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第7話

《緊急メンテナンスに関するお知らせ》


「ん?またメールか。今度は『whatever』からだな。まぁ、メンテ終わっててもしばらくやらないけど」


 VisonRemakeの待機画面に戻ると、新着メールが表示されていた。

今回のは緊急メンテで追い出された方のゲームからだ。


《本日12時頃から続いておりますメンテナンスですが、現在終了の目処は立っておらず、期間は数日を要する見込みです。休日のプレイを予定されておりました皆様には大変ご迷惑をお掛け致します。また再開が決まり次第――》


 俺にはある意味好都合だったな。


 ――と、楽観視していたのだが、後にこのメンテナンスの原因が俺がこのゲーム内で一番乗りで手に入れたアイテムの調整ミスだったと知り、その修正に発狂することになるのはまた別の話。


 俺はメールを閉じるとゲームを終了して布団に入った。




「ふぁあ、いい感じで寝れたな。うん9時か、ちょうどいい。シャワー浴びてメシ食う時間もあるな」



 諸々済ませて10時ちょっと前に『ラビアン』に戻る。


「メニーももうインしてるみたいだな。訓練場に向かうか」


 訓練場に入るがメニーはいないようだ――と、思った瞬間、誰か()に後ろから抱きつかれた。


「だーれだ?」


「だれだもなにもメニーしかいないだろ?」


「えへへ。もしかしたらこういうことする知り合いもいるのかなーって」


「そうだな、唯一の奴が今後ろにいるな」


 当然ながら背中に柔らかい感触なんてものはない。

 まぁ、あったとしても胸当ての感触だったんだろうけど。


 あれ、反応がないな。


「メニー?」


「ああごめん。 (嬉しくて)」


「え?」


「な、なんでもない! それにエニー、慣れてきた?」


「そうだな。メニーのおかげだ」


「なら、"外"でもしてあげよっか?それなら感触あるよ?」


「あるのか?」


「こ、これはアバターだもん!」


 俺の問いに胸を押さえるメニー。


「わざわざアバターの方を小さくしたのか」


「だって、ほらっ、足元見やすいじゃん」


 それは普段から言ってる言い訳だろうな。つまり――。


「見栄張ると後で困るぞ?」


「もー!なんでわかるんだよぉ! いいもん、小さいのはステータスなんだから!」


「ああ、俺もそう思う」


「えっ?」


「俺がでかい方がいいって言ったか?」


「バカ! 最初に言ってよ!」


「いきなり相手の胸見て貧乳派だ、なんてどこの変態だよ」


「むー、なんかくやしい。てゆーか、貧乳って言うなー」


「はいはい。それより訓練しよーぜ」


「ちょっと本気だす」


 おバカなやりとりを終え、模擬戦に入る。



 ――そして。


「えっ?」


 メニーの驚きの声と共に5戦目が終わり、訓練場に戻ってくる。


「今なにしたの?」


「対スライム君の切り札だ」


「今の、わたしは峰で斬られたんだよね?」


「ふふ、上手くいってよかった。あとはこれを使わずに挑戦するとこまで行けるかだな」


 手応えはある。


「正直、たった3戦で負けるとは思ってなかったよ」


「俺もだ。意外と上手くハマったな。最後のは付き合ってくれたお礼だ。師匠には秘密にしといてくれよ?」


「当たり前じゃん! でもさすがにすぐに挑戦は無理だよ? まだ初級だよね?」


「それなんだが、とりあえず、残り1時間で中級まで上がろうと思う。そうすれば明日20連勝すれば来週上級でやれるだろ?」


「まぁ、エニーならやれると思うよ。じゃあ、闘技場いこっか」


「ああ」



「わたしはエニーがどう10連勝するのか見てるよ」


「いいのか?たぶんつまんないぞ?」


 闘技場に着くとメニーはそう言った。


「いいの。わたしはもうやらなくても平気だろうし、エニーを見てたいんだもん」


 てっきりメニーも上級戦やるのかと思っていたのでちょっと驚いた。エニーはインしてからずっと俺に付き合ってるから今日はやってないはずだ。


「メニーがいいなら見ててくれ。まぁ、アドバイス貰うような試合はしないと思うけどな」


「へぇ、自信たっぷりじゃん」


「そういう意味じゃない。ま、見てればわかる」


 そう言って俺は参加申請をし、メニーは観戦スペースへ移動した。



 ピー!《戦闘開始!》


 数時間ぶりの開始音だ。

 俺はそれと同時に突っ込み、あの時と同じように右人差し指の『居合い抜き』で先制し、返す刀で相手を峰で斬る。あの時反省した踏み出しも忘れない。


 相手は反応することなく上下に別れて消えた。



 次の試合。


 俺は更に同じパターンで倒す。



「なるほど、そうきたか」


 観戦スペースで自分のメニューウィンドウで観ていたメニーが呟く。

 もちろんその呟きは俺には聞こえないけど。


 とにかく、先手必勝のワンパターン。

 そもそも峰で倒していく、というのは隠すつもりもない。


 それでも初級ならスキルを一つに絞っても勝ち抜ける自信があった。

 「峰が強い」ということ以外の手札は晒さず俺は中級へと昇格した。



「凄いね、30分かかってないよ!」


 戻ってきた俺にメニーが称賛の声を掛けてくれる。


「ありがとう。これで明日20連勝に集中できる」


「中級は人多いからね。当たり外れも大きいよ」


「まぁ、中級で燻ってる"外れ"に苦戦するようじゃダメだけどな」


 そう、そこで躓くつもりはない。


「それじゃ、復習も兼ねて模擬戦しよう!」


「ああ!」


 更にテンションを上げて闘技場を後にした。



「中級はどう戦うつもりなの?」


 模擬戦のリングで攻防しながら話しかけてくる。

 なんていうか、楽しそうだ。そして、こういう時のメニーには何故か当たらない。


「同じさ。その方が疲れないしな。20戦もまともにやってられないだろ」


「わたしは結構がんばったんだけどなー。エニーが言うと簡単にできそうだから困る」


「一応、ちゃんと考えを言うなら、見られる前に終わらせたいってことだ」


「あー、わたしは見ようと思ってたから最初から見れただけだもんね」


「ちなみに中級は同時に何戦くらいやってるんだ?」


「今は20くらいだったかな。これは運営がサイレントアプデしちゃうから正確にはわかんないんだけど」


 公式発表がない以上、プレイヤーからの報告をまとめるしかないのだが、当然報告していないプレイヤーもいるだろうから正確ではない。


 メニーの言う20という数字も、有志が同時に申し込んでマッチングを試した結果らしい。


「それだけあるならさっさと終わらせればそうそう見られないだろ? 人が()()()()()()()()()()()なおさらな」


「ああ、だからこっち戻ったんだね。確かにこれからピークだし見られる可能性高かったかも」


「そ。そこそこ、くらいがいい」


「じゃあ、またちょっと休憩しようか。2〜3時くらいが狙い目だし、このまま続けたら疲れちゃうでしょ?」


「そうか、そういう情報はさすがだな。助かる」


「どうする? 抜けてまた来る?」


「いや、トークルームでいいよ。メニーと話してたいしな」


「えっ・・・」


「使えそうな戦術とか聞きたいからな」


「なーんだ。(そうだよね・・・)」


「冗談だ。ゲーム以外のメニーのことも教えてくれ」


 いくら俺でもさすがにわかってる。

 だからメニーのことを知りたいと思った。


「!!! もも、もちろんエニーもだよ!?」

 

 メニーは激しく動揺する。うん、俺のせいだ。


 実は以前に似たような女プレイヤーと出会ったことがあったけど、そいつはただ姫プレイがしたいだけだった、というのが頭に残っててどうしてもメニーの向けてくる視線に応えてやれなかった。


 でも、さすがにこれだけの好意を向けられて意識しないというのも無理な話だ。

 それに、こっちじゃ姫プレイもなにもないからな。


「ああ、時間はある。ゆっくり話そう」


 だから、お互いをもっと知ろう。


「うんっ!」


 俺達はまた二人だけのトークルームに移動していった。

お読みいただきありがとうございます。


もうくっついちゃえよお前ら。


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