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僕の場合  作者: とにあ
12/34

よろず屋

 リンリンリン


 甲高い耳障りな音が室内を埋めている。


 鬱陶しい。


 リンリンリン


 音は鳴り止むことなく、部屋に響き続ける。


 !!!!


 不意に脇腹に痛みが走った。


 慌てて飛び起きるとすぐ横に紅い目が見えた。

 起こすために噛んだらしい。

 ったく。

 声に出さずに悪態をつく。

 口に出せば、何倍で返ってくることやら……

 思わず滲んだ涙を袖で拭い周囲を見る。

 暗い部屋。一面を重苦しく飾る書架。散らばる書類。って、

「えー」

 あんまりな惨状に思わず声が漏れる。

 いやいや、散らかしすぎだろ。俺。

 本格的に体を起こすため、すぐ横のソファーに手をかけて起き上がる。

 もちろん、ばさりと物の落ちる音は聞かなかった。

 ……床で寝るとちょい体が怠い。

 きしむ体を伸ばしつつ、鳴り止むことなく騒音を撒き散らしている原因たる魔法具へと向かう。

 嫌な予感しかしない。

 俺を噛んだネコはソファーに陣取り、こちらを煩わしげに見つめている。

 ……愛が痛いよ……。

「はいはーい。よろず相談受付処アスカでーす。御用向きは何でしょーか?」

 魔法具には幼女が映し出されていた。

 うわぁ。

 なかったことにしてぇ。

『うむ。よろず屋であるな。そちらの様子が写っておらぬようであるが、よろず屋に違いあるまいの?』

「よろず屋ですよー」

 映ってないのは部屋が散らかっているせいと、俺が寝起きのため、身繕い出来てないからだよ。

『うむ。依頼なのである。御告げがくだされての。明日には当神殿の司祭を迎えに向かわせるので、短時間であろうが迷い人を守って

 おくようにの。詳しい話と雑事は司祭に任すのでそちらで話し合って定める。となる。それでは良きように計らうように』

 一方的に宣言し、通信は切れた。

「俺、引き受けるってひとっことも言ってねぇ」

 拒否権はなさそうだ。

 派遣されてくる司祭は幼馴染のあの女だろうしな。

 あーーもう、とりあえず朝飯にするか。

 部屋を出る時、足元をすり抜ける感触に手を伸ばす。

 抱き上げるのは黒猫姿の精霊獣。

 もう、付き合いの長い相棒と言える。

「はいはい。甘いミルクと焼き魚でいいよなー。それとも芋パン?」

 厨房には先客がいた。

「あれ〜ケリー、久しぶり。おはよう」

 緑色の髪を短く切り揃えた人物。

 直線的なコートは室内でも脱がないのがケリーといえる。

「おはようございます。ですが、もうじき昼食時間ですよ。もう少し規則正しい生活をおくることを推奨致します。茹で鳥のサンドウィッチと根野菜のスープを用意してありますから、どうぞ」

 抑揚無く、ケリーが説教交じりに食事を促す。

「以後気をつけ、努力はしようと思います」

 一応しおらしく返事しておく。

「同様の返答を既に三十九回繰り返してますよ。実行しなければ身体への影響は良くないままですよ」


 土下座されるまであと数時間。


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