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第二部 終章「女神と理と使命」その壱




 偶然か必然か地図を手に入れ辿り着いた賢者マリウスの試験場では本当に色々あった。一言でいうならばカオスだ。しかしお宝ゲットという目的は達成した。

 そして俺たちは、全壊ではないがボロボロになったコロッセオをそのままにして旅立った。

 恐らく、という言葉が前に付いていたが、アイリスの話ではチャージされてある魔力が尽きない限り、時間がかかっても魔法の力で修復されるとのこと。そんな凄い復元魔法まであるとは、この異世界の魔法は本当に万能で面白い。勉強の甲斐があるし、冒険者設定も含めまだまだ進化していて伸びしろがある。更にストックされた別のアイテムやゴーレムがあるなら賢者の試験は発動するとも言っている。次に来る奴らのためにも試験が終わりでないことを願う。でも鬼畜な強さのゴーレムは止めてあげてほしい。普通に死んでしまうからな。


 とりあえずマリウスの移動魔法であるゲートを使って、アジトのある巨大な一枚岩の上の遺跡へ戻ることにした。

 ゲートの石化した扉はコロッセオ近くの大きな岩壁に設置されており、今はその場所に居る。


「開けゴマ」


 石化した扉の前に立ち解除の言葉を言った。

 石の扉の部分が発光するとゆっくりと石化が解けていく。で、その後はマリウスのイケメンボイスが聞こえてくる。


「ソモサン」


 それに俺が「セッパ」と返す。


「問題」


 はい始まりましたツッコミどころ満載なふざけたクイズ。


「とある天空の国のお姫様が魔王に求婚されて困っていました。そこへ神の導きにより地上から勇者が現れ魔王を退治すると、王様は大喜びで宴を開き勇者をもてなしました」


 問題長いな、まだ続きそうだし。


「宴はいつまでも終わらず勇者は時を忘れ幸せにすごしていましたが、ある日ふと、使命を思い出し地上へ帰ることに決めました」


 だから問題長いんだよ。


「王様とお姫様は引き止めましたが勇者の決意は変わりません。諦めたお姫様はお礼として小さな宝箱を勇者に渡します。しかしお姫様は「地上では絶対に開けないでください、絶対にです」と宝箱について不思議なことを言いました」


 おいおい、どっかで聞いたことが……。


「勇者が地上へ帰ると驚くことが起きていました。なんと地上では千年の時が過ぎていたのです。親も友人も誰も知っている人が居なくなってしまった勇者は絶望します。そんな時に宝箱の事を思い出し、自暴自棄になっていた勇者は絶対にダメと言われた宝箱を開けてしまいます。さて、宝箱からは何が出てきて勇者はどうなったでしょう」


 って長いんだよ‼ てか浦島太郎かよっ‼

 しかも最後の方はノリノリで感情のせまくった朗読じゃねぇか。

 前回は桃太郎だし、この世界の誰がそれ分かるんだっての。天然か天才か日本人じゃないと正解無理だろ。どこまで遊ぶんだよ。

 まあ勝手にゲート使われても困るから正解させる気ないわけだし、それでいいと言えばいいんだけどね。ただスゲー分かりやすくてナイスオマージュとだけ言っておこう。


「にゃん? なんだか長くてよく分からないにゃ」

「いったい何が出てきたんでしょうか……まさか魔王が封印されていたのでは」


 スカーレットさん、いい答えだけど絶対に違います。

 アイリスは沈黙しているから知らないってことだな。


「じゃあ答えるか」

「にゃっ、ご主人様凄いのにゃ。こんな難しい答えを知っているなんて天才すぎますにゃ」

「本当に凄すぎますご主人。その広い分野にわたる豊富な知識と聡明さ、既に賢者と名乗っていいかと思います」


 スカーレットさん大袈裟すぎですよ。こんなの日本人には知識でもなんでもないからね。


「え~っと、宝箱からは煙が出てきて、勇者はその煙のせいで老化してよぼよぼのお爺さんになった」


 そう答えるとピコピコピコーンと音が響く。


「正解‼」


 知ってるよっ‼

 そして後ろからは称賛と拍手が起こる。この程度で持ち上げられたら普通に恥ずかしいんですけど。

 んっ? 扉が開かないぞ。これでゲートが使えるはずなんだが……。


「更に問題あり‼」


 ってまだあるのかよ。悪ノリしすぎっ‼


「挑戦する人は元気に「はい」と返事して手を上げてください。しない腰抜けな人は沈黙で答えよ。因みに正解すれば素敵なアイテムが貰えたり貰えなかったりします」


 はいはいもう分かりましたよ、遊びたいのねこの人は。


「はい」


 呆れながらダルそうに返事して右手をちょこんと上げた。

 これでいいんだろマリウスさんよ、ちゃんと遊んでやるよ。


「元気がない‼ さあ、もう一度元気よく‼」


 って録音したのを魔法で流してるんじゃねぇのかよ‼ どんだけ柔軟に対応するんだ。

 まったく、普通に恥ずかしいんだっての。


「はいっ‼」


 元気よく返事して高々と右手を上げた。この時、後ろではクリスが元気よく一緒に返事した。


「元気があってよろしい。元気があればなんでも解ける」


 どっかで聞いたセリフだなコノヤロー。


「では問題」


 バッチこい、素敵なアイテムとやらを貰って帰ってやんよ。


「老人になってしまった勇者は、その後どうなったでしょうか」


 出たっ‼ 裏設定ともいえる浦島太郎の真のエンディング。これって日本人でもあまり知らないんだよな。これは難問だ。


 どうせマリウスはバカにするつもりで、無理ゲー的クイズ仕込んでるんだろうけど、相手が悪かったようだな。誰よりも暇だった日本人のオタニートのネット知識舐めんなよ、見せつけてやるぜ。どんだけ無駄なこと知ってると思ってんだよ。って自慢にならないけども。


 ただ答えのパターンが幾つもあるんだよなぁ。

 お爺さんから鶴になって終わり、っていうのが有名だけど、乙姫が亀になって鶴になった太郎と結ばれて終わり、ってのもある。更に乙姫とか関係なく鶴になった後に神様になるという訳の分からないカオスエンドもある。


 考えろ。よく考えればこれまでの問題の中とかにヒントがあるはずだ。

 ……そうだ、神に導かれ天空の国へ行った、とか言ってたぞ。わざわざ神という単語を出してるし、これはヒントかも。

 話の中に亀は出てこないから姫様エンドは除外しよう。

 となると鶴、というか鳥になる、が答えの方向性だ。後は鳥から神になるかどうか……よし決めた。


「老勇者は鳥になって天へと飛び立ち神様になる」


「…………」


 沈黙の間が長いんだよ。お前はどこぞの日焼けした大物司会者か。ドキドキさせんじゃねぇよ。

 で、程なくしてピコピコピコーンと音が鳴った。


「正解‼」

「はいキターーっ‼」


 後ろからは拍手喝采。これを正解するとか流石に凄いだろ。自画自賛してOKですよね。

 岩壁と俺の間の地面に魔法陣が現れ、定番の茶色系ではない赤色の宝箱が召喚された。

 箱は長方形で大きさは、高さ15センチ、横20センチ、奥行き30センチで、それほど大きい物じゃない。


「クリスさん、お仕事ですよ。開けてみて」

「はいにゃー、お任せなのにゃ」


 クリスは何の警戒もせず箱を開けた。


「にゃっ⁉ 凄いのにゃ、魔石がいっぱい入ってるのにゃ」

「ほんとだ、何個あるんだ?」


 宝箱の中にはピンポン玉ほどの赤い魔石が30個入っていた。

 こりゃスゲーぜ、いっぱいレアな武器が作れそうだ。鑑定眼では魔石ランクは下から二番目のDだけど数が多いから問題なし。

 そもそもこのクイズでの賞品はオマケみたいなものだし、ランク程度で文句言っちゃいけない。


 あれ? まだゲートの扉が開かないけど、まさかの……。


「さーらーにー、スーパー賢者チャーンスっ‼」


 お約束っぽいのキターーーーっ‼ ってなに乗せられてんだか。どこまで続くんだこれ⁉


「空前絶後の超難問に挑戦しますか?」


 ほほう、前例がないほどの難問とは面白い。って言うか、さっきの問題がもう空前絶後なんだけど。

 なんだかもうどうでもいいよ。なんでもこいっての、受けて立つぜ。


「はい‼」


 元気に返事して手を上げる。あぁ恥ずかし。でも後ろでまたクリスが一緒に返事していた。更に今度はスカーレットやアイリスの声もした。みんなノリノリですなぁ。


「問題。最終的に神様になった勇者は偶然、天才賢者が作った黄金のエリクサーを持っていました。喉が渇いたのでそれを全部ガブガブと飲んでしまった神勇者はどうなったでしょうか」


 自分で天才とか言っちゃったよこの人。てか問題が雑だな、もう浦島とか昔話関係ないし。それだけに難しい。

 しかーし、日本人とかじゃなく俺にだけはこの無理すぎる問題がなんとなく分かる。

 よく考えて一つ一つ消化していけば答えに辿り着けるはずだ。




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