第1話
《カムバックキャンペーンのお知らせ》
ん?なんだ?メール?
今やっているゲームが緊急メンテということで追い出されたところで、装着しているゲーム機VisonRemakeの待機画面に届いたメールに気が付いた。
《エニー・ウェア様、只今『迷宮&フィールド』ではカムバックキャンペーンを行っております!
最終ログインから365日が経過しているエニー・ウェア様には全Sランク武器からランダムで一つプレゼント致します!
是非この機会に『迷宮&フィールド』にログインして、Sランク武器をお受け取りください!》
「あーこれ前にやってた『ラビアン』か」
それは一年前までやっていたゲーム。
迷宮攻略をするもよし、地上でPvPを極めるもよし、生産職を極めるもよしの割となんでもありの日本初のVRMMOとしてゲーム機VisonRemakeと共に発売されたのだった。
なんでもあり、というのはアイテムの方にも言えて、ネタアイテムからガチ装備まで本当に幅広く、かつ目指す方向に取得難度が合わせてあるという(レアなネタアイテムは振り切ったネタプレイが必要、等)面白いゲームだ。
俺は迷宮攻略の方をやり込んでいて、やっていた当時に実装されていた迷宮を全て攻略し終えたところで放置してしまっていた。
「へー経過期間で貰えるランクが上がるのか」
リンクを開いてみると、ランクSを貰えるのは1年経過した人だけらしい。
「そうだなー。折角Sランク武器を貰えるなら今度はPvPトップ目指すのも悪くないか。未だに人気のゲームだし、1年放置ってのもあんまりいないだろうから案外いけるかも」
そうと決めた俺は『ラビアン』を起動した。
俺の姿がアバターに変わる。
まぁ、ぶっちゃけ俺そのものだ。
顔はVRヘルメットにスキャンされるから変えようがないし。
イケメンなんて恥ずかしくてとても言えないけど、悪くない自信はある。
金髪とか設定してみたけど余りに似合わなすぎて結局ほぼいつもの俺だ。
顔出しさせるって酷だーとか思うかもしれないけど、実際そう言われていたのは発売されるまで。
不正や犯罪防止の面のほうが評価された。
それに始まってしまえば誰も気にしなくなった。
知り合いならともかく知らない人をゲーム越しに見てもやっぱりアバターとしてしか認識しなかったんだよね。
スキャンしてると言っても写真を貼り付けてるわけじゃないし。
まぁ、女性ユーザーが少ないとは言われている。
やってると割と見かけるんだけどな。
ログインポイントの噴水前。
キョロキョロと辺りを見回す。
さすがに人が多い。
ここの街並みは変わってないな。
この街の北側がフィールドエリアで南側が迷宮エリアだ。
それぞれに攻略組が作った街もある。
面白いのはお互いが争い競い合う攻略組が街づくりはちゃんと協力し合っていたことだ。(もちろん俺も参加した)
その結果、攻略組とは別の管理組織までできた。
そして、各街に生産職がその場所向けのスキルを磨いてホームポイントにしている。
俺は迷宮の街をホームポイントにしていたけど、今回はそっちには行かないのでここからだ。
ちなみにこのホームポイントシステムは街づくりが始まってから運営が追加したものだ。
そして、それに合わせて迷宮側はその周辺がセーフティーエリアになった。
それと、ログインポイントとホームポイントを使い分けた物資の移動を運営が容認したのも生産職には喜ばれた。
「さーて、なに貰ったのかな?」
人混みを避ける為歩いて移動しながら、人差し指で空中をなぞる動作でメニューを呼び出しストレージを開く。
そこには以前持っていたアイテムに混じって『カムバックボックスS』というアイテムがあった。
まだ抽選前らしい。
「これか。『鑑定』」
取り出し、説明を表示させる。
迷宮攻略済みの俺はそれなりにスキルも持っているけど、これはアイテムの情報を見る『鑑定』スキル。
Cランク以上のアイテムはこれがないと効果や使い道を知ることができない。
ただし、一度『鑑定』すればそのアイテムは鑑定済みとなり、情報が開示される。
初期には裏技として鑑定済みのアイテムを借りて一度ストレージに入れると以後同名アイテムは開示状態になる、というものがあったが、持ち逃げなどのトラブルが多発し運営が公式に発表することになり、フレンド以外の受け渡しはトレードのみにした上で、『鑑定』スキルを店売りにしたことで落ち着いた。
《お帰りなさい!カムバックキャンペーンのプレゼント(Sランク)です。なにが出るかはお楽しみ!》
「さーて、何気に初のSランク武器だ。良いの来い!」
迷宮攻略時は引きが偏って防具は今装備してる鎧一式がSランクで揃ってるけど、武器はこれが初めてだ。
俺はワクワクしながら『カムバックボックスS』を使用した。
《カムバックボックスS を 開けますか?》
もちろん、 はい だ。
《逆刃刀(Sランク) を 手に入れた!》
「おお! 刀! 逆刃刀ってアレだよな! るろうに的な!」
《この武器は自動的に装備されます》
「お、腰に刀が出てきた。元々の剣は装備から外れたみたいだな。」
さすがにこの場所で刀を抜いたら通報されるな。
「迷宮側の初心者エリアに行くか」
特に強いモンスターもいない見慣れた迷宮エリアに移動した。
「よーし、さぁさぁSランクの逆刃刀ちゃん!その姿を見せておくれ!」
入り口付近だと始めたばかりの初心者がいるので少し離れたあと俺は刀を抜いた。
ちなみに柄を掴む動作は必要なく、右手を左腰から振り上げると自動的に抜剣する。
剣以外の武器種の場合は装備している部位から同様の動作で持った状態になる。
!?
「え、普通の刀じゃん。どこが「逆刃刀」だよ!」
刃も峰も通常通りの刀が俺の手に握られていた。
「ん?峰になんか書いてある」
よく見ると、峰に矢印と共に文字が彫ってあった。
__________________________
↑こちら側のどこでも斬れます↑
「は!?」
「ちょちょ、か『鑑定』!」
動転し慌てながら『鑑定』する。
《攻撃力:99(峰:∞) 耐久力:∞》
「まさかのネタ武器かぁ。つか刃も普通に強いな。でも前のAランクの剣は150だしそっちでいいな。折角のSランクだけど戻すかぁ」
肩を落としながらストレージを開き、装備の変更をしようとするが――
《この武器はランクが上の武器以外に変更できません》
「ネタ武器な上に呪い装備じゃねーか!!!」
思わず叫んでしまった。
その叫びに反応したスケルトンタイプのモンスターが襲い掛かってきた。
これもVRヘルメットのマイク機能によるもので、プレイヤーとの通話(会話)の他、こういう音探知系のモンスターのアクティブ化のスイッチにもなる。
完全に油断していた俺はそのスケルトンの持つ剣の攻撃に気付くのが遅れ、逆刃刀で受け止めた。
が、それでも遅すぎて、そのまま押し込まれる。
「うわっ!」
《前回ログインしたポイントに戻りますか?》
「まじかよ・・・」
俺は押し込まれた自分の逆刃刀に斬られて死んでしまった。
それはこのゲームで初めての死だった。
お読みいただきありがとうございます。
ギャグにしようかと思いましたが私には無理でした。
若干名残でコメディっぽさが残ってます。
次回は操作方法などのお話です。
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