資産家独居老人の道楽8
剛田甚左衛門の体調も安定して、大広間では快気祝いと剛田甚左衛門とアキの結婚の報告とアキの妊娠の祝の宴が催されていた。
八咫烏メンバーは全員揃っているが、八岐の大蛇メンバーの半分以上がいなかった。
「水波よ。皆はどうしたのかのう」
「剛田さ〜ん!気にしないで大丈夫だから!」
水波は相変わらずの調子で料理を食べ酒を飲んでいる。
「水波さん、きちんとオーナーに伝えないとよくないと思いますよ」
「ブラボー1は真面目よねえ〜」
水波とブラボー1の説明によると潜伏している敵対的勢力が剛田甚左衛門襲撃計画を立てているということらしい。
なので八岐の大蛇メンバーの半数は臨戦態勢で邸宅を警護しているとのことだった。
「世の中物騒じゃのう」
「剛田さん!返り討ちにしてあげましょうよ!」
「アキさんも我々の護衛対象なので無茶なことはしないでくださいね」
ブラボー1は本当に真面目な男だった。
剛田甚左衛門はちびりと酒を飲みながら、静かに高揚していた。
「早く新装備を使いたいのう」
「甚さんよ、新装備ってなんだい?」
「今は教えん」
「ケチくせえなあ」
塩澤は酒をあおりながらつまらなそうな顔をしている。
宴は和やかな雰囲気で幕を閉じた。
剛田甚左衛門のはからいで警護している八岐の大蛇メンバーに高級弁当が届けられた。
それから2週間も過ぎた頃。
深夜2時。
「敵と思われる複数…。いやかなりの人数が裏の森から侵入しました!屋敷屋上からの狙撃で応戦中!繰り返します!敵と………。」
「ことトランシーバーは本当にうるさいのう」
ワシは気配を感じるのが好きで、寝ている間も1部感覚を研ぎ澄ませている。
「剛田さん、私着替えるわね」
アキは動きやすそうな服に防弾チョッキを着て、拳銃2丁を手に取った。
「アキよ、身重の身で戦場に出るのは危険じゃろうて。地下の隔壁の中におればよい」
「私は剛田甚左衛門の妻です。あなたの側をはなれませんからね」
「アキは言い出したら聞かんからのう」
ワシらはこうして寝室を出たのじゃが。
サイレンサー付きのの銃のプシュ!プシュ!という音が聞こえる。日本庭園のほうじゃな。
ワシらは日本庭園の方へと向かった。
「オーナー!アキさん!頭を下げてください!」
「甚さんも来たのかい!」
敵もサイレンサー付きの銃でこちらを攻撃して来ているのじゃがなんというのかのう。
「なかなか気の利く敵じゃの。これなら警察も来んわい」
そんな銃での交戦状態が数分続いた頃。
ブラボー1が急に大声で叫んだ!
「RPG〜!」
なんじゃそれは!
ロケットのような物が頭の上を越えて家の中へ飛んでいった。
ゴン!ゴロゴロ。
「不発!不発だ!」
ブラボー1は大忙しじゃったが、ワシはなんか腹が立ってその場を飛び出してバズーカみたいな筒に次弾を装填しようとしている奴の方へと駆けた!
「オーナー無茶です!」
「剛田さん!私が援護するわ!」
アキも剛田を追いかけながら銃を撃ちまくっていた。
ワシはバズーカ野郎の方へと直進しながら、左腕の義手を引き抜いた。高周波ブレードのスイッチも入れた。
飛び交う弾を高周波ブレードでスパスパと斬りながら突進する!
「バズーカ野郎!そんなもの使ったら警察が来てしまうじゃろう!」
ワシはバズーカ野郎の胸元に右手で持った義手をそっと当てて、隠しトリガーを2連発で引いた。
ドン!ドン!
バズーカ野郎は即死した様子じゃ!
「天誅じゃわい!」
そして元いた場所へ駆け戻って行ったのじゃか、何故かアキは空中を側転しながら銃を連発していた。
「甚さんよ!あのドン!って言うのはなんだい?」
「独田が言うには、スーパーマーケットのオリジナルのアルトバイエルンをリボ払いで買ってきたと言っとったのう」
「甚さんてえ奴は本当に聞きかじりが多いなあ」
「なんじゃと!」
「いいかい、1回しか言わないから良く聞いてくれ」
「うむ」
「あれはな、スーパーロボット大戦のオリジナル機体アルトアイゼンの必殺兵器リボルビングステークを応用したものだよ」
「独田といい、琢磨といい。サッパリ分からんことを言うのう」
「ちょっと割り込んですみません!オーナーもアキさんも我々の護衛対象なので、今みたいなことは絶対にしないでください!!」
「仕方ないのう」
トランシーバーが騒ぎ出す。
「裏の森の敵兵殲滅しました!オールクリアです!繰り返します…。」
「うるさいのう」
日本庭園の方も静かになった。
八咫烏が数名前進し発砲している。
「庭園の敵!オールクリア!」
こうして騒がしい夜は終わりを告げたのじゃった。
「剛田さん!剛田さん!バックの組織を壊滅させてきて良いですか?」
「水波よ、それは良い。頼む」
そして2日後の昼に訪いがあった。
水波が居室にやってきてこう告げる。
「田中丸栄の使いの者では無く、田中丸栄だと剛田甚左衛門殿に伝えてくれ。とのことです」
まさか…。あの田中かの?
突然どうしたというのじゃ。
ワシは玄関まで出ると、日本国総理大臣田中丸栄がそこにいた。連れの者が3人。
「田中さんでわないかのう。久しいのう」
「剛田さんこそ変わりがないというか、益々お盛んなようで」
「もちろん上がって行くであろう?」
「連れの者もよろしいですか?」
「上がってくれてかまわんのじゃ」
そして日本庭園が1番美しく見える茶の間に4人を通した。
「剛田さん、さっそく本題なんだがこいつらとの抗争を田中丸栄の顔を立てると思って手打ちにしてほしいのだが、頼めるかな」
「いくつか条件があるのう」
「聞きましょう」
「今の状態の極道や暴力団をやめて任侠に戻るなら手打ちにしてもよいとは思っているのじゃが…。難しいであろう」
「いや、剛田さん。剛田さんの手の内の者たちの襲撃でコイツらの組織はほぼ壊滅状態なんですわ。ここでこれ以上組織の上の者が消されると日本は無法地帯になってしまうのです。なので時代の繰り返しと言いますか、コイツらには剛田さんの条件を飲む以外選択肢はありません」
「我々も同意します」
裏社会の大物の雰囲気を漂わせている3人の1人が代表して応えた。
ワシは思った。
この手打ちで日本の裏社会が変われば、亡くなった妻の翠のような出来事は、今よりはだいぶ少なくなるであろうと。
そう信じてみようと思ったのじゃ。
湯呑の茶を飲もうとすると、1本の茶柱が立っていた。




