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Mission:08 「現状を知るほど欝になる」

――9mm拳銃2型。1964年に国防軍が正式採用した半自動拳銃。海外では、「M-92」という名前でライセンス生産されている。

現在、各都道府県の兵科学校に配備されている拳銃は、マイナーチェンジを施した2型(海外名「90-Two」)である。

このモデルは、バレル・スライド・マガジンの交換により9mm弾と.40弾を使用することが出来る。

……にも関わらず、9mm拳銃と言う名称なのは大人の事情と言うやつらしい。

他にも、マウントレールが追加され、64式程ではないが各種アクセサリーの装着が可能となっている。

装弾数は、9mmで17+1/.40では12+1である。因みに、俺は9mmを使用してる。






異世界学兵奮闘記 

Mission:08 「現状を知るほど欝になる」






「ヘリの燃料は今入ってるだけ、食料も飲料水も無し、武装は演習用ペイント弾を装填した64式……これ、無理だろ」


言うな、滝本。俺も考えたくなかった。悲しいけど、これ現実なのよね……

俺達は今、例の村から30km離れた湖の近くでキャンプを張っている。

都合良く、周りは木々に囲まれてる癖に湖の近くにはヘリの着陸が可能な空間が空いていたからだ。

安西以下、野郎連中が偽装工作したお陰で、上空からは視認し辛くなっている――筈。


「で、どうするんだ進藤? このままじゃ、第一の連中を捜す前に、俺達が死ぬ方が早いぞ?」


「金は無い、言葉は通じないでどうしろと?」


「……もしこれが映画や小説なら、作者は馬鹿としか言いようが無いな。どう考えても詰んでるだろ、これ」


簡易テントの中で、二人そろって頭を抱えるなんて演習前には考えても居なかったぜ、畜生。

視線をテントの外へと移せば、斉藤、梅沢、上戸、柳生の女性陣が保護した少女を相手に、何とか意思疎通しようと悪戦奮闘しているのが見えた。

……斉藤、ボディランゲージのつもりかもしれんが、残念な事に阿波踊りにしか見えんぞ?


「食料は狩で何とかするとして、だ。飲料水の方はどうする?」


「さっき斉藤がアホみたいに飲んでたから、今は様子見だな……俺達に合ってなかったら、異変が出るだろうし」


「そうか――なぁ、進藤。ひとつ聞きたいんだが?」


「どうした?」


「お前達が交戦した勇者2名、日本語話してたんだよな?」


「おう」


「――そいつ等、どうやってこの世界の住人と意思疎通してたんだ?まさか、2ヶ国語が喋れる様な奴等なのか?」


あり得ん。それはあり得ん!ロリペド野郎と殺戮マニアがそんな高い知能を持っていたとは考えられんぞ……

こちとら毎年、英語の単位を落としそうになって涙目になってんだぞ畜生。


「――異世界物のテンプレでいけば、恐らく魔法による言語統一では無いでしょうか?」


「うぉっ! 黒木、お前は何時から其処に!?」


「? 最初から居ましたけど?」


流石は偵察を得意と豪語するだけあるな……まったく気がつかなかった。


「テンプレか……だが、俺達にテンプレが適用されると思うか?」


「思いませんね。はっきり言って、私達はテンプレから外れまくってますから。召還早々、ヘリの墜落により死者多数、行方不明者も多数……言語は通じず、良くある近代兵器無双も出来ません。当然、戦闘や軍事行動に対する知識はあっても、新たに開発する程の技術は有していませんしね?」


「つまり、お約束の"勇者様ウハウハハーレム・ストーリー"は諦めろってか?」


「進藤さん、斉藤さんの遺伝子がナノ単位で存在している限り、貴方にその様な物語を奏でる事は不可能ですよ。それに、勇者とは"世界"が生み出す決戦存在……もし、その定義が当てはまるのならば、勇者は既に存在していますよ」


「あいつらの事か?」


「はい、滝本さん。確かに、彼等は精神的には子供で、自分の欲望に忠実です……例え、王権という絶対的な正義が後ろに控えていようとも、悪行の限りを尽くせば民衆の恨みを買います。そうなれば、王室側にはデメリットの方がでかくなる筈。にも拘らず、王側は彼等を排除することも無く、話が事実ならば――彼等に取って代われる存在を召還した」


「要約すると、国単位で排除しようにも不可能と思わせるほどの戦力を有していると?」


「流石は進藤さん……仮説の域を出ませんが、"勇者"という存在が世界にとっての"決戦存在"であるならば、答えは唯ひとつしかありません。つまり、世界にとって敵対する存在――それを排除出来るほどの力を与えられた、そう考えるのが私の意見です」


――参ったな。本当に参ったぜバーロー!!

世界に敵対できる程の存在?それに対抗できるほどの力を与えられただと?ふざけんな、何だよこの無理ゲー。


「それは違うな、網干君!」


「アンッ!」


!?誰だっ!

突然、聞こえた聞きなれない声に視線を向ける。



……え?誰?


「――誰だ、アンタ?」


「誰って…見りゃ分かるだろ?」


滝本の問いかけに、「何言ってんだコイツ?」ってな感じで返す男。

OD色のロングコートを纏った男と、その隣にビシッと背筋を伸ばして座るダルメシアン?

いや、マジで知らんがな。


「……新ポリスストーリーに出てきた偽警官?」


「いやいや、そこは青島って言っておこうぜ?」


思わず口に出してしまった言葉に、訂正を入れる男。




――つーか、マジで誰だよお前はっ!!



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