大好きなおかんへ
『いつまで寝てるの、もう8時だよ!』
休みなのに、朝早く起こされたっけ。
今は起こしてくれる人がいないから、お昼過ぎまで寝ているよ。
『牛乳パックはちゃんとゆすいで潰して、ゴミはコンパクトに!』
別に捨てるんだからいいじゃない、ってよく言いかえした。
今は滅多に牛乳飲まなくなっちゃったよ。
『あんたはもう、女の子なんだから料理ちゃんと出来ないと』
子供の頃、手を盛大に切ってから包丁もたせてくれなかったのは誰でしたかね。
今は流石に多少?は作れるようになったよ。
『短気は損気、いちいちすぐかりかりしない』
気が短いとよく怒られたけど、短いのは親譲りだから。
今はカチンときた時、深呼吸して抑えられるようになったよ。
ねぇ、おかん。
『私はやかんじゃない』
おかんって呼ぶと、いつもそう言ったね。
でも返事を返してくれない事なんて、一度もなかった。
ねぇ、おかん。
『結婚したら片目つぶって、ちゃんと相手の事を考えなさい』
飛行機じゃないと帰れない遠い所に嫁ぐ時、空港でそう言ってくれたね。
姉ちゃんも遠くに就職して、母子家庭でおかん一人残して行くのに、一言も愚痴めいた事を言わなかった。
ねぇ、おかん。
『あんたとお姉ちゃんがいて、幸せだった』
いつも怒られてばかりだった、めったに褒めてくれなかった癖に。
最期の最期にそれは、あんまりだよ。
ねぇ、おかん。
毎日毎日、いってらっしゃい・いってきますのメールしてたね。
いまだに、おかんからのメール、朝になると来てるんじゃないかって思うよ。
ねぇ、おかん。
毎日毎日、何をそんなに話す事があるんだって位電話してたね。
いまだに、夜7時過ぎになると、電話がくるんじゃないかって思うよ。
ねぇ、おかん。
おかんを見送って、もうすぐ季節がひとめぐりするよ。
今でもメールは読み返せないし、写真や映像を見ると涙が止まらなくなるよ。
でも泣いてばかりいたら、怒るでしょ?だから、頑張って笑っているよ。
いつかそっちに行ったらたくさん土産話が出来るように、いろんなところにも行ってみるよ。
『あんたの名前は、お母さんがつけたんだよ』
貴女がくれた名前に恥じないように。
貴女がくれた命を粗末にしないように。
頑張って生きていくから、幸せになるから。
だからどうか、どうか、見守っていてね。
貴女の末娘より、大好きなおかんへ