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僕の場合  作者: とにあ
29/34

アドウェサ

 それは神の息吹が、存在の光が消えた暗い場所で。


「ここに置いていけない」


 そう言ったのはゆーきだった。

 ゆーきが望まなければ、神の死を看取った巫女など、かみを喪った聖地と共に沈むのが相応しい。



 向けられる意識は苛むように、それでも望まれている不快感を伴うもの。


「ここに置いていけない」



 そう言ったのはやっぱりゆーきだった。

 優しくしてくれただけで充分なのに『土守り』になるくらい、ゆーきの旅が楽になるならかまわなかったのに。

 のぞみは、アドウェサがわきまえていればいいとばかりに観察してくる。

 エンは、興味なさげだし、魔力感知に鈍感だ。ミルドレッドは胡散臭げに見てくるが、何かを言ってくることはない。早い話、アドウェサには無関心だ。

 ゆーきがいなければ、言ってくれなければ、アドウェサは知らなかった。

 誰かのぬくもりも、誰かの……悪意も。

 イシチャンも、アドウェサと同じように思っているようだった。

 ゆーきはアドウェサたちに怯えない。

 抑えつけたり、かわしたりする自信があるのぞみやミルドレッドとは違うのに。

 アドウェサやイシチャンを普通の子供や小動物のように扱うのだ。

 おっとりしたゆーきはぜいじゃくだ。



 弱い。



 でも、アドウェサが小さいという理由で庇おうともしてくれた。

 アドウェサは、ゆーきを失いたくないと思う心を知った。


 なら、アドウェサがゆーきを守ればいい。


 アドウェサがゆーきに危害を与えようとするものを排除すればいい。


 のぞみはアドウェサの決意を聞いて、アドウェサの頭を撫でてくれた。

「おにいちゃんの一番はだぁれ?」

 のぞみが尋ねてくる。

 ゆーきの一番は、



「のぞみ」



 ちゃんとアドウェサはわかっているんだから!


 だから、アドウェサは溜まった力を敵意を持って『土守り』を求めた町にむけた。

 揺らぎの影響は減る。だから、あそこに『土守り』はもういらない。そうするのが簡単だってアドウェサは知ってる。

 ゆーきにあそこで誰かが『土守り』になることはもうなくなったよと伝えると嬉しそうにアドウェサを撫でてくれた。

「アドウェサは優しいいい子だね」

 そう言って、撫でてくれた。

 アドウェサはゆーきを失いたくない。

 アドウェサはゆーきにほめられると嬉しいんだ。

 また、そばにいてくれるものを失いたくないんだ。


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