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僕の場合  作者: とにあ
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「知らない」



 そうは言ったけど、あのアディって小娘が結界円の外に素早く出て行ったのは見ていた。

 でも何のために出て行ったのかは聞いていないから「知らない」そう。嘘ではない。

 予想ならつくけど、確実なことは知らない。

 いっそ死んじゃえばいいのに。

 それにしても、ミルっておねーさんは引き摺りこんで正解だったな。

 常識人がいれば自然に世界に溶け込む助けになるもの。

 陽瑞ヒスイ様の力を借りた形を使ってるだけで自前の魔力魔法だし。

 今、陽瑞様の力を乱発したら陽瑞様消えちゃうし、使えなくなるのは困りそうだもんなぁ。

 ああ、おにいちゃんが不安そうだ。

「のぞみちゃん?」

「ミルドレッドさんの魔法すごかったねー。びっくりしちゃったぁ」

 ほわりとおにいちゃんが笑う。

「そうだね。鏡、見せてもらう?」

 戸惑うようにおにいちゃんをそっと見上げて、堪能してから俯く。

「ううん。ちょっと怖いし、おにいちゃんそばにいてね?」

 手を伸ばせばぎゅっと握ってくれる。

 おにいちゃんが握ってくれてるー。

 いやー。しあわせーーー。

「えっと、きっと、大丈夫、だから。ね、のぞみちゃん」


 ああ。今おにいちゃんが考えてるのは私のことだけだよね。

 視界の端に半眼になって見てくる雑魚ミル二匹エンいるけど、もう、気にならない!!

 今口を開くことはできないけど、ものすっごく嬉しい!!

 ぎゅっと抱きつく。

 少し驚いたようだけど、おにいちゃんは優しく背中を撫でててくれる。

 こわいものなんか何もないんだと言い聞かせてくれるかのように。


 だから、

 余計なこと言ったら殺すからね。二人とも。





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