幼馴染って………
何故か書く意欲が湧いてきたので更新しました。亀更新でごめんなさい。
ある公園に二人の少年少女と野良犬が一匹。
少年は少女の前に立ち野良犬から庇う。
少女は少年の背中を涙を溜めて見守っている。
野良犬は今にも二人へ飛びかかろうとしている。
そこで少年は少女に向かい笑顔でこう言った。
『ぼくが絶対守るからね!ゆうちゃん!』
そんな十年前のお話………
***
光輝学園、昼休み。
「なぁ雅斗。ずっとお前に聞きたいことがあったんだが」
「お?聞きたいこと?」
「あぁ、中学の時の話なんだけどな」
中学時代、優子と仲が良かった俺は、雅斗率いる優子大好き軍団にボコられその後ボコり返した。が、一つだけ気になることが残っているんだ。
「なんでお前はいきなり絡まなくなったんだ?」
「そりゃーその時に俺は正義の心に目覚めたからだよ」
「………意味が分からん。ちゃんと答えろ」
「なんだよー。そんなに俺に絡んで欲しかったのか?ならそれはそうと……」
「んなわけねぇだろ!ぶっ飛ばすぞ!」
「いやでも俺にそっちの趣味は……」
「人の話聞けよ!!」
ほんとなんでこんな奴がモテて彼女持ちなんだよ。俺は女子から悲鳴しか貰えないのに……。
「誤魔化すな。ちゃんと話せよ」
「俺からはっきり言えないんだよー」
「は?なんでだ?」
「俺の命が危うくなるから、かな」
「そんなのどうでもいいから話せよ」
「そこは気にしてくれー!」
くそっ、こいつがふざけてるのは明らかだが言おうとしないのもまた明らかだ。
「まああれだ。ヒントやるよ、ヒント」
「ヒント?」
「おう、お前って鈍感じゃん?しかも結構重度の」
鈍感?俺が?
「んなわけねぇだろ。俺が鈍感なんてそんな……」
「はぁぁぁぁぁ」
俺の言ったことを聞いてとても深い溜息をもらす雅斗。
「そういうところが鈍感なんだよなぁ」
呆れ顔でそんなことを言われた。
「お前よりも鋭い人のおかげで俺はお前に絡まなくなった、とだけ言っておこう」
「俺より鋭い奴………」
そんな奴……この世に数えられるほどの人数も存在してるか分からないじゃないか。
「大丈夫。殆どの奴がお前より鋭いから」
「なんで心の中分かんだよ!?」
「え?だってここに書いて━━ 」
「それ以上は言うんじゃねぇ!!」
何故だか阻止しなければいけない感じた。深く考えるのはやめよう。
それにしても雅斗は優子のどこに惚れたのだろうか。確かに見た目は十分だ。雅斗と同じ部活で活躍してるわけだし憧れなんかもあったんだろう。でも人を二日連続で保健室送りにする奴だぞ?恋人関係になったら絶対逆らえねぇよ。
そういえば優子は俺の幼馴染なんだよな。幼馴染はいいよなぁ。幼馴染っていうのは朝起こしてくれて料理作ってくれたりして、何かと世話を焼いてくれて、時節見せる小さい頃にはなかった女らしさが………うん、幼馴染っていいよね。
俺の幼馴染といえば、話を聞かずに(俺にも悪いところはあったが)首から変な音させたり腕を変な方向に曲げたり技かけてきたり………あれ?幼馴染って何だっけ?
「なぁ伊吹、幼馴染ってなんだっけ?」
「と、唐突だね、藍夜馬君」
※この人は刈具山ではありません。界導伊吹君です。
「うーん……イメージでもいいかな?」
「あぁ、俺に本当の幼馴染を教えてくれ」
「そうだね………例えば朝起こしてくれてり、お弁当を作ってくれたりと面倒見がいい人かな」
「ありがとう。俺の思っていた幼馴染像と同じだったよ。というわけだ優子」
「どういうわけよ」
近くにいた俺の幼馴染、浅川優子に話を振った。
「言ってみればお前って俺の幼馴染だろ?」
「そうね、全く遺憾だけどその通りね」
「何か言葉にトゲを感じるが、まぁいい。俺たちは幼馴染だ。つまり!」
俺は優子を見て、
「朝起こしてください」
頭を下げた。
「え?」
「朝起こしてください」
「アンタ本当に頭………大丈夫じゃないけど大丈夫?」
「どういう意味だよ!?」
「それよりアンタの言ってることの方が意味分かんないんだけど?」
「この前ちょっと振り返って見たんだよ。俺の生活を。するとどうだ。学校にいるだけで『馬鹿月』とバカにされ」
「それは本当のことでしょ」
「正しい行動をしたはずなのに停学になったり保健室送りにされたり」
「正しい行動+馬鹿な行動するからよ」
「部活では毒舌マシーンに罵倒され続ける毎日!俺は安らぎが欲しんだ!」
「結局何が言いたのよ?」
ふっ、優子の頭も知れたものだな。
「アンタのより断然マシよ」
「だからなんで心の中読めんだよ!」
こいつらエスパーか何かか?
「話はそれたが俺が求めるものは安らぎなんだ!幼馴染とは安らぎの象徴!だから優子さん!どうか幼馴染らしく朝起こしてください!!」
さっきより深く俺は頭を下げた。
「はぁぁぁぁぁ」
そして深い溜息をもらす優子。
「色々言いたいけど、まず私、朝練で六時起きだけどそれでもいいの?」
「……………」
忘れてた。この子エースじゃん。
「それに幼馴染が起こしに行くのってだいたい男が寝坊するけど、鹿月の場合普通に起きれるでしょ?」
「……………」
忘れてた。今日も七時に起きて学校来たんだった。
「な、なら!俺に弁当作ってください!」
こ、これなら大丈夫だろう。俺は弁当派ではなく学食派だ。つまり作ってもらえる条件はクリアしている!
「確かに私はお弁当派で自分で作って来てるけど………」
優子は俺をジト目で見てこう言った。
「アンタの方が料理できるじゃない」
「……………」
忘れてた。俺って趣味料理じゃないか。ん、今までことを振り返ってみれば、
「俺って………実は完璧じゃないか?」
早く起きれて料理もできる。人が生きていく上で大切なことを高校二年生にしてできている。
「そうね」
優子も俺が完璧だということを認めてくれた。
「頭以外は完璧ね」
訂正しよう。学力以外は認めてくれた。結局バカにされている………。
「優子!俺はもう多くは求めない!俺に優しくしてください!!」
「えぇ………」
「ちょ、ガチで嫌がらないでくれよ!このままじゃお前、口崎と同じじゃないか!なんで見た目いいやつは俺に厳しんだぁぁああ!!」
俺の心から叫びを受けて優子は、
「……………」
無言でワナワナと震えていた。あ、これやばい。
「ゆ、優子さん?」
やばいって、なんか顔赤いし目合わせようとしないし無言だし。
「…………私、ちょっと行くとこあるから」
「え?おい優子!」
俺の静止の言葉も聞かずに優子は教室を出て行った。
俺はただそこに立ち尽くすしかなかった。その時、俺の肩に誰かが手を置いてきた。
「大丈夫だって。気にするなよ」
「雅斗……」
「優子ちゃん以外の女の子だってたくさんいるかさ!」
「なんで俺が振られた感じになってんだあああぁぁぁぁああああ!!!!」
雅斗「でも『馬鹿月』を受け入れてくれる人ってどんな人だろう?」
鹿月「もう振られた設定でもいいから慰めてください!!」