表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/37

第二部 四章「二つ名の奴隷冒険者と賢者の試験場」その七




「俺が戦ってもいいんだけど……」


 そう言ってアイリスの顔を見た。


あるじ様、お任せください」

「じゃあ任せるよ」


 絶対的安心感のある「お任せ」頂きました。

 アイリスは闘技場に入り、俺たちは野球場で例えるなら三塁側ベンチの辺りの観客席に移動した。

 闘技場に現れていた召喚魔法陣はアイリスに反応し、透かさず次のゴーレムを召喚した。


「なんだ、次はドラゴン系かと思ったら、またオーガ型のゴーレムか」


 大きさや装備している鎧は同じだが体は青色で、武器は両刃の大剣に変わっている。魔力も強くなっているし、パワーや防御力もワンランク上と思って間違いない。

 アイリスが愛用の剣を装備したタイミングでブルーオーガが素早く踏み込み先制する。

 凄まじい速さで振り下ろされた大剣をアイリスは片手で握った剣で軽く打ち返して止めた。

 剣と剣が激突した時、甲高い金属音が鳴り響き凄まじい剣風がほとばしって足元の地面が少し陥没した。

 魔改造されたアイリスのパワー凄すぎる。見てて普通に怖いよ、色んな意味で。

 それにしても140センチ程度のアイリスが相手だと、3メートルのオーガはより一層大きく見え、大剣を振り下ろす迫力は半端ない。

 ブルーオーガは透かさず大剣を振り上げ連続して攻撃を繰り出す。巨躯だが動きは素早く隙が無い。しかもただ力任せに攻撃しているわけじゃなく、その剣捌きはちゃんとした剣技に思える。

 このブルーオーガは普通に強い。しかしアイリスは薄紫の綺麗な超ロングヘアを乱すこともなく余裕で打ち返して捌く。

 ゴーレムのオーガは一呼吸入れる必要もないので休みなく大剣を高速で繰り出し続ける。

 防御は楽々してるけど、流石に反撃するのは難しいのかな、とか考えた瞬間、アイリスの体が残像でも重なったようにブレて見えた。すると突然、何が起こったのか分からないが、大剣を持つブルーオーガの腕が切断されて吹き飛ぶ。


「うわっ⁉ スゲー、まったく見えなかった」


 と声を出した時には勝負は決まっていた。ブルーオーガは腕だけじゃなく鎧ごと全身を斬り刻まれており、バラバラに崩れ落ちてすぐに泥のように溶けた。


「にゃっ⁉ アイリスちゃん凄いのにゃ、いつの間にか攻撃してたにゃ」

「相変わらず恐ろしい奴だ」


 クリスと違って戦闘経験豊富なスカーレットにはアイリスの凄さと怖さが伝わっており、尻尾が垂れ下がり険しい顔になっている。

 ただ動くスピードが速いだけなのか、戦士の剣技か特殊スキルなのかさえ分からない。アイリスが伝説級の冒険者だと知らない者が見たら唖然とするしかないだろう。

 もうね、アイリスさんがチートすぎてゴーレムの強さがまったく発揮されない。本当は物凄く強いはずなんだけどね。恐らくタイマンとかじゃなく上級の冒険者がパーティーで戦う相手だと思う。

 ゴーレムを倒すと直径1メートル程度の魔法陣が現れ、ご褒美のレアアイテムが召喚された。二体目だし期待できる。

 闘技場に居るアイリスがアイテムを手に取って、いったん俺のところへ持ってきた。


「おぉ、デカい魔石か。色々と使えそうでワクワクするな」


 アイテムは完全な球体でソフトボールぐらいある赤い魔石だ。これは魔法の杖とか大剣に取り付けて売れそう。

 鑑定眼では売買価格は不明だが、スーパーレア・魔石ランクA、と明記されている。魔力ありで特殊能力は当然、魔力強化・増大効果だ。

 確か魔石のランクはEからAの五段階で、ランクAは一番上で入手困難だから高値が付く。

 てか異世界に来てスーパーレアとか燃えるし萌えるぜ。なんていい表記だ。そして響きなんだろ。すっげぇ楽しい。


「でかしたアイリス。次もあるなら頼んだぞ」

「はい。お任せください」


 またまた頂きました、頼もしい「お任せ」を。でも鎧とか装備は斬り刻まないでほしいかな。まあ大きい鎧は装備できる人間いないし、ドロドロに熔かして原料にするから問題ないけどね。拾い集める面倒な作業もクリスの仕事だし。


「出たのにゃ、次の魔法陣なのにゃ」


 キタキタキターー‼ 今日はレアアイテム祭りじゃい‼

 何戦まであるのか知らないけど、召喚されたのはまた3メートル級のオーガ型ゴーレムだ。今度は体が赤いオーガで両手に剣を持っている。今やチートの代名詞の二刀流できたか。こりゃ絶対に強い。体には今までと同じ軽装備の鎧を纏っている。

 警戒すべきは剣の大きさだ。さっきの奴は大剣だったけど、レッドオーガは扱いやすいノーマルサイズの両刃の剣だ。と言っても巨躯のゴーレムの普通サイズは俺たちからしたら大剣だけどな。三体目だし達人レベルの剣技や特殊スキル、魔法も使ってくるはずだ。


 レッドオーガはいきなり魔力全開の本気モードで、全身からオーラの如くまがまがしい魔力が放出されている。

 ヤバすぎる。上級の冒険者でも簡単には近付けないだろ。でもアイリスは相変わらず静かで無表情だ。微動だにせずフル装備にもならない。

 これは楽勝って事でいいんだよな。ロープレなら終盤のステージボスだと思うんだが。

 レッドオーガが攻撃を仕掛けるためにカッコいい中二な構えを見せるとその瞬間、剣から凄まじい炎が噴き出す。


「なっ⁉ 炎の剣だと」


 超カッコいいんですけど。二刀流シビれる。しかもあの状態で斬られたら炎系の攻撃魔法効果が発動してダブルのダメージになりそう。

 とか思ってオーガの方ばかり見ていたら、アイリスが空気読まずに先制していた。

 ちょっ待てよ、先に攻撃したら一撃で終わるんじゃね。

 アイリスは剣先をオーガに向けて真っすぐ突き出し、無駄なく瞬間的に魔力を高め、その場にとどまり攻撃を繰り出そうとした。


聖剣の憤怒エクスカリバー・ストライク


 出たっ‼ 唯一無二の聖剣スキル‼

 逃げてぇ、オーガさん逃げてぇ‼ それ死んじゃうやつだから。

 次の瞬間、アイリスの剣が光り輝いたかと思えば閃光が迸り、剣からは大きな光の剣とでもいうべきものが重なっており、刃の部分が長く伸びて既にオーガの体を鎧ごと縦に真っ二つに刺し貫いていた。

 更にアイリスは手を緩めず、一歩踏み込んだかと思えばもうその場にはおらず、駆け抜けたようにオーガの後方に居た。この時にオーガは数えきれないほど斬られており、バラバラになって崩れ落ちた。


「ははっ……無双だな」


 てかマリウスさんよぉ、育てすぎですよ。強すぎるのって鬼畜なんだと分かりましたよ。それ程の超絶無敵無双っぷり。

 俺はチート超人だけどパワーと防御力だけだからアイリスと戦ったら普通に秒殺される。

 これは誰も勝てんぜ。まともに戦えるとしたら例のあの人、暴君エルフの金色の破壊神だけかも。


「必殺の一撃からの連撃で秒殺か……」


 さっきのブルーオーガより見せ場がない。レッド可哀想すぎる。中二なカッコイイ構えをしただけとか普通に泣ける。まあ聖剣スキルを使わせたんだから凄いと言っておこう。

 いやマジでレッドは強いやつだし、俺が戦ってあげた方がよかったかも。面倒だけどそう思うぐらいアイリスの強さは次元が違う。ゲームで例えるならバグキャラだけど、偶然じゃなく人為的に生み出されているのが凄いところだ。ただクソゲーですけどね。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ