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6.おじさんのこと護りたいから

 ある日の夕暮れ時、フィオーネへの指導を終えて自室へ戻ろうと歩いていたリベルの耳に何やら乱暴な声が飛び込んでくる。


「髪型だっせーくせに一人前に男抱えてんだなぁ!」

「てめぇきのこかよ!」

「どうかしてやがるやつの保護者だろ? ならいっつもきっちり見張れや! 何勝手に歩かせてやがる!」

「あいつ! いっつもベンチで寝やがって!」


 喧嘩か何かだろうと判断したリベルは、賑やかだなぁ、としか思わなかった。自分には関係のないことだと思っていたからだ。無関係な揉め事に首を突っ込む気など一切ない。

 だが、大男数名に囲まれている人物が他人ではなくアウピロスだと気づいた時、彼の意識は一気にそちらへ向いた。


 他人事ではない、と、思考が切り替わる。


 リベルは迷うことなくそちらへ歩き出す。


「お兄さんたち、こんなところで何してるのかなー?」


 声をかけるリベルは笑顔のまま。

 彼は本当の心を見せない。


「あ! リベルくん!」


 安堵の表情を面に浮かべるアウピロス。


「噂をすりゃ、じゃねえか」


 大男たちのうちの一人がそう言ってリベルに一歩近づくと、他の男たちはにたにたといやらしい笑みを目もとに滲ませる。


「おじさんが何かした?」

「てめぇに言っても無駄だからよ、こいつに言っておいたんだ」

「僕のことなら僕に言ってねー」

「だ! か! ら! てめぇはへらへらするだけで聞かねぇだろ!」


 大男は吐き捨てるように発してからアウピロスの手首を掴みその身を引き寄せるような動きをする。


「そこでな、やり方を変えることにしたってことよ。まずは保護者であるこいつに分からせてやることにしたんだ」

「……ベンチの話?」

「それもだがそれだけじゃねえ!」


 言って、アウピロスの手首を掴む手に力を加える大男。

 アウピロスは圧と痛みに顔をしかめる。

 それを目にしたリベルはついに手を動かした――大男の前腕を握る。


「手、離してよ」


 リベルは冷ややかな目つきで低い声を出す。


「はぁ?」

「おじさんは関係ないでしょ」

「はぁー? かっこつけてんじゃねえよ、ばーか」


 少し間を空け、続ける大男。


「ま、てめぇと仲良しってこたぁ、このおっさんもクズなんだろうなぁ、間違いね――ぎゃ!」


 リベルは右手から魔法を発動する。

 高威力のものではない。

 ただ、それでも耐性のない者からすれば痛く恐ろしいもので、肩から腕にかけての辺りに攻撃を受けた大男は情けない声を発した後に一歩後退した。


「いってぇ……」


 リベルはアウピロスを庇うように立ち、自身より遥かに大きい男たちと対峙する。


「こ、このやろ……!」

「いい機会だ! 分からせてやろう!」

「おす!」

「無能なきのこがいる分こっちが有利だぞ!」


 かっこ悪くて今さら退けない男たちは一斉にリベルに襲いかかる。とにかく数で圧倒するというこのうえなく狡く情けない作戦に出たのだ――が、彼らの素人同然の拳は回避され、逆にリベルに叩きのめされた。低威力魔法にすら対応しきれない男たちは次々倒されてゆく。リベルが加減していたために誰も死にはしなかったが。ただ、力の差が大きすぎたため、数で圧倒する作戦は失敗に終わった。


「こんなものかなー」


 リベルはいつも通りの穏やかな笑顔に戻る。


「あ、ありがとうリベルくん……」

「罪なきおじさんを虐めるなんて酷いなぁ」

「助かりました……」


 だが。

 背後に回っていた男一人がアウピロスに襲いかかる。


「もうやけくそだ!」


 その手には刃物。

 アウピロスは恐怖で動けない、その場で身を縮め瞼を強く閉じる。


 ――だがその刃がアウピロスの身に刺さることはなかった。


 リベルが咄嗟にアウピロスの前へ身を出したのだった。


「……リベルくん!?」


 男が雑に突き出した刃はリベルの右肩に刺さった。

 だが男は慣れていなかった。

 実際に刺してしまったことによって男は怯む、ある意味自滅である。


「リベルく――」

「そこにいて」


 リベルは男へ指先を向け、魔法を放つ。


 敢えて軽めにした一発目。

 男はめまいに襲われる。


「僕のことはどう言ってもらってもいいけどさ……」


 しかしそれで終わりではない。

 リベルは男にもう一撃食らわせる気だ。


「おじさんに手を出したら絶対許さないから」


 放たれる二発目。

 男は気絶した。


「リベルくん!」


 アウピロスは声を荒くする。


「なんてこと! おじさんなんかを庇うなんて!」


 しかしリベルは柔らかい笑みを崩さない。

 それからふと思い立ったかのように自らの手で刃物を引き抜く。


「絡まれて災難だったねー、おじさん」

「そんなこと言ってる場合じゃないんです! 刺されています! 分かってるんですか!?」

「そう慌てないでよー」

「とにかく! こっちへ来てくださいっ」

「ええー」


 とにかく呑気なリベルだったが、アウピロスにひきずられるようにして医務室へ連れていかれた。



 ◆



 後日。

 二人が共に暮らしている部屋にて、リベルはアウピロスに叱られた。


「もう二度とあのようなことをしないでください! 特に! おじさんなんかのために傷つかないでください!」


 リベルは「うんうん、気をつけるねー」と言うけれど、真面目に聞いている感じではなく、さらに突っ込まれてしまう。


「きちんと聞いていますか!? リベルくん!!」

「ちゃんと聞いてるよー」


 刺された傷はたいしたことはなかった。

 医務室で適切な処置をしてもらったため、今のところ傷口がどうにかなっているということもない。


「何を言ったか言ってみてくださいっ」

「もう二度とあのようなことをしないでください特におじさんなんかのために傷つかないでください、だよねー」

「そう!……分かりましたか?」

「ごめんね無理かなー、おじさんのこと護りたいからー」

「もうっ」


 さりげなく従わないと伝えられ、アウピロスは不満げな顔をする。


「……でも、ありがとうございました」


 だがリベルのことを嫌いになったというわけではないようで。


「護ってくれたこと……感謝はしています」


 話の最後には感謝の気持ちを述べていた。



 ちなみに。

 リベルを刺した男はもちろんのこと、アウピロスに絡みリベルに襲いかかった男らも、皆処分された。

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