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さて、私はアーバーン・ウォーター。今は水神をやって居るのだけど……犯人を追跡する上での相手の目的を上げると、通常の追跡の人混みに紛れる事はやってはくれなかった様で、面倒な場所に逃げ込もうとして居る様ね。つまりは、別人に化けた上で、他国の大使館に逃げ込もうとしている訳よ。そうされたら面倒な事に成るからそうなる前に捕まえたいのだけれど、いっそ直接転移で大使館に逃げていてくれてれば、大使館側に不法侵入扱いで済んだのに。まあ、だからこそ、転移を咎められない範囲で離れた場所では有るが比較的近場の場所に転移したと。荒事にはしたくないけど、大使館に逃げられても面倒な事に成るから、分体をそいつと大使館との間に大量に配置する。……問題はロールバックのシステム干渉、よね。最初から今迄ずっと其処に在った物以外の物なら何でもどかせそうな能力な訳だけど、システム干渉の深度次第な話。つまり、他の奴が入った容器を自分は自由に動かせる。だから、ロールバックが出来ると言う事なら、その容器の容器を自由に動かせれば良い。完全に能力のレベルの勝負に成る。レベルの勝負なんてアレよね。あえて言うなら、子供の喧嘩に親が参加するとか、相手の権限よりも上位の権限を用意すれば勝ち理論。……それで勝つのはもう最早身も蓋もないわよ……。騎士道とか武士道とか綺麗事は言う気はないけど、ルールを決めた上で戦おう?そんな事知るか。……とかやり始めると小学生の考えた様な思考停止的な理屈も許容する羽目に成って負ける羽目に成るのよね……。……おっと、凍らされたわね。そもそも氷は水の状態の一つ。氷も水の一形態なのだから、普通に操れますよと言うだけよ。そもそも昔の四大元素とか、少ない物で全ての現象を説明する考え方は有るのだし、定義としての水ならそういうのもカバーは可能よ。結界?はぁ。結界は外からの侵入を防ぐ物で、殺界は外に出さない為の物。まあつまりどちらからも干渉が可能な状況でそういうのを使っても、両方から攻撃を通せるのだから、まあ、普通に壊せる。どちらも対処出来る物なら完璧?……ステ振り理論的には特化を器用貧乏に変える暴挙よ、それは……。
まあ、それはさておき、目的は潰せたわ。大事に成ったのだから。追撃者を倒す為の行為をする事は本来ならばベターよ。でも保護される目的の行動の直前にやる事じゃ無いのではないかしら。此方がこいつを引き渡せと言う口実にも成るしね。……まあ迎撃しなければ捕まるかもと言う時に一切相手のダメージに成るような攻撃をするな……なんて要求を満たせと言われてもアレなのだから仕方ないのだけど。只の人違いとする為の変身なのに普通に捕まえる奴を潰す反撃行動をしちゃあ、ね。別人でも暴徒扱いで捕まえられるのよね……。さて、これで相手は大使館に逃げ込んだ、と。まあこれで大使館の奴がグルでも無ければ……。グルなら不味いけど、それなら直接大使館に転移しているから今回は関係無し。後は暴徒を捕まえる旨を伝えれば普通に引き渡される……。これで更に逃げたら二か国を相手にしないと成らなくなるのよね。……攻撃を引き出せて良かった。そうじゃ無ければそのまま逃げ切られているルートも有り得たわ。まあ、その場合はそもそも普通に捕まえる様にしていたけど。……さて、犯罪者の引き渡しを要求しましょう。
「犯罪者兼暴徒が此方に入ったので、引き渡しを求めるわ」
「……暴れたのは貴女様では無いですか?」
「それは犯罪者を捕まえる為にと、自衛の為よ。現に自分を閉じ込めた結界を壊す以外では此処では攻撃行動はしていないわ」
「確かに。では、どの様な方でしょうか?そしてその方が滞在中でも、それは現行犯逮捕には成らない為、貴女様に逮捕権はないかと思われますが」
「監視カメラの映像なら用意は出来るけど、侵入者の……変身能力持ちを連れてきなさい」
「残念ながら私達は個々の能力の詳細把握はしておりませんので、お応えいたしかねます」
「なら入らせて貰うわ。それで自分で連れて来る事にする。入っても良いわよね?余計な場所は荒らさないから」
「貴女様に国境を超える逮捕権が有るようにはお見受け致しませんが」
「脅迫する気は無いけど、そうね、貴方は犯罪者の肩を持つ訳ね?」
「ですからどちら様の事をおっしゃっておられるのかが解らないのですが?」
「……なら、そうね。そいつの現在地点を言えば文句無いわね?」
「盗撮はお止めください。訴えますよ?」
「誰の事を言うかと言う回答よ。そもそも見た目を変えられる奴に見た目と名前で言うと逃げられるだけだし、ここから一番近い二階の応接室の中に居る奴を全員連れてきなさい。それくらいなら、良いわよね?」
「……かしこまりました」
待つ間も探査していると、目標のエネルギー反応が切り変わった。……やらかしたわね。変身能力持ちが変身出来るのが見た目だけなんてルールなんて無かったのよ。それで今変える理由?答えは単純。奴は遠隔操作系のロボットか何かで、此方が探知していたのは其方で有って。本人では無い訳ね。それで接続を切ったと。……身体データを集めていたのは変身能力持ちなのなら、変身する上での参照データが欲しかったと言う所かしら。つまり、犯罪する際の参照データの数がそのまま隠れ蓑に成る。と。対策としては身体データを盗まれた人達の所在地を把握しておく事で、その身体データを元に変身して犯罪をして来た時の潔白証明に使う……だけど、問題はその数よね。まあGPSでも渡して置けば良いかしら?紛失時には連絡をして貰う様にしてしまえば、まだ良いわよね?……敵のお陰で、なのは気に食わないけど、逃がした責任を取って、私の保護下に入って貰いましょうか。
「連れて来ました」
「ああ、はい。ご苦労様。で、問題の奴は此方から見て後ろから二番目に居る奴なのだけど、ロボットか何かだったとか、有るのかしら、此処に来る途中でエネルギー反応が変わっているのだけど、少し前に来てもらえる?」
そしてそいつは前に来て高エネルギー反応が発生したので水を生成し、そいつを包む。……通常の爆弾ならこれで良いかしら?能力の爆発でも緩衝材くらいには成るでしょう。……まあそれにすら成らないパターンでも、此処に居る私は本体では無いから、関係無しでしょう。と言うか能力の無効化的な高性能爆弾を、回収困難な場所で使い捨てなんてしたら、今回は良くても今後がきつすぎるから流石に無いわよね。そして爆発は簡単に抑えられた。さて、自爆して、死に逃げを決めようとしたのか、それとも遠隔操作の人形の処分のためか、さあ、詳しく見させてもらいましょうか。
「この遺体は持ち帰って良いわよね?」
「貴女が爆殺したのでは無いですか?」
「それは言い掛かりが過ぎるわよ。殺すつもりなら、先の時点で本格的に殺しに掛かるべきだし」
「……遺体は此方が預かりますので渡してもらえますか?」
「断るわ。そもそもこれ、触れてみる限りは遺体じゃ無くて遠隔操作の機械人形っぽいし」
「使われている技術が此方も知りたいのですが……」
「後で解析結果は渡すからそれで勘弁しなさい」
「……解りました。ではよろしくお願いします」
「じゃあまた。これについて追加で連絡したい事が有るならこの国の軍の方に連絡でもしなさい。そしたら此方と繋がるから。それじゃあね」
そして私は機械人形を持ったまま転移した。これは軍部の解析班にでも回しましょうか。後、被害者の補償もやらないと。まあ、問題が有るとすれば、GPSを理由の説明もちゃんと話した上で渡す場合、今回の手口の説明もある程度はしないとなのよね。……そうすると模倣犯が出る可能性が産まれるけど、でもそれに対するメタの提示有りきでやる説明な訳だし、……今回の奴をそのままのさばらせるのも違うか。説明もしよう。
要点は、
一、収集された身体データを元に変身能力持ちがそれに変身し、犯罪をして、罪をなすりつけられる可能性が有る事。
二、犯人が捕まる迄所在地の開示をしておく事で、自分の姿で犯罪を行われても不在証明に使える事。
三、不在証明の為に警察側に解る形でのGPSを常時所持していて欲しい事。
四、犯人を逃がした此方にも責任が有るので、此方の保護下に入らないか打診する事。
四に付いては此方の欲が入る様な検案だけど、GPSの詐称手段を相手側が用意してきたらアレでは有るのよね。……そうなっても、此方は保護下に入った奴しか助けないけど。そうでなければ保護下に入る奴らに対して不誠実だし、護衛しようか?と言うのを断った上で護衛しなかったのを責められても、そんなのなんか知るか検案なのよね……。対策は有る。そのメタも有る……けど、それを安売りする訳にも行かない。まあ、遠くを見るための能力なんて普通に有るでしょう。例えば露天風呂なんて対策積み重ねまくらないと覗かれ放題でしょうし。まあ、そう言う物は開示したら失効する物だと考えた方が無難な訳だけど、ある程度は提示できなきゃ客側が来るわけも無いし。自衛用と商売用最低限二つの対策は用意しないとね。まあ、保護下に入らない奴には最低限の一つしか教えないけど。しかし、何でもかんでもどかす能力……ね……あ、海底資源掘りを大規模にやって、それで出来た空間を海底都市のスペースにすれば良いのよ。……まあ能力無しでやるには海底資源掘りに掛かるお金が掛かり過ぎて資源が碌なのが出なかったら悲惨よね。……まあ、やり過ぎるとかなりの数の国から介入食らいそうだから、やるなら程々にしておかないと。海底資源の大規模独占とか下手したら戦争検案なのだし。よさそうな場所を選定はしておきましょうか。
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そしてアーバーンさんが戻って来た時には色々と話が進みだした。……まあ、都市基盤の移動をする羽目に成ったけど、問題は解決出来たと言う事で良いのだろうか?まあ、やるとヤバイが要はやり過ぎ無ければ良いと成るのは十分よね。
「……ケール様、問題はまだ終わっていませんよ。能力無しで似た事をやる奴の領域は残しつつ、それなりに領域の確保をすると成ると、相当深い場所に都市を創る必要が有るので、脱出方法はそれなりに数を用意しないと不味いですし」
「駄目なのは完全に独占する事。必要なのは他にも努力次第で得られる旨味を意図的に残す事。そうしないと他がそれで得られる利権を得る為には、協力か、買収か、侵略か、まあ侵略をされる際に他の場所に行けと言える余地がある様にしないと、不味いわよね……そうしとけば、侵略者に対しての糾弾で、努力すれば他の手段で得られる物を侵略と言う手段で無理矢理得ようとした奴らと出来る訳よ」
「独占市場なんて既存の物にもそれなりに有りますけどね」
「まあ確かに。これの場合は海底資源の内容と、量次第で変わる話よね。やれる分を最大限やるにしても経済水域圏は避け無いと不味いし、最高限度取るなら公海を全部掌握だけど、……まあ無理。人員も足りないし、予算的にも不可能だし、やるにも大規模整地も大変だし、そうしたら奪う目的の奴らに正当性も出てきそうだし。更に其処迄やるならゲームの敵役と似たような物に成るし、能力未使用で整地が現実的には不可能なエリア範囲の掌握と言うのは奪う側にもそれなりに技術が必要に成るだろうから、それをやれる国は奪いに行くより、自分の国の経済水域の中で似た事をやる方が確実に安全に稼げる訳だし」
「それで問題なのは経済水域が国として無い内地の国ですね」
「そう言う国が潜水艦とかの海底に行く方法を大量生産するのは考えられないわね。国外に行かないと使えない物を大量生産する訳だし、まあ最悪他国に売れば良いのだろうけど」
「創る手間が面倒だから奪う奴はどうなります?」
「……商業的には業腹にも程が有るけど、一度に滞在出来る人数の管理と制限をする事で、数に頼る侵略は潰せるわ。……質で押す奴はアーバーンさんに丸投げに成るけど」
「水神なのですし、雷とかに弱そうですけど」
「通電する事が即ち撃破なら苦労しないわよ。能力無しでの避雷針設備は基本的に一度の雷が当たれば使い捨てです。なんて話を私は聞いた事無いし」
「それは避雷針設備の質次第ですよね」
「そう、それね。結局は受ける側の質次第なのよね。流石にそこを手抜かりしているのに、神なんて過大広告抜きで名乗れるなら……神殺しはそれなりにやれる奴は居ると思うわ」
「……あのねぇ、私を倒す算段をするなら、私が知れない所でやらないと意味無いわよ?」
「ははは……アーバーンさんも聞いていましたか」
「そもそもガチ戦闘でも無ければメタを提示されるのはむしろ歓迎だけどね。それをどうにかするのを創れば更にまだ強く成れるし……まあ、只々ひたすら極限まで冷やせば全ては凍る……訳じゃ無いし、此方が既に対策済みの物をドヤ顔で出されても対応に困るけど」
「……絶対零度は全てが凍る温度では?」
「そうね。但し正確にはそれは条件付きでの物だけど。そして氷を使うキャラでその条件をカバーして無い奴には幾らそいつの冷却力が強かろうが凍らされない理屈は有るわ。……もし仮に凍らされても動けるしね」
「……条件の開示は?」
「わざわざそれを自分から吹聴はしないわ」
「……ですよね」
「まあ、特定属性の能力持ちがその属性の物で出来る事を網羅しようとしないのは本当に強く成る気有るの?と言いたく成るけど、まあ特定効果の能力が有れば対策出来てしまうレベルの物だし、わざわざ吹聴するとその対策自体が実効性無くなるのよね」
「……それは特定効果の能力が有れば対策可能系能力を全般的にディスってますよね……」
「……不確定性原理よ。要約するとオンオフスイッチとか、シーソーみたいな理屈。詳しくは自分で調べなさい。色々な能力を盛ってないシンプルな氷系能力者なら、大抵の能力者は持って無い事を凍らす為に要求しているから。そしてそれは一つしか能力を持てない属性系能力の奴には氷からは内容が逸脱している的な意味で持てない内容だから」
「……えげつなくないですか?」
「結局は対応している能力を持てば良いだけだもの。まあ、凍結させる事にのみに特化する能力持ちならセットで持つ奴も居るでしょうが、それの単体使用を考えると完全に別能力なのよね。創作ならそれは凍結とは違うだろう。と言うツッコミ受けるのが目に見えるわ。まあ、その能力を貰う側は沢山能力を貰える時にわざわざ貰える能力を減らそうとはしないでしょうけど」
「一つの能力をカバーする為の能力をサブとして大量に持つ奴も居ますが」
「……ああ、そういう創作も有るわね。一つの属性の能力しか使えない縛りなんて物が有るならそれが成立していたら、縛りの意味が殆ど無いけど。まあそういうスタイル自体は否定しないわ。それを否定するなら、単純に沢山能力を持つ系の奴も否定しちゃうし、切り札のカードを成立させる為にデッキを組むとか、カードゲームならやる奴は結構居るだろうし」
「あの、話は変わりますが、アーバーンさんを召喚した人はまだお会いしていないのですが」
「……ああ、そうね。彼はある件での研究で余り派手には動けないから気にしなくて良いわ」
「彼?アーバーンさんの召喚者は男なのですか?」
「まあね。もっとも、私を召喚された理由は完全に能力を求められてなんだけど」
「つまり持つ力しか見られて無かった訳ですか?」
「そうね。だから性欲全開で求められた訳じゃ無いわ。召喚システムの都合上、存在その物を求めるか、召喚される奴の所有能力を求めるかと言う違いは確かに有るけど……実利は大きく有るから外す訳にも行かないアレな設定を構築の前提にされたわ。実利が凄すぎて能力を自由に弄れたとしても変えるつもりは無いけど」
「アレな設定、ですか?」
「そう。アレな設定。それの悪い部分だけの単品なら絶対飲まない類いの奴……でも、それの実利は凄いからアレな訳で」
「……単品で見るとアレでも、それの目的の使い道が凄まじく有用……それは迷いますね」
「物は言いようと言い出したら、精神支配能力に対抗する為に既に設定上自由意志を阻害しない形で似たのを掛けておこう。的なのを肯定する類いのそれだけどね」
「……それは無しなのでは?」
「これの場合はそれが掛かっている状態なのが有用な場合や、同系統能力への対抗用として以外に一切使わないのが前提だけど、まあ、基本的に召喚システムの都合上それが出来る信頼関係なんて召喚時の設定を決める時点では無いから、それこそ召喚する前に好感度を稼げる方法でも無いと、そう言うのは召喚される者側が棄却するでしょうね」
「……ならなんでそんな条件を飲んだのですか?」
「一言で言えば、それがベースと成る存在の定義を拡大解釈して、強化する物だったから。私を存在として強く作ろうとした意図が明確に見えたのよ。それは別に精神支配能力では無いけどね」
「……意図が明確に見えたなら最悪の設定も許容する。ですか?」
「無しにしたら、利点も消えて、拡大解釈が無くなった、平凡な只の元ネタの複製の存在にしか成らなかったもの。能力的に強ければ全部良いと言う話でも無いけどね。例えばスキル至上主義の世界で、そう言うのは無しの無能力で無双する系の作品が有るけど、能力を過信したらそれでやられる能力だけは強いモブみたいな物に成るわよ」
「……能力的に強ければそれで良いじゃ無いですか」
「スーパーカーに赤子が乗っていても、赤子には普通は運転なんて出来ないのよ」
「……能力的には幾ら強かろうが、使い手が使いこなせなければゴミだと?」
「……まあ、使い手に技量を補わせる系の能力だって有るけど、技量を得させる為には精神とか記憶とか体とかに干渉する能力なはずで、他人に用意されたそれを使って精神汚染的な物が無いはず無いのよね。少なくとも技量関連のそれには干渉するのだし」
「それは言い掛かりでは?」
「それを用意したのが善神やそれに与する奴なら、そうね。でも元凶は基本的に姿隠した奴でしょうが。どんな目的が有っても私は驚かないわよ」
「召喚システム自体が怪しいのには同意します。召喚はしないようにはしていますし」
「この話に置ける召喚システムは何処かの誰かが創った直し方の解らないインフラみたいな物なのだし、それはそれで悪い選択肢では無いわ。問題は他の奴についてね。それは関係無く使って来る結果、使わないと自分の身を守るのも難しい検案にも遭遇する事だけど」
「……」
「世界には誰にでもやれる事を敢えてやらない縛りプレイで、何にでも問題無く勝てる奴しか居ない訳じゃ無いのだし」
「……殆ど強制的に使うのをしないと無理なのはどうかと思いますが」
「召喚システムを使うとヤバイと思うなら、それでも敢えての縛りプレイを無理矢理貫くしかないけどね。……まあ、生きている間に召喚システムの悪意的な使用者に対する仕様が暴かれでもしない限り、余程の技巧者でもないと愚者の道で有ると同時に修羅の道でしか無いけど」
「……」
「危ないわ」
私はいきなり突き飛ばされ、伸ばされた腕は断ち切られた。
「アーバーンさん、腕が……」
「そもそも私は水神。つまりは水の化身。単に幾ら切られようが、そもそも私は切られては居ない。質量保存の法則とか的な意味で自然界の現象では死滅などしないわよ」
アーバーンさんの腕が再生する。次撃が来る。普通にアーバーンさんは腕を新たに出し、それを掴む。
「そもそも水は無形。それを力で形付けて居るだけ」
アーバーンさんは一度全て崩れて、
「捕まえた」
犯人らしき奴を捕まえた。構わず攻撃を行われて居るが、……なんかもう訳解んないわね。水の化身だから切られても切られてないって何よ?ハッタリの可能性も有るわね。正直に言う必要は無いのだし。
「神話では癒えない傷を付ける能力は散見されるけど、無形の存在には根本的に効かないわよ。そもそもその傷自体が体を構成する力を調整するだけで意味無く出来るもの。例えばその傷の部分を一つの体毛の部分に押し付けてしまえば、ね?」
「……うわあ……」
そして爆発が起き、私に掛かるバフの一部が消えた。
「エネルギー生命体ならエネルギーを消してしまえば倒せるとでも?そもそも此処に居る私は本体では無く分体よ。仮に効いたとしても今ここに居る私を消せた所で何の意味もないわ……だったなら、本体にも影響を及ぼすだろう毒だ?……真面目な話として、他の奴にならともかく、水の化身相手に液体で挑むのはどうなのよ?論外。さて、次は何かしら?終わり?毒飲んで自死、ねえ?毒を除去してやるわ。起きなさい」
……理屈も何も無い話をしているような気がするレベルで滅茶苦茶ね……。重ねて言うと、ハッタリもそれなりに有るとは思うけど。
「気絶したまま攻撃?オートパイロット?完全に独自構築のプログラムのそれならまだしも、内容まで全部システムに全投げしたそれとか、似た事を考える奴が居れば、要は似た事を出来る奴なんて腐るほど居る物でしか無い物で勝てるとか本当に思っているのかしら?」
……。自分で完璧なオートパイロットを組むのは要するに体力の消費とか、手間を省く為の物で、他人に用意されたオートパイロットでじゃ無いと戦えない奴とは根本的に違うのは解るけど、……其処迄言うかレベルの暴言なのでは無いかしら……。
「普通に死んで消えたわね。流石に自爆特攻するにも根拠が足りない気がするのだけど?……少し探査してみるわ。ビンゴ、同じエネルギー反応が複数散らばっているわね……でも只の分身なら一斉に来た方が良いはず。つまりは今の奴は只の分身体では無い。……情報収集の為?報復に私では無く彼女らを狙いに来るにも、私が近くに居る奴を狙う必要性は?……いや、システム干渉が出来ていたなら此方の能力を把握している可能性が有るわね。なら、倒される事に意味が有る?いや、自衛をしただけだし……政治的には意味は無いわよね?……先のロールバック能力の奴の差し金だとして、私への報復と反論に成る物は?……召喚システムでの召喚される人達の居る場所への逆召喚での事前交渉を可能にする事。又は召喚に関する能力のエネルギーでの生成個体なので倒されても問題無し……と言う所かしら。笑えないわよ。それが簡単に可能なら、召喚システムは、そもそも無くても世界はファンタジーを前提として許容する世界なはずなのよ。仮にそれは逆召喚では無いとして、何か別の物で疑似的にそれを達成した?……流石にその手段の割り出し迄は無理だけど……調べないと駄目ね。……悪いわね。分身は置いておくけど、少しの間私はムー大陸建造から離脱するわ。今回の種は暴くべきだから」
「……解りました。此方で進めておきます」
なんかもうヤバイ内容が含まれ過ぎて圧倒されて逆に何も言えなかったわね……。まあ、これは放置も不味い検案なのは確かだけど。そしてアーバーンさんは分身を残し離脱して行った。要するに、他の世界への逆召喚的な事を別の世界に行かずにやる。と言う事よね?行く先の世界の定義次第では可能かも知れないわ。けど、それは現物としてこの世界に存在出来る必要が有るわよね?それをやれる能力を創れば良いとは思うけど、ゲームなら出来る方法は思い付く。でも実際にそれはやれる物なのかしら?要はワールドシミュレーターのキャラクターをこの世界に現物化しなければ成らない。でもそれをやれたとして、それをやる利点は召喚システムが既にある以上は、事前交渉が出来る事以外では余り大差無い。……反論の為だけにワールドシミュレーターを創る手間を掛けて来たとでも言うのかしら?まあ、流石に色々と仕様を組んでは居るでしょうし、それは今の段階では分からないけど。