星を見上げる
ふんわりとオレンジのヒレが開く。
星明りがキラキラと夜空を彩っていて美しい。
外はこんなにも煌めいていたのかと思う。
元の世界で空を見上げても見える星は僅かで。
水没都市タフトも雨が多く、夜空を眺めるには向かない。
「さかなぁ。キレイなお星様だねー」
『そぉだなー。キレイだなー』
「て、天井が、……ない」
ノイが呆然と空を見上げ呟いた。
いつの間にか移動したのかな?
魚はすごいもんなー。
あ。
それとも実は開閉式?
「開閉式?」
「この街にそんな技術があるわけないじゃない!!」
ノイが声を荒げる。
じゃあ、いったい何が起こっているんだろう?
「えっと、さかな?」
『なぁんだぁー?』
可愛らしく間延びした声が返る。
ナデナデとその華やかなウロコとヒレを撫でる。
嬉しげに揺れるヒレ。
「なんで、天井がないの?」
『流星明滅が天井に激突・破砕、その穴付近に鏡明反射による反射作用が働いて破砕片が天井全体を巻き込みつつ、飛び散ったんのー。落ちてこなくてなりよリダなー』
僕は首を傾げる。
そんな威力があるはずのない魔法だった。
「僕の魔法で天井に穴とか無理じゃないかなぁ?」
オレンジの鱗を撫でながら呟く。
ひらりひらりとヒレが揺れ動く。
『ユーキはすごいぞー。自信もてー』
さかなは意味なく僕を持ち上げようとする。
『ぅうんと。ユーキの役割はスイッチだなー』
「すいっち?」
『さかなが流し込んだ魔力を魔法技術で変換して、出力する。だーから、変換発動スイッチだな』
えっと、なにそれ?
『だーから、さかなとユーキがすごいのー』
「ふざけないで!!」
ノイが声を荒げる。
『ふざけてないぞぉ~』
さかなが返す。
『ユーキとさかなはすごいんだぞぉー』
ひれが大きく揺れてうごめく重い音が耳につく。
ひらりひらり
オレンジが舞う。
きれいだと思う。
「さかな」
『ん~?』
「あんまり壊しちゃダメなんだよ?」