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seventh  作者: nyaha
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絶対契約(ギアスロール)

一同は静まり返っていた。

気配も無く現れた少女に「私は仲間です」と同じような事を言われ、何故か誠也が膝枕されていることに周囲の目線は兎に角、凄まじい空間である。


「…なんでだよ」

主人あるじが、グラのオブザーバーに会ったらこうしろとの命令ですので。寝心地はいかがでしょうか?」

「うん、ひんやりしてて気持ちはいい。それにプニプニでもあるなんて不思議な気分だ」


素直に感想を述べた誠也に対して「おい、俺にも変われ」や「へ、変態です…最低です…!」や「一度死ぬか」という、最後以外はどうでもいい声が聴こえる。


「ところで、アケディアよ。貴様は我らと共に災害を倒す前提で動いていると考えて良いのか?」


時間がない中、話を戻そうとグラがアケディアに問う。それに対しアケディアは小さく頷き、誠也を退けて、手のひらから光るキューブ状のカケラを生み出した。


すると、いくつかのノイズが鳴り響いた後、微かに聴こえる女性の声が耳に入ってくる。


『うん、予想通りの展開ね! 初めまして、私はアケディアのオブザーバー『エレノア・マクガーテン』よろしくね! えっと、取り敢えず私達はフェイカーとして災害打倒を望む者…貴方達の同士よ。まずは私の工房に来て欲しいからマキナー、案内よろしくねー』


強烈なアケディアのオブザーバーの自己紹介が終わり、アケディアがぺこりと頭を下げる。主人が迷惑かけて申し訳ありません…と、何故か伝わって来てしまった。いい子である。


「では、皆様を主人の元へ案内しま…と、そのまえに一仕事ですね」


言葉を切り、いつのまにか降っていた紙切れを一つ取り、アケディアが目を細める。誠也も同じく掴み取り、書かれていた内容を読み上げた。


【我、強欲アワリティアの名において、ここに絶対契約ギアスロールを創造する。これより、我は汝達が滞在しているであろう位置に剣を一振り放つ。見事、その剣を防ごうことが出来れば、災害の名において二日の猶予を進呈しよう。拒否は即ち死である。これより放つ______________覚悟は良いな?】


読み上げ終わった直後、まるで見張っていたかのタイミングで大地が大きく揺れ始めた。風向きが変わり、木々が吸い込まれ、大地にヒビが入る。これ全てがあの災害の力…強欲の災害なのだろう。


「グラ! スペルビア! 防衛に全魔力を投資、絶対に防ぐぞっ!」

「ふん、言われなくともそれしか無かろう。星装展開…水瓶座よりきたれ…!」

「護りは得意じゃないんだが、やるしかねぇかぁっ! いくぜ、相棒にょいぼうっ!」


グラが水色と白銀に輝くオーラと鎧を纏い、スペルビアが如意棒を構え魔力を上昇させていく。誠也もまた幾つかの宝石を取り出し、空中に浮遊させていく。


その数秒後、かなり遠い空の大気が切断されるのを目視した。恐らく剣が伸びているわけでも、放り投げたわけでもない。あれはただの風圧…剣を振るうだけで大気が切断されるほどの鎌鼬を繰り出したというわけだろう。


考えている暇などない。やることは一つだ。


「無数の宝石よ、個々輝き、我を護る盾となれ」


詠唱を唱えると、ばら撒いた宝石から光が他の宝石へと流れ、それを繰り返す。そして、やがては巨大な紫色の六角形の防壁となって顕現した。


「私もいこうか。全魔力展開_______『水瓶座より託されしアクアエリシオン宝壁の盾イージス』」」


グラもまた星装を纏い、その最大防壁を展開していく。何も言わなくとも作戦など最初から決まっているのだ。誠也とグラが少しでも威力を剥ぎ、スペルビアが弾く。このメンバーで出来ることは、これが精一杯と全員がわかっていた…しかし、それは違った。


「来るぞ、気張れよグラ!」


決して忘れていたわけではない。

先程出会ったからというわけでもない。

信頼が足らない、共にいる時間が少なかったらからでもない。


ただ…。


起動せよレキュランス


圧倒的すぎた。

アケディアは一言で頭の浮遊物体から無数の機巧兵器を生み出し、それがアケディアを纏う装甲となっていく。


手を翳し、砲台のような構える刹那_______「発射バースト」の掛け声で、見事に森が半壊した。競り合いをすることなく、圧倒的な大差で鎌鼬を消滅…恐らくこの森を半壊させる程の力でないと防ぎきれなかったということだろう。


「お仕事終了です。では、参りましょう」


何もない平然とした表情で振り返るアケディア。

誠也はもちろんのこと、グラやスペルビアでさえ驚愕に縛られていた。


いや、驚愕だけではない。

もし、アケディアが味方ではなく敵であったなら…大罪戦争は行われず、単体戦となっていたら。



勝てない…そうとしか思えないからだった。



「うんうん! その反応も予想通り!災害さんも強いけど、此方も中々の粒揃い。本当に楽しくなりそうね!」








※※※









「ふむ、絶対契約ギアスロールが実行されたことを見ると、なるほどあれを防ぎおったか。流石、一度妾から逃げ切った奴らよ」


誠也達に絶対契約を送った張本人である災害が天高くから見下ろすように微笑む。しかし、面白いだけではない。災害には一つ不可解な点が脳裏を過っていた。


それこそは、あの半壊した森である。

確かにグラであれば、あの星装で半壊させることは可能だろう…が、もしそれを実行すれば森は半壊ではなく全焼しているはずだ。あの半壊の仕方は炎ではなく、光線のようなもので弾き返されたと見るべきだろう。


「第三者、他の偽物か。まぁ、良い。絶対契約がある以上、二日の猶予は絶対となっておるし、眠るとす_______」


諦めて眠りにつこうとする災害が言葉を切り、自分の胸に違和感を覚える。


音もなく、気配、風の向きさえ変わらなかったはずなのに、何故かその矢は災害の心臓に突き刺さっていた。後、痛みが込み上げ、災害が口から血を吐き出し始める。


「なんじゃこの矢は…刺さっておるのに抜こうとする気になれんぞ……かふっ…」

「当たり前です、束縛の矢ですから」


ゆっくりと降りてきた災害の目の前に緑髪の少女が現れる。黒の上半身タイツに胸当て、腰には何も刺さってない穴が無数に空いたベルトに黒のスカート。そして手は、この矢を射ったであろう古典的な弓を持っていた。


「貴様、偽物か…?」

「その通りです。私は狙ってましたよ? 貴女がギアスロールを使用するのを…まぁ、作戦を考えたのはマスターですが」

「くくっ、小癪な手じゃな…確かに絶対契約を使えば強制的に理へ踏み込めるが、契約は絶対となる…が、それはギアスロールを受け取った者へのみの契約じゃ…貴様は対象外じゃぞ?」

「ですが、貴女は油断しました。敵を、いえ標的をあの方々達だけと思い込み、他のフェイカーを眼中に入れていなかった。それだけでも十分な隙です…私は私の名において、外すことはありませんから」


そう言って、束縛の矢を受けた無防備の災害に矢なしの弓を引く。すると、少女の右手から矢が生み出され、それが赤く、熱く、太陽のように光り輝いていく。


これは嘗てグラが使用した射手座の矢に瓜二つの輝きを放ち、災害もまた防御不可であれを、受ければ流石に危険と察する。


「貴様も星座の化身かの? それは射手座の化身、『サジタリウス』にのみ許された矢じゃ…何故、貴様が使える?」

「敵に情報を送るな、がマスターの教えですから。確か名は______________『擬似・射手座より(サジタリウス受け継がれし太陽の矢アポロテンペスト・レプリカ』」


真名を唱え、少女の矢が放たれる。


超近距離からの太陽の矢は即座に災害へ到達し、燃え上がるような炎の渦が天高く貫いていく。まるで、一本の光線が落ちたよう、大地をも吹き飛ばしていった。


数秒後、光は徐々に消え、巨大なクレーターの上に一人の少女が立っている。災害は跡形もなく消滅した…はずであった。


「…やられました」


消えた災害の代わりに一枚の紙が少女の元へ届き、それにはこう書かれていた。





【我、強欲アワリティアの名において、ここに絶対契約ギアスロールを創造する。これより、我は汝達が滞在しているであろう位置に剣を一振り放つ。見事、その剣を防ごうことが出来れば、災害の名において二日の猶予を進呈しよう。拒否は即ち死である。これより放つ______________覚悟は良いな?







尚、防ぎきった場合、妾はこの世界から二日間消滅する】






『おーい、ヘクトや。災害は倒したかね?』

(申し訳ありませんマスター、逃しました)

『ふむ…ま、今回は仕方ないだろ。んじゃ、即座帰宅を命ずる! 気をつけて帰ってこーい』

(了解しましたマスター。あの…これはお仕置きパターンなのでしょうか?)

『ん? そんなにしてほしいのか? ニシシ、なら全力でお仕置きしてやるぞい?』

(え、遠慮しておきます…!)


念話が終わり、ヘクトと呼ばれた少女が遠くの半壊した森を見つめる。


「あれを防ぐ機巧カラクリとは、一度お手合わせしたいものですね。桃色の髪に幼い体系とは驚きですが…お、お友達になれるでしょうか…」


そんな訳の分からない期待を胸に描きながらヘクトは、アケディアが連れて行く誠也達を確り見つめていた。





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