ルトー
ルトーがギャラリー百貨店から出て行ったとき、午後の終わりの鐘が鳴るころだった。ルトーは一緒に来た家族から離れて、ひとりで歩いて行った。メイドの一人がルトーの行方を捜しに行った。「ルトー様!」という、声がルトーにも聞こえた。ルトーはその声を聞いたふりをした。ルトーはどこへ行ったのか、誰もかれもがわからなかった。ルトーはここにいたくなかった。だから少し遠い場所に行きたかった。ルトーは人込みの中に紛れて姿を消した。ルトーは少し前に行ったことのある地下通路に行って、少し休みを取った。しばらくして、ああ、ここが僕のいる場所なんだな。と感じたルトーは最後の晩餐を取るつもりで近くにいた年が少し上の顔つきをした人に「ねえ。お兄さん。ちょっと僕と一緒にいようよ」と声を掛けた。その少年は「今は午前0時頃だけれど、ご家族は心配していないの?」と返した。「僕に家族はいないんだ」と、ルトーが少し小さい声でつぶやくと「そう、じゃあ、僕と家族にならない。僕の名前はアレクシス」とアレクシスが言った。 アレクシスはアレクシスの家までルトーを連れて行った。アレクシスに家族はいなかった。だから、一人で暮らしていた。
「ここに住みなさい」と、アレクシスが言った。
「ここが僕の部屋?」と、ルトーが言った。
「そう、君の願いは家族が欲しいんでしょう。言わなくてもわかるよ」
アレクシスはすべてをわかっていたようだった。
「そう。少し恥ずかしい」と、ルトーは多少恥ずかしそうな顔つきをした。
次の日、ルトーが起きた時、ヴァイオリンの音が下の階から聞こえてきた。2階から1階に降りると、アレクシスがヴァイオリンを弾いていた。
「ああ、おはよう」
「ヴァイオリン弾けるんですか?」
「まあ、多少。そういえば君の名前聞いていなかったね。君の名前は何だい?」
「ルトー」
「そう、ルトーか。いい響きのする名前だね」
「君の年齢は?」
「13歳と、あと5日後で14歳」
「僕は19歳」
ルトーは紅茶を飲み、そしてアレクシスがヴァイオリンを弾いていたのを見ていただけだった。
「あの?」
「なにかあった?」
「いつまでいてもいいの?」
「君と家族になるまで……というとロマンチックかな?」
「そうですか」
ルトーはカンブレジ家に電話をアレクシスの断りを入れたうえで入れた。
「ルトー様! どこにいるのですか?」
メイドが電話に出た。
「もう、帰らない」
「ルトー様! こちらで捜索願を出しますから早く帰ってきてください」
「だから、もう帰らないから。じゃあね」
と軽く言って、ルトーは電話を切った。
これから、この人――アレクシス――と家族になるのだ。