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第二部 四章「二つ名の奴隷冒険者と賢者の試験場」その壱




 賢者マリウスのアジトで黄金のエリクサーと魔法合金の熊の置物、更に地図をゲットした俺たちは帰路につくが、まだ遺跡がある巨大な一枚岩の上に居た。てかアジトから2分ほど歩いただけである。


「そういえばさぁ、アイリスってそこまで強かったら戦士のレベル99に到達してて、能力やスキルを持って上級職とかでもおかしくないよね。なんで戦士のままなの?」


「賢者様が色々やって強くしてくれたのですが、その影響で、私はもう経験値が入らないのでレベルが上がらないのです」

「へぇ~、そうなんだ……」


 話によると転職もできないらしいけど、バトルでアイリスに入る分の経験値はパーティー設定している俺たちに入るので損はないとのこと。

 因みにさっきアイリスが倒した熊ゴーレムは悪しき存在じゃないためか経験値は入っていないようだ。その前に倒した黒炎竜は経験値は三人に入っているが、レベルは上がっていない。

 ってコラマリウス、なにやってんの。魔改造で冒険者システムにバグ起こしてんじゃねぇよ。無茶しすぎだ。

 天才なのは分かるけど調子に乗りすぎだな。その横にもう一人のお調子者の勇者タケヒコがいたんだからアイリスは苦労しただろう。

 てかこのバカ二人はマジで女神に怒られろ。


「クリス良かったな、アイリスと一緒に居たら何もしなくてもガンガンレベル上がるぞ」

「はいにゃ、嬉しいのにゃ。早くレベルを上げてご主人様の言ってるガチャスキルを使えるようになりたいにゃ。それで役に立ちたいのにゃ」

「どこまでバトルで役に立つかは分からないけど、スゲー楽しみだよな」

「ご主人、私はバカ猫と違い、ちゃんと自分で戦ってレベルを上げて役に立って見せます」


 スカーレットはブンブン尻尾を振りながら真っすぐ俺の目を見て詰め寄り力強く言った。


「そんなに気負わなくていいよ。スカーレットは役に立ってるから」


 そう言って頭を撫でてやるとスカーレットは瞳をキラキラさせて満面の笑みを見せた。

 その様子を見たクリスは自分もついでに撫でてもらうため、少しかがんで頭をこっちに向けた。だが当然スカーレットに阻止され、両の頬を抓られた。


「そだ、地図だ地図。近くなら行ってみようと思うけど、アイリスはこの地図がどこか分かるか」


 大雑把な地図で、樹海とコロッセオのようなものが記されている。


「はい、何度か行ったことがある場所です」

「マジで。流石アイリスさん、頼りになる」

「ここから北に移動すれば記されている樹海があります。徒歩なら50日ほどの距離です」

「けっこう遠いな……どうしようかなぁ」

「主様、先程の結界内にはなかったのですが、別の場所になら賢者様の移動魔法陣があるかもしれません。運が良ければ簡単に辿り着けます」

「移動魔法か。そんな便利なものが設置されてるアジトがあるのなら行ってみよう。で、それってどこにあるの。近くじゃないと意味ないけど」

「絶対とは言えませんが、ゲートと呼ばれるものが、この場所のどこかにあると思います」

「えっ、この遺跡にあるのかよ」

「賢者様のアジトがあったということは、ゲートがある可能性が高いと思います」

「じゃあ帰るの止めてそのゲートとやらを探そう」


 なんだよもう、そんな便利な移動魔法あるならアジトの結界内に設置しとけよな。ただアイリスの話では特殊な結界魔法のため、マリウスが使う移動魔法とは複合して使えないらしい。だから側の違う場所に設置しているとのこと。


「アイリスちゃん、ゲートってどんな感じなのかにゃ。クリスチーナが見つけるのにゃ」

「扉の形をしています。ただ普段は石になっていたりして使えません」

「ご主人、アジトを探していた時に、石でできた扉がありました」

「いいねぇ、さっそく手がかりあるじゃん」


 この変則パーティーはなんだかんだで上手くいくんだよなぁ。性格はバラバラだけど冒険の相性が良いのかもしれない。


「アイリス、石の扉がゲートだとして、どうやって使うの?」

「石化と扉の解除と解錠には合言葉のようなものが必要です」

「合言葉ねぇ……」


 ここで嫌な予感がするのは俺だけだろうな。お調子者臭半端ねぇ。


「アイリスはその合言葉を知ってるんだよね」

「はい」


 で、スカーレットが見つけた石の扉の前まで移動した。

 見た目は観音開き式の扉で普通の玄関サイズだ。左右の扉は隙間なく繋がっており、当然押しても開かないし動かない。

 扉以外は壁などもないが、上手く周りの遺跡に溶け込んでいる。これは仕掛けがあると知ってないと気付かない。


「アイリス、じゃあ頼む」

「はい、主様」


 アイリスは扉の前に移動すると小声で「ヒラケゴマ」と聞き覚えのある言葉を棒読みっぽく発した。

 ってちょっとまてぇいっ⁉ それ「開けゴマ」だろ。向こうの世界の王道すぎてもう使われないやつですけどっ‼

 ベッタベタすぎだ勇者タケヒコさんよぉ。またまた何を教えてんだよ。普通に採用されてるじゃん。

 日本人の召喚勇者だったら冗談で言って偶然解除してしまうぞ。いやこれマジでな。まあ俺は恥ずかしいから扉の前でそのセリフは言わないけども。

 でも合言葉じゃなくて呪文だよな。とか考えてたら石の扉が発光し、下部から石化が解けていく。普通の焦げ茶色の扉になると、どこからともなく成人男性の声が聞こえてくる。


「ソモサン」


 その声は聞いたことあるもので、というかマリウスなんだろうけど、なかなかのイケメンボイスだ。


「セッパ」


 アイリスがそう一言返す。まさに合言葉だ。

 っていうかこれもベタなやつぅー‼ 一休さんのやつぅー‼

 マリウスは異世界の文化好きだな。ただ取り入れすぎだ。日本人の俺的には面白いけどさ。


「問題‼」

「なっ、なんだなんだ、なにか始まったぞ」


 クイズ番組で問題を出題するみたいにマリウスの声は言った。

 そもさん・せっぱ、ときたら当然続くのは問題だけど、合言葉どこまで長いんだよ。


「とある勇者が村で暴れる悪いオーガを討伐するために、三種の動物を仲間にして旅立ちました。さてその動物とは何でしょう」


 って桃太郎かよっ‼ 楽しんでるなおい、二人して遊びすぎっ‼

 日本人以外にはガチのクイズだな。普通に難問だと思う。


「あの、主様、申し訳ありません。どうやら私が知っている問題とは違っていて、答えが分かりません」


 基本無表情のアイリスが申し訳なさそうな顔で言った。なるほど、そんな表情もできるんだな。


「あぁ、大丈夫大丈夫、俺が分かるから」


 因みに答えを間違えると扉は石化して、丸一日は問題に挑戦できないらしい。ただ別の誰かに入れ替われば、またすぐに挑戦できる。

 俺たちは四人パーティーだから四回チャンスがあるがその必要はない。


「にゃっ、流石ご主人様、天才なのにゃ」

「瞬時に答えを導き出す頭脳、ご主人は賢者様以上に聡明だと思います」


 スゲー褒められてるけど、考えたんじゃなく、知ってるだけなんですけどね。


「え~っと、犬と猿とキジ、っていうか鳥な。この三種で答えてみて」

「はい」


 アイリスが答えを言うと、わざとらしく少し間があった後、ピコピコピコーン、と大きな正解音がして「正解‼」と声が続いた。

 手が込んでるなぁ。もう分かってることだけど、本当に魔王討伐後は暇だったんだな。

 そしてどうやら全ての手順をクリアしたらしく、扉がゆっくりと手前に開いた。


「やったのにゃ、扉が開いたにゃ」


 そう言ってクリスは走り出し、勝手にゲートの中に入ろうとした。

 だがその行動を先読みしていたスカーレットがクリスの足を引っかけ豪快に転ばせて阻止した。


「バカ猫、指示もないのに動くな」

「酷いのにゃ。クリスチーナは安全かどうか確認しようとしたのにゃ」

「お前が行くと安全でなくなる場合がある。いい加減に理解しろ」

「にゃん⁉」


 出たよ顔芸。まさかそんなことが、的な表情してやがる。


「そのバカ丸出しの顔、お前全然分かってないな」


 スカーレットは容赦なくクリスの両頬を抓った。

 厳しいようだが、まさにスカーレットさんの言うとおり。なんといってもトラップ発動職人のトラブルメーカーだからな、我が家のデカ猫は。


「ほら、遊んでないで行くぞ」

「御意」

「はいにゃ」

「はい」


 扉の中は光で満ちていて何も見えない状態だ。風景がないから少し怖く感じる。この光の中に入れば魔法の力で瞬間移動するんだよな……。


「ちょっと待てよ。このゲートに入っても、地図の樹海、というかコロッセオに行けるとは決まってないよね」

「はい、その通りです。賢者様ならゲートを調整して好きな場所に行けるのですが、他の人が使う場合は一番近くのゲートに飛ぶと思われます」

「ダメだった場合はまたすぐに戻れるのかな?」

「はい。またゲートを通過すれば戻れます。ただ一定の時間が経つとまた石化します。その場合は同じような手順が必要です」

「そっか、じゃあ心配はないか……肝心なこと聞くの忘れてたけど、コロッセオはアジトなの?」

「昔は賢者様が試験場として使っていました」

「試験場?」


 アイリスは石化して眠っていたので百年以上前の情報になるが、話によるとコロッセオは賢者マリウスが造った物ではないらしい。

 その場所は遥か昔、大きな国があったが滅び、長い時を経て遺跡となっている。いま居る場所と同じ感じだな。

 マリウスは樹海の一部になっていたコロッセオを偶然見つけ、気に入ったので修復して結界魔法を発動させ、自分の物にした。で、何に使っていたかというと、冒険者たちの強さを見極める試験場として使っていた。

 マリウスは有名な賢者なので仲間にしようとする者や弟子志願者が後を絶たなかったらしい。そこでコロッセオに大掛かりな仕掛けを設置し、そういう者たちを試験していた。

 だがアイリスの情報では合格した者は一人もいなかったらしい。

 恐らくその試験は激ムズの無理ゲーと思う。マリウスがいちいち相手するのが面倒だから作り出したていのいい断り方である。

 何人もの死者が出るほど過酷で、噂が広まると訪れる者は激減した。しかし上級ステージをクリアするとレアなアイテムがゲットできるため、マリウスを仲間にとかは関係なく、腕に自信のある冒険者の挑戦は続いていた、とのこと。


 まあ今もその試験が存在していて、挑戦が続いているかは行ってみないと分からない。因みに試験の内容だが、既に俺はアイリス復活の時のダンジョンで経験している。つまり次々にゴーレムやモンスターが現れバトルするってやつだ。勝てば勝つほど出てくる相手は強くなっていく。そしてゲットできるアイテムもレア度が上がる。

 これは楽しみだ。どんなレアアイテムが出てくるんだろ。ワクワクするぜ。しかも俺にはアイリスがいるから無理ゲーをクリアできる。黄金のエリクサーを簡単にゲットしたのもそうだけど、賢者マリウスでも想像しなかっただろうまさかの裏技。

 ということで、レッツゴーだ。




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