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はじまりの猫 4
あたしはあからさまにムッとして、小さく舌打ちをしながらおにぎりを巾着袋にしまい、スマホを取り出して〈応答〉をスライドして左の耳に当てた。
「なに?ボス」
あたしがそう言うと同時に、相手はプッと吹き出した。
「また山下まで行ってんだろ?足を広げて食うなよ」
「そんなことしてないよ!エロボス!!なによ?お腹空いて、あたし死にそう!」
不機嫌をあからさまに口に出した。
「お前にぜひやってもらいたい仕事があるんだ。早く戻れよ」
「あたしに?!まぢ?こないだみたいに、女子高生のくだらない浮気調査だったら承知しないよっ!」
「あれは成り行きで……、俺だって受けたくなかったさ。しかも報酬たったの二千円。思い出しただけでも、吐き気がする…」
相手の声がどんよりしているのが分かって、あたしは思わず笑った。
「わかったよ。食べたらすぐ戻る。あ、それと、今夜来るでしょ?」
あたしがそう尋ねると、
「今夜は行けないな。こないだの依頼人と食事に行く約束なんだ」