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タナベ・バトラーズ レフィエリ編  作者: 四季
2部

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52.いつからそんなことを思うようになったか(1)

「いやー、助かったよ! ありがとうフィオーネ」


 フィオーネはまだベッドの上にいる。早く出なくては、早く仕事に戻らねば、そう思いつつもレフィエリシナからもう少しここにいるよう言われていて。そのため仕方なく休んでいるのである。背中に受けたダメージは意外なものでもう半分くらいは回復している感覚があるけれど、それでも、レフィエリシナからじっとしていろと言われてしまうとどうしようもないのだ。


 で、今はベッドの横にいてくれているリベルと会話している。


「いえ……その、無事で良かったです」

「あはは! あーりがとー! それに、意外な形でおじさんにも会えてラッキーだったよ」

「なら良かったです……」


 フィオーネは起こしていた上半身を横にする。そしてそれから掛け布団代わりの白いタオルを被った。一枚のタオルでは寒さは防げないが、寒くて被ったというわけではないのでどうということはないのだ。そのタオルを防寒具として使うわけではないから。


 その時、入るわよ、と女性の声が飛んできた。

 そして、数秒後、カーテンがしゃっと音を立てて開いた。


「リベル少しいいかしら」

「あ、はーい。何ですー?」

「岩の化け物が街に! ……対処、できるかしら」


 リベルは少し驚いたような顔をしたがすぐに柔らかな笑顔に戻る。


「できまーす」


 そうしてフィオーネとリベルは別れることとなった。


 出てゆくその背を見送って、フィオーネは少しばかり不安を抱く。彼は生き延びてくれるだろうか、あんなことがあったからか今はついそんな風に思ってしまって。彼が強者であることは知っているのに、それでもどうしても、彼の勝利を信じきれない。どうしても不安が込み上げて、波となったそれをうねりに呑まれそうになる。


 もうやり直せない。

 だから慎重に動いてほしい。


 でもリベルはそんな風に慎重にはならないだろう、そういう人間だ。


「リベルを心配しているの? フィオーネ」

「えっ……」

「そんな顔をしているわよ」

「あ……は、はい。その、少し……」


 俯くフィオーネ。

 その手をレフィエリシナの両手がそっと包み込む。

 彼女は言葉は発さなかった。けれどもフィオーネには分かった、心を護り励ましてくれているのだと。心配しなくていいのよ、と、その行動で言ってくれているのだと。


「ありがとうございます、お母様」



 ◆



 リベルが駆けつけた時、レフィエリの街は大騒ぎになっていた。


 前に森で見た紋章岩を繋げた化け物――それが北側から人々が多く住む街へ迫ってきていたからだ。


 それは、空という画用紙いっぱいに描き込まれたよう。

 人間なんて微生物かと思ってしまうほど大きい。


 大きさゆえか動きは遅い。が、あれが街へ踏み込んだならきっととんでもないことになるだろう。神殿だって破壊されるかもしれない。


 そう思ったから、リベルは急ぎめの気分で化け物の方へと進んでいった。


「おい! しっかりしろ!」

「大丈夫ですか!?」


 化け物の方へ進んでいっていたリベルは、崩れた壁の陰で飛ぶ緊急性を感じさせる声を聞き、そちらへ視線を向ける。


 するとそこには人に囲まれている女性がいた。


 女性へ目をやって、ふと、過去の記憶を思い出す。


 銀細工のような美しい髪。今はきっちりまとめてはおらず一つに束ねているだけ、しかもそれすら乱れているが、それでもなお煌めく髪の毛は輝きを失っていない。


 リベルはそれを知っている。

 前に赤ちゃん用品店で会ったあの女性だ。


「大丈夫ですかー?」


 リベルはその人の群れへ駆けてゆく。


「あっ……」


 銀髪の女性はリベルの顔を見てハッとする。

 彼女は彼を覚えていた。


「貴方は……確か……」


 周りにいた男女は不思議そうな顔をしながら女性に「知り合い?」とか「どういう関係?」とか聞いていた。


「前会ったよねー?」

「お久しぶりです……」

「怪我してる?」

「い、いえ。ただ……もうすぐ産まれそうで」

「ええ!? 今!?」


 女性の正面にしゃがんでいたリベルは、女性のまさかの発言にらしくなく衝撃を受けた。思わず目をぱちぱちさせてしまう。が、そんなことをしている場合ではないことも理解はしている。


「じゃあ避難は無理かなー」

「何とかそうしたいのですが……」

「ゆっくりなら行けそう?」

「はい……」

「オッケー、じゃ、そうしてね」

「……はい」


 リベルは励まそうと女性の肩を二度軽く叩いた。


「死んじゃ駄目だよ」


 それから驚く。

 自分は一体何をしたのか、と。


 死んじゃ駄目、なんて、自分らしくない――そう思って、リベルは、胸の内で呆れ笑い。


 ずっと殺めてきた。

 そのくせ何を今さら。


 ――けれども、その言葉に偽りはない。


 それが事実であることもまた彼自身が一番よく分かっている。いつからそんなことを思うようになったか、それは知らないが。少なくとも、発した言葉に偽りはなかった。


 リベルはすぐに立ち上がり敵が迫りつつある方へと移動する。

 そして巨大な敵、岩を連ねた怪物を見上げる。

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