へへへ……良い薬あるぜ
(終わったは……私の人生はここで終わりよ)
『彼女は今、とある星の、とある城にいた。そこにはガチャガチャと金属がぶつかる音を鳴らしながら、彼女を囲う女性達。彼女達はか……えっと、この主人公の名前はなんでしたっけ?……ああ、マルナでした。マルナはそれに臆した様子も無く。何かに打ちひしがれているようだ。その様子を見た彼女達はさらに警戒を強める』
「貴様……いったい何者だ!!」
こんなに悲しみで絶望としている私によくそんな声を掛けられるものね……いいえ、だからこそ、でしょうか。打ちひしがれている者が怪しい以外の何者にも見えなくて問い掛けてしまうのは当然の摂理。なら、私は素直にそれに答えて上げましょう。
「私は……いいえ。我が名は毒舌なる孤高の魔王!!マルナ・ミスタ・フォルダント!!貴様達を支配しに来た者だ!!」
ふふ。私はここで真なる主となって、イケメンハーレムを目指すわ。さあ、私の本当の物語はここから始まるのよ!!
…………なんて思っていた時期が私にもありましたわ。
はぁ、なんてバカな事を言ったのでしょう。
今だから分かるわ、ここの人達、全員が異常愛者ばかり。
周りではイチャラブとしてる光景ばかりがあり、私がどちらかを気絶させるともう片方がパワーアップして私を羽交い締めにしてくる。
あまつさえ、私を欲しがる人まで出てくるって…………
「そ、そ、、それは私がやる側でしょ!!!なんでここの連中は私みたいに頭が良いのよ!?!?!まったくもう……」
こんなに一人言を呟いても、怒鳴っても目の前でイチャイチャと恥ずかしそうに手を繋ぎ合っている恋人達の世界を壊せそうにありませんわ。はぁ、私はここでいつまで閉じ込められて、この胸焼けがする光景を見せつけられ続けるんでしょうか……
『安心しな。ここには俺も居るぜ……』
「アナタは……」
ユルカワマスコットである俺は、優しくマルナの肩に手を置いて語りかけると、マルナは俯いてワナワナと体を震わせる。
あぁ、分かってる。これが何をしめすかなんてな。誰もが予想がついた展開がこの後待っている。だが、一つだけ言わせてくれ……
『俺は、いや!私はお前を倒しに来た刺客だ!!!!』
「……ここであったが100年目。泥団子をぶつけたお礼は返させていただくわ!!!」
こうして、私とマルナの戦闘が始まった。
それは長いようで短く、お互いが笑みを浮かべて本気でやりあった素晴らしい戦いだった……(完)