には、真実を話せば良いさ」
「でも、私のせいでテリィたんを追い込んでナイ?第3新東京電力でのキャリアを台無しにしたって」
あれ?ルイナは何処まで知ってルンだ?
「僕のコトは大丈夫さ。機密情報アクセス権を取り戻せょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。当のモリン・モールはマリレを締め上げてるw
「ヲタッキーズのマリレ。元軍人の貴女なら、規律の重要性はわかるわょね?」
「中尉曰く"唯一の規則は迷ったら撃て"だったけど…」
「貴女はルイナを支持するの?」
レトリックだわ…辟易するマリレ。
「そーゆーワケではありません」
「でも、彼女が規律を破ったのは事実ょ?」←
「軍人なら規律を守って死ぬコトもアルでしょう。でも、ルイナは"単なる天才"です。軍人じゃナイ。そして、秋葉原は今まで何度も彼女に助けられて来ました」
ソレを聞いて、モリンはPCをピシャリと閉じる。
「彼女は、規律を破った。先ずソコから始めましょう」
未だやるの?…ウンザリするマリレ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
2時間後。SATO司令部。
「エアリ。もうSATOの心理作戦部長サマとは話した?」
「モチ。ママに叱られた3才の時を思い出したわ」
「私なんか、あと5分でヒトラーの暗殺を認めてた」
マリレは、1945年の陥落寸前のベルリンからタイムマシンでアキバに脱出した"時間ナヂス"だ…あ。彼女は国防軍w
「ただの勘だけど…あのリンタ・ポッタってイケメン、何か隠してる気がスルの」
「あら。イケメン引力に取り込まれた?ストーキングとかしないでょw」
「万世橋の資料に拠ると、本名リンジ・ファマ。何とスゴ腕の結婚詐欺師ナンだけど売春の前もアル。しかも、検挙したのはカフェで一緒に殺されたロウチ刑事…」
司令部のモニターに防弾ベストを着たラギィ警部が映る。
「ヲタッキーズ。デレク・ブロクの女が彼の居場所を吐いたわ。来る?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
現場は神田リバー沿いの廃屋だ。
「万世橋のSWATと外事諜報課で正面は固めた。ヲタッキーズは?」
「マリレ?」
「OK。ヲタッキーズ、裏口はクリア」
無線からラギィの声。
「閃光音響手榴弾の投擲まで3, 2…万世橋警察署!万世橋警察署!」
「動くな!手を上げろ!」
「逃げても無駄だ!」
廃屋内に稲妻が光り同時にガラス窓を割り、半裸の男が2人、飛び出して来るw
1人は着地で足を挫き、倒れたトコロをエアリに捕まる。メイドに捕まる強盗←
イマイチ情けないw
「待て!」
もう1人は神田リバー沿いの道を逃走、通りかかったハシケへとジャンプするw
追うマリレは、ロケットガール装備でハシケに文字通り飛び移り音波銃を抜く!
「ヲタッキーズょ!動いたら撃つ!」
ところが、先に銃声がして、男はユックリと倒れるw
マリレが振り向くと河岸で拳銃を構えるシュミの姿←
「何で撃ったのょ?!」
「メイドさん、命を救ってやったのに礼の1つもナシか?」
「ギブアップしてたわ」
しかし、シュミ・ミットは意に介さない。
「銃に手を伸ばしてた…だが、おめでとう。ヲタッキーズがカフェ殺人の犯人をつかまえた!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の捜査本部。
「マリレ。シュミ・ミットのファイル閲覧を申請したって聞いたけど…」
「ええ。合同捜査だから、SATOにも彼が関わった発砲事件の資料を請求スル権利はアル」
「YES。モチロンあるわ。でも…マリレの命の恩人でしょ?」
ラギィは遠回しに迷惑だと逝っているw
「命の恩人?ラギィは現場を見てたの?」
「あらあらあら。どーしたの?」
「別に」
ヲタッキーズの同僚エアリが割って入る。
「待ってょ。そうは見えないわ」
「ヲタッキーズのお2人。デレク・ブロクの家から出たアバスの銃と被害者が撃たれた銃とが一致した。警官を取り調べるようなマネは控えて頂戴。お生憎様ね」
「ラギィ。一方で、死んだロウラ刑事とアバスは、1500万円以上の金を隠し持ってた。そして、2人ともシュミットの部下で殺されてる。私達はSATOょ。警察だって取り締まるわ。そのつもりで」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、SATO司令部に併設されてるルイナのラボ。
「そもそも警察やSATOへの捜査協力は、テリィたんの気を引くためだった。だから、暫くお休みスルわ。だって、今の私は犯罪ヲタクになってる。ゴールドバッハの予想の素数を考えるべき時に殺人事件の増加を心配してる」
「そぉね、その通り!」
「それにアダマール行列のパターンではなく強盗のパターンを分析してる」
無責任な相槌、いや、合いの手?を入れるスピア。
「心の底から同感スルわ」←
「オイラー・マスケローニ定数を140万64桁まで出したけど、ホントに有理数なのかしら」
「コード211って何?美味しいの?」
話は噛み合ってナイが、ソレゾレが納得←
「私、ココで終わりにして1から考え直すべき時ょ!」
「ソレでこそ超天才!」
「何件もの捜査協力より、1つの定理の方が役に立つ。グラフ理論で腎移植に貢献した実績もアル。何千人もの命を救えるカモ!」
ココで相棒ハッカーのスピアが鋭く突っ込むw
「ルイナ。貴女、ホントは…怖いのね」
「バレた?実は、ビクビクなの。SATO顧問の頃、私は無邪気に捜査に熱中してたけど、私のせいでヲタッキーズが仕事を全て失うかもしれないと思うと…」
「大丈夫ょ。何とかなるって」←
ルイナは唇を噛む。
「いつもテリィたんは、私の犠牲になってきた。テリィたんは、後悔して無いと言うけど、私は後悔してる。もう2度と繰り返したくない」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
マリレは、イケメンを訪れる。
「ロウラに逮捕されて、貴女は彼女の情報屋になった。そうょね?」
「彼女は俺を守ってくれた。そんなの初めてだった。でも、俺にとっては、全て過去のコト。東秋葉原でスニーカーショップを開くンだ。融資に支障が出たら困る。なぁコレって融資の審査に響くと思うか?」
「真実が聞きたいの」
正面から見据えるマリレ。フト遠い目になるリンタ。
「ロウラは、俺に夢中になって、挙句に離婚スルとか言い出したンだ。重過ぎるだろ、ソレって」
「つまり、貴方には1線を越える気はなかった?」
「あのさ。俺達の人生は、いつだって綱渡りだ。良い時もあれば、悪い時もアル」
女を惑わす、リンタのクールな眼差し…
「その中で、俺達は必死に生き抜くのさ。上手くバランスをとりながら…」
「ねぇ最後にロウラに会ったのは?」
「いつまで質問スル気だい?」
リンタは、マリレの首に手を回し、唇を近づけ…キス。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
「ラッツ。ロウラがヤーグを脅迫してたのはウソじゃなかったわ」
「お?ロウラの預金口座の明細か。サスガはミクス次長検事サマだな。何処で手に入れた?」
「国税庁からリクエストさせたら銀行が開示した。ボタンさえ押せば扉は開く。アバスにも同程度の金額の預金があったわ。発覚を恐れて、複数の口座に振り分けてたけど…どんなに裕福でも脅迫されていたのならヤーグに殺人の動機がアルわ」
カウンターの中でミユリさんが(恐らく)聞き耳を立ててるw
「ヤーグ社長は、どーしてもファイルを回収したいんだろうな…ニューヨークには?」
「明日の最終便で飛ぶわ。私1人で」
「モリン・モールの呼び出しさえなければな」
鼻で笑うミクスw
「ラッツが来ないのはわかってた。もうヤメましょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
撮影所の構内はカートで移動だ。ゴルフ場みたいw
「ヤーグ社長。ロウラの情報屋アバスと面識は?」
「誰だ?知らないな」
「またトボけて。彼の口座には、社長が振り込んだ800万が入ってた」
ニヤリと笑うヤーグ社長。
「だから、脅されてると言っただろ?」
「何で警察に訴えなかった?」
「おいおい。ソンなコトしたら、たちまち俺の秘密がバラされちまう…ソンなコトより、俺のファイルは?」
自らカートを運転しながら尋ねるヤーグ。
「見つける気が湧かない」
「おいおい。じゃあ今日は何しに来たんだ?」
「社長は2人とトラブってた。だから…」
カート・ヤーグ社長は、カートを急停車させ吠えるw
「俺が犯人なら、とっくにファイルを取り戻してる!お前に頼んだりスルものか!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。万世橋の捜査本部。
「エアリ!デジタル記録ょ。無線、モバイル端末、メール、報告書…ロウラとアバスに関係するモノは全て集めたわ」
「警部自ら書類箱を持参?感激ょありがとー!しかし、ソレにしても手が早いわね」
「元カレに頼んだ。実は、後でゲイだとカミングアウトされてケンカ別れ」←
チョロリと舌を出すラギィ警部。
「あのね。私が間違ってたとは思いたくないんだけれど…ただ、恐喝がホントなら…」
「わぁ!ホントにスゴい量だわ!スーパー倍速で目を通すけど、今宵は徹夜になりそうょ」
「エアリ。あのね。今、本庁には、こーゆーのをアッという間に分析出来ちゃう人がいるのょ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田花籠町。ベッドに横たわる全裸の男女。
「尋問の最後は、いつもこーなるのかな?メイドさん」
「…いいえ。こんなの初めてょ」
「きっかけは?なぜヲタッキーズに?ソレより…なぜ軍人になったんだい?」
聞き上手なイケメン。しかも、全裸だ。乙女の理想←
「リリーマルレーンょ」
「ララ・アンデルセン?生まれた時にはいなかっただろ?」
「10才の時、骨折してひと夏レコードを聞いて過ごした。何度も何度も繰り返して聞いたわ…ねぇ。なぜロウラは、4度も貴方に電話をしたの?」
イケメンは、半身を起こしマリレの裸の胸を見つめるw
「質問するために俺と寝たのか?メイドさん」
「北アフリカ戦線では、21時57分のベオグラード放送から流れるリリーマルレーンをイギリス軍も聞いてたのょ」
「…俺は"トブルクのネズミ達"かょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同じ夜。"潜り酒場"。
「超高層ビル最上階の御屋敷か…地上の喧騒を忘れられるわ」
「最近どうなの?」
「…私、ニューヨークに行くカモ」
カウンターを挟みミユリさんと…ミクス。今カノvs元カノw
「大手の法律事務所からヘッドハンティングされてる」
「貴女の資質に見合う飛躍のチャンスだわ」
「でも…ホントは行きたくない」
メイド服のミユリさんはグラスを拭きながら問う。
「そう伝えたの?…テリィ様には」
「ソレが、その、あの、ハッキリとは」
「おつきあいの仕方は変わらないのね…昔から」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌朝のSATO司令部のギャレー。
「マリレ!こんなトコロでモーニングコーヒーを?昨夜は徹夜?秋葉原に捜査網でも敷こうかと思ってたわ」
「エアリ。リンタの家に行ってたの」
「へぇ彼氏は何て?」
答えがナイ。カップにコーヒーを注ぐエアリの手が止まるw
「昨日と同じメイド服?まさか、殺人事件の重要参考人と寝たの?」
「…しくじったわ」
「しくじるドコロじゃナイわ!大失策だわ!最悪ょ!」
ギャレーの隅に連れ込まれるマリレ。
「これキリょ。ただの判断ミスなの」
「最悪のミスでしょ!」
「でも、カレは事件に絡んでナイ…と思う」
エアリは天を仰ぐw
「呆れた人ね!寝たばかりのアンタが言うコト?もう、彼に近づいちゃダメ!ソレが無理なら、絶対に彼を近づけナイで!OK?」
足音も荒く歩き去るエアリw
第4章 警察の敵は警察
同時刻。万世橋の捜査本部。
「徹夜でデータ分析したわ。"隠れマルコフモデル"で結果が得られた」
「隠れ…何?ソレ、美味しいの?」
「機械学習のコトね?」
ルイナのアプリ経由でのプレテに、同じくアプリで参戦しているミクスが直ちに反応、ラギィ警部の度肝を抜く。
「わ、わかるの?」
「いいえ。でもラギィ、貴女も少しは慣れたら?」←
「…3Dステレオグラムを想像して。例えば、何の変哲もないキャベツ畑。でも、じっと見つめて視点を遠くに移すと、隠された別の絵が浮かび上がる。同じように、ココにある情報も警察活動の結果に伴うデータの寄せ集めに見える。でも、立体画像のようにデータを繰り返し何度も眺めると、隠れたパターンが見えてくる。ロウラは、いつもココを巡回してた。どのシフトも5〜8台のパトカーがいてロウラはA14号車。応援の要請が入らない限り、この区域から出ない。そして…いつもココから通報が入る」
本部のモニターに写る東秋葉原の地図に赤い点が出現。
「ヤーグ社長の銭洲スタジオだわ。いつも何がしかの通報がアル」
「そして、応答するのは決まってロウラ。受け持ちエリア外なのに、常に近くにいる」
「通報が来るのを知ってて待ち受けてる」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜も捜査本部は眠らない。
「週に1度ヤーグ社長が通報し、無線司令は、いつも近くにいるロウラに対応させる」
「ロウラは、銭洲スタジオで誰にも見られズに現金を受け取る。証拠はナシ」
「そして、通報に"対応"した後、ロウラは、必ずコード7、つまりランチを取って、外事諜報課の刑事と合流してる。ソレが…」
ラギィ警部が唸る。
「ソレがシュミ・メット?ヤバいわ。警察の敵は警察だったワケねw」
「黒幕は彼です。シュミ・メットは、金を取り立てるリクスを回避しロウラに"受け子"をやらせてた」
「でも、2週間前は2日で3回も自分で出向いてるわ」
ラギィ警部が推理スル。
「ロウラ達とお金を山分けスル気がなくなったのね。何か借金でも抱えたのかしら。上がりを独り占めスル事にした。さらに、ファイルの買い取りと引き換えにヤーグ社長に大金を要求スルことも考えついた。ところが、実際にファイルを持っているのは…」
「ロウラだった。ソコで、シュミはカフェでロウラとアバスにファイルを要求したが…」
「拒否されて2人と、反撃して来たシェフを殺した。さらに、アバスの銃で5人を撃ち、目撃者を消した?」
捜査本部がシンと静まり返る。ラギィがつぶやく。
「さて。この仮説をどう立証するかね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
銭洲スタジオの試写室。フワフワのソファに長身を沈め、サイドテーブルのブランデーを注ぎ煙草をふかすヤーグ社長。
「ヤーグ社長。毎週毎週、窃盗や器物損壊、不法侵入で警察に通報してますね?」
「ん?リアルのメイド服か?女優かと思った…多額の税金を払ってるんだ。警察を呼ぶ権利はアルだろ」
「なぜか毎週、カフェで殺されたロウラ刑事が駆けつけてますね」
ウンザリ顔のヤーグ社長。
「…だから、脅迫されてたと言っただろ?」
「2週間前、シュミ・メットが来ましたね?」
「メイドさん、余りでしゃばるな。首相官邸に連絡するぞ」
ムーンライトセレナーダーが前に出る。僕の推しミユリさんがスーパーヒロインに変身した姿だ。
「もう連絡したのでしょ?彼は、最高検察庁に電話した。そして…潰された。御友人を無くされましたね」
「シュミがファイルを手に入れると約束したんだ!ただし、方法までは聞いてない。だから、彼がしたコトは、私の責任じゃない」
「わかってます。だから、協力してくださいな」
ヤーグ社長から聞くべき言葉はゲット。もう十分だ。
「協力?8人も殺した刑事に不利な証言をしろと?そんなコトしたら、俺が9人目の犠牲者になる…そもそも、起訴材料が揃ってナイから証人を探してルンだろ?他に証拠がアルなら、今さら俺に頼る必要もナイ」
社長は忙しげにインターホンに告げる。
「シーン7、回してくれ」
「はい。直ちに」
「さ、仕事だ。どいてくれるか、メイドさん」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の取調室で煙草に着火するシュミ・ミット。
「貴方は、8人もの人間を殺したのね?」
「おいおい。情報源は銭洲スタジオのカート・ヤーグだな?SF映画専門スタジオの社長は、想像力だけは豊かだ」
「彼をユスッていたわね?」
桜田門エリートの取り調べだ。ラギィ警部自らが行う。
「所轄がヤーグ社長に証言させられるか?奴は、永田町のお友達との脱毛に忙しいぞ」
「ロウラは、アンタが欲しがってたファイルを持ってなかった。ソレが彼女の不幸」
「何の話だ?俺は手錠されてないし、組合の代表もいない。どーやら俺を起訴に追い込む材料は持ってナイらしいな。所轄が本庁職員にカマをかけても無駄だぞ。私だってこの世界は長いんだ」
ラギィ警部は、全く動じない。
「へぇそうなの。で、懲役20年はどう?30年は?終身刑はどーかしら?」
「私は任意で出頭してる。だから、任意で去るコトにスルょ。さよなら」
「薬殺刑のチオペンタールが血管を流れる時、ヒヤッと冷たいそうょ。楽しみに待ってて」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
別室で取調べをモニターしているヲタッキーズ。
「あらあら。やっぱりシュミ・メットはファイルを持ってなかったみたいね」
「それじゃお金も入らズ、シュミは相変わらズ金欠のママだわ。どーにかしてファイルを手に入れ、お金をゲットしないと」
「しかし、何でロウラは焦ってたのかな。ナゼでしょ姉様」
ムーンライトセレナーダーがつぶやく。
「4度の電話は、ファイルの回収のためかしら」
「なるほど!ところが、ファイルを預けた相手が電話に出なかった?」
「多分ファイルはリンタ・ポッタのトコロね。ラギィに令状を取ってもらいましょ」
ムーンライトセレナーダーはラギィ警部に連絡。
その間にエアリは、マリレに小声で耳打ちスル。
「令状が出るまで動いちゃダメょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。ルイナのラボ。
「そんな不安そうな顔を見るのは久しぶりね。起訴は取り下げられたし、友達も救えた。もっと自信を持って、ルイナ」
「スピア…私が機密アクセス権を取り戻すコトが、ヲタッキーズが仕事を失うコトになりかねナイ。辛いわ」
「ソクラテスみたい。死刑宣告を受けたけど、信じるモノを全て否定すれば、生き残れる可能性が十分にあった」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
モリン・モールSATO心理作戦部長室。
「…では、ルイナ。時に、テリィたんの規律を無視した行動も致し方なかったと?」
「テリィたんだけでなく、ヲタッキーズのみんなを間近で見て学んだコトです。ソレは、自分の命を賭けて秋葉原を救う姿。確かに、時にSATOの規律を乱すコトがあったとしても」
「例えば、テリィたんが勝手に異次元人捕虜を釈放したコトがあったわ。事件番号β-246537。この時、テリィたんは…」
ルイナは車椅子の中でウンザリする。
「この面接は、私の機密情報アクセス権に関する審査じゃないんですか?」
「私だって悪党をやっつけたい。でも、異次元人少女の売春や児童ポルノで稼ぐ連中にも手を上げなかった。我慢したの。従うべき規律が禁じてるからょ。規律が権力乱用を防ぐの。私達は、秋葉原を守ると誓った。そのためには、規律が必要なの」
「"クリトン、アスクレピオスに鶏のお供えを。忘れずに借りを返しておくれ"」
まるで詩を朗読スルかのようなルイナの言葉。
「な、何なの?」
「私には、テリィたんとヲタッキーズを売るつもりはありません。車椅子だからって見くびるな」
「テリィたん自身が蒔いた種なの。彼は、ますます暴走して取り返しがつかない。もう取り繕えないの。彼を助けてあげて」
「決定を待ちます。貴方の判断は尊重します。どーでアレ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
ウキウキと御帰宅して来るのはリンタ・ポッタ。
カウンター席に座っているマリレの耳元で囁く。
「電話ありがとう。会えるとは思ってなかった」
イケメンはメイドの顔を覗き込む。
息がかかる距離で、笑顔が弾ける…
「…あれ?挨拶もナシ?どーしたの?」
「リンタ。貴方は初めて会った時からウソをついてた。でも、オトボケは終わりょ。貴方は殺人を幇助した」
「おい!俺は、犯罪者じゃナイ。ヤメろょもっとメイドらしく振る舞え」
顔色ひとつ変えないマリレ。カウンターの中では、メイド長のミユリさんが静かにグラスを拭く。他に御帰宅はいない。
「何だょ!このロクデナシ!」
捨て台詞。お出掛けするリンタはマリレに腕を掴まれる。
「犯人は、平気で8人も殺した奴なの。私達が貴方を見つけたように、奴も貴方を簡単に見つけるわ」
「ほっといてくれ!」
「待って…何?エアリ?後にして!」
このタイミングでスマホが鳴るw
「マリレ!リンタの令状をとったわ。執行しましょ。逃したくない。今どこ?」
「カレは逃げたりしないわ…」
「待って!マリレ。まさかアナタ、捜査を妨害スル気?」
マリレはスマホを切る。既に、リンタは専用EVで地上だw
ロケットガール装備でマリレは急降下。駐車場で追いつく。
「俺がファイルを持ってたのは、頼まれたからだ。縁は切れかけてたけどロウラが好きだった。欲しいならヤルょあんなファイル。もうたくさんだ!」
リンタは、振り返り車にキーを差し込む…その瞬間、車は大爆発!両手を上げ吹っ飛ぶリンタ!なぎ倒されるマリレw
夜の駐車場に赤黒いキノコ雲が立ち上る!車の後部座席はファイルごと火の海。衝撃波で駐車場中の車の警報が鳴動←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
任意だが取り調べに応じ、カート・ヤーグ社長が万世橋に出頭スル。ラギィ警部が取り調べるが、さすがに喫煙はナシ。
「社長は、ロウラとアバスに15万ドル以上渡しましたね」
「ソレを否定したコトはナイ。恐喝されてた」
「支払いは、上海経由でシンガポールの銀行からだ。現地の子会社が映画"ヲタクの黄昏"制作費の名目で小切手を切ってます」
良く調べたな、と内心舌を巻くヤーグ社長。
「…確かに。ただし、自分の金をどう使おうと勝手だろ?」
「ただし、その金が株主の金となると、警察にも関係してきます。背任・横領罪ですね」
「ラギィ、ファイルの画像復元が出来たょ」
僕が取調室に顔を出したのは、このタイミングだ。ルイナがファイルの萌え残りから復元した画像だ。
ブラックホールの画像で有名な"イベントホライズンテレスコープ"の高度なデータ処理技術を応用。
「ありがとう、テリィたん…え。プププっ!何なのコレ?笑える」
僕とラギィは、ヤーグをチラ見しながら笑いを堪える。
銭洲スタジオのカート・ヤーグ社長は思い切り仏頂面。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
警視庁の外事諜報課オフィス。
「どーするラギィ?SATOが挙げても良いのょ?」
「ありがとう、ムーンライトセレナーダー。でも、私がヤルわ。警察の1番の敵は悪人じゃなかった。身内だったわ」
「来たのか、秋葉原のヲタクども」
シュミ・メットは自分のオフィスで立っている。
既に背広を脱ぎ、ネクタイも取り…待っている。
「両手を後ろに回して組んで」
シュミは、大人しく後ろ手に手を差し出す。
手錠をかけ、オフィスから連れ出すラギィ。
「警察の敵は、警察なのね」
シュミ・メットは笑っている。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。カートを引きながら、ミクスが御帰宅。メイド長自らが御給仕スル。
「行くの?」
「止めても無駄ょ」
「聞いて。貴女はチャンスを掴むべきだと心から思ってる。でも、この秋葉原で勝負して欲しい…私と」
しばらく、見つめ合う今カノと元カノ。
「…早く言ってょミユリさん。また、何マイルも無駄に溜め込むトコロだったわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
別れもアル。秋葉原の寒い夜。街灯の下で。
「ソンな価値が、あのファイルにあるのか?」
「いずれ聞かれる。秋葉原にはいない方が良いわ」
「違う。あのファイルのコトさ」
リンタ・ポッタは、マリレに未練タラタラだw
スーパーパワーの強フェロモン放出を試みる←
「ソレが仕事なの」
「誰にも言わない。わかってるだろ?」
「でも、私が覚えてる。ずっと忘れられないから」
リンタ・ポッタは、マリレの首筋を指で撫でる。
「…縁がなかったンだな。ソレにリリーマルレーンを聞いてたのは"トブルクのネズミ達"だ。男娼じゃない」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
SATOのモリン・モール心理作戦部長室に入るのは…僕。
「テリィたん。座って」
「レコーダーは?」
「今、電源を入れたわ」
モリンは赤い録音ランプの点いたレコーダーを僕の前に。
「…ルイナは、アキバの防衛に不可欠だ。民間軍事会社"ヲタッキーズ"CEO、第3新東京電力"タカマガハラ・プロジェクト"の責任者として断言する。ルイナなしでは、アキバの防衛と逝う責務を全う出来ない」
「テ、テリィたん!ホンキなの?」
「…ルイナをSATOに戻さないなら"ヲタッキーズ"は解散し、第3新東京電力は"タカマガハラ計画"を放棄スル。以上だ」
ICレコーダーの電源を切りモリンに投げ返す。
「…テリィたん、貴方のメイド長も御主人様と物事の考え方が同じみたいね」
「そーか?初めて逝われたょ」
「全くヲタクって」
モリンは、長い長い長い溜め息をつく。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ルイナ!ソレでどーだったの?モリン部長の面談」
「恐れていた通りだったわ、スピア。機密情報アクセス権が欲しいならテリィたんを差し出せって」
「あの女狐!で、何て答えたの?」
スピアは、ルイナに回答を急かす。
「決まってるでしょ。仕事なら他にいくらでもアル。でも、テリィたんは1人だけ」
「あら?テリィたんの口癖は使わなかったの?呆れた」
「テリィたんの口癖?何?」
スピアは、超天才相手に上から目線だ。
「ヲタ友1人は、リアルな友達100人の価値がアル」
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"警察の闇"をテーマに、警視庁エリート、警察学校中退の悪者、悪者の手下となるジゴロ、ジゴロにひっかかる女刑事、スキャンダルを握られたセレブ社長、銀行強盗、警察の闇を暴く超天才や相棒のハッカー、ヲタッキーズに敏腕警部などが登場しました。
さらに、超天才の機密情報アクセス権の復活をめぐる人間模様などもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、第5次ワクチン接種が本格化しつつある秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。