目覚め
「君たちには異世界に行ってもらう。」
こいつ赤字続きで遂にイカれたか。とその場にいた上沼以外の
全員が思った。
「どういう意味です?休日に呼び出しておいて冗談言ってる暇が
あったら仕事したらどうなんです。」
この出版社「松田出版」はこの頃酷い赤字であった。上司の
上沼によると、極秘ルートで、異世界へと通じているゲートを手に入れたから取材のために行ってこいとの事だった。
これを受け入れられず最年長の開戸 翔太郎は抗議したが、てんで話にならなかった。最年長と言っても24歳である。上司の決定を覆すほどの気力などない。後輩の伊勢 海はどうやら乗り気である。普段は一切口を聞かず陰気な印象であるが、今日はこころなしか少しやる気を感じる。
常田 ひよりはこの件に関して何を思っているか全く分からない。
上沼に渡された住所へ行ってみると、開けた場所に片開きのドアが突っ立っている。確かに人目につかないような場所ではあるが、それにしてもこの場では目立ちすぎである。
「ドアって、大丈夫かぁ〜?」
いつもと違う目つきの伊勢が、いつもと違う口調で喋る。
「はぁ...まぁ仕事だし。とっとと開けてさっさと帰ろう。」
開戸がドアを開けようとした時、
「俺が開ける!」
と伊勢が勢いよくドアを開けた。
開戸が目を覚ますとあまりに殺風景な風景が辺りに拡がっていた。
「やけに眩しいところだな...」
伊勢と常田も目を覚ましたようである。
「何も取材するようなことないじゃないか。もう帰ろう。異世界なんてものがあったと報告するのは癪だが、それだけで十分だろう。上沼さんを信じるなら、初めに目覚めた位地からならいつでも帰れるはずだ。」
「そうですね...ここにいたって何も起こらなそうですし。」
開戸と常田がそんな相談をしているのを尻目に、伊勢はどうもそうは思っていない様子であった。
初連載です。先人の方々からのアドバイス待ってます。