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姉様は乙女ゲームの悪役令嬢

『腹黒伯爵の苦悩と悦楽』 〜妻が天使で、子供たちがとても優秀だった件〜

作者: 花庫
掲載日:2026/10/08

愛する姉様は乙女ゲームの悪役令嬢~姉様を守るため脱!乙女ゲーム!脱!断罪ルート!脱!国外追放!

https://ncode.syosetu.com/n9457mv/

の父目線アンサーストーリー


「我が家で一番ヤバいのは実は誰なのか」を完璧に理解し、愛する妻を守るために裏で息子と娘の超ド級の暴走をすべてニヤニヤしながらバックアップする——腹黒伯爵アルフレッド(父)目線のアンサーストーリーです!


【父目線】『腹黒伯爵の苦悩と悦楽』 〜妻が天使で、子供たちがとても優秀だった件〜


眼鏡のブリッジを指で押し上げ、私は書斎の窓から中庭を見下ろしていた。


私の固有魔法は「人間の精神の変化がオーラで見える」という代物だ。

貴族社会という泥沼の中で、相手の嘘や野心、嫉妬や憎悪がドス黒いモヤとなって可視化される。おかげで私は若くして人間不信に陥り、王都の貴族たちから「冷酷非道な腹黒伯爵」と恐れられるようになった。


そんな私が人生で唯一巡り会えた「本物の天使」。それが妻のカミラだ。

彼女の精神オーラは、出会った日から今日に至るまで、澄み渡る春の陽だまりのように心地よい。隠し事ができず、思考とオーラが100%一致している彼女は、私にとって暗闇の人生を照らす唯一の光だった。


……だからこそ、私は誓ったのだ。

カミラの笑顔と、彼女が産んでくれた可愛い子供たちの平穏を守るためなら、どんな手でも使うと。


◇


思い返せば、息子のレオンが7歳になった頃だった。

執務室に怒気を含んだ顔で乗り込んできたと思えば、真面目な顔で机を叩き、私を詰問し始めたのだ。


『父様!! なぜ! なぜあと2年……! いや、せめて1年でも早く僕を産まれさせてくれなかったのですか!?』

『な、何の話だ突然……』

『これでは姉様と同時に学園へ通えないではありませんか! あの心優しい姉様を、学園で僕が守っておあげできない! 全ては父様の計画性のなさゆえです!』


私のオーラ感知魔法を通してみても、レオンのオーラには一切の嘘や打算がない。

「純度100%の重愛シコン(シスコン)エネルギー」が燃え上がっているだけだった。

あげくの果てには「カミラとの愛の営みにまでお前の許可がいるというのか!?」と反論した私に対し、7歳の息子は本気で悔しそうな顔をしていた。


(……ダメだ、頭が痛い……)


私は額を押さえた。

我が息子ながら、特殊過ぎると思うのだが、どうだろうか?前世持ち?まぁ王国の歴史にもそんな人間がいた記録はある。その前世持ちの者たちの功績も華々しいものであり、前世の記憶持ちは非常に大切に扱われる。のだが……、目の前の前世持ちのレオンはと言えば、前世の異質な知識と規格外の魔力を持ちながら、その使い道のすべてが「姉を養い、姉に近づく害虫を滅ぼすこと」に特化している。え?もうさ、王宮への報告は後でいいかな?こんな調子のレオンの話なんて、父親の私ですら受け止めきれないからさ。


本当に父として胃が痛い。


そして何より恐ろしいのは……レオンが「守るべき可憐で儚い天使」と思い込んでいる娘のアイリスだ。


◇


アイリスの精神オーラは、一見するとおっとりとした桃色に見える。

……だが、一度でも彼女の「大切なもの(主にレオン)」に害が及びそうになると、そのオーラは一瞬で「漆黒を纏った絶大な殺意の波動」へと変貌するのだ。


あれはカミラの「元・王宮の影」としての冷酷な狩人の血と、私の「逃げ道を完璧に塞ぐ腹黒い知恵」が見事に融合した結果なんだろうな。ある意味、私たち夫婦の愛の結晶だよね。うん。


レオンが11歳の時。

アイリスに婚約を打診してきた公爵家のドラ息子を、レオンが裏で資金と情報網を駆使して「廃嫡」まで追い込んだ件。


レオンは『父さん、姉さんには内緒で僕が完璧に処理しました!』と胸を張っていたが……実は、レオンが動く数日前に、アイリスが私に密書を持ってきていたのだ。


『お父様。この公爵令息、裏で身分の低い者を暴行している証拠を掴みましたわ。……レオンが私を守ろうとして一生懸命動いているみたいだから、私は手を出さないけれど……もしレオンの手が届かなかったら、この公爵家ごと潰してくださる?』


儚げに首を傾げ、おっとりと微笑みながら私に極悪非道な提案をしてきた娘。

オーラを見れば、レオンへの愛おしさと、害虫への殺意が完璧な黄金比で混ざり合っていた。


『……分かった、アイリス。レオンの成果を温かく見守ろう』

『ええ、頼むわね、お父様。可愛いレオンの初手柄ですもの』


私は息子と娘、双方の裏工作が円滑に進むよう、伯爵家の暗部組織を動かして手助けをしてやったのだ。

そして何も知らないカミラが「あら、婚約の話が消えて良かったわねえ」とパンを頬張る横で、私とレオンとアイリスは、それぞれの思惑を胸に爽やかな朝食をとったのだった。


◇


そして、アイリスが学園に入学し、レオンが特例飛び級試験で追いかけていった先日。


書斎にやってきたレオンと、王都の動向について密談を交わした。


「父様。王太子とヒロインのアリア……僕の飛び級計画を繰り上げて、来月には学園に乗り込みます」

「よろしい。学園の理事長には私から『寄付金』という名の圧力をかけておこう」


メガネを押し上げながらニヤリと笑うと、レオンも満足そうに頷いた。


「……助かります。あ、母様といえば……昨日、母様の実家の叔父様から手紙が来ました。『レオン、裏のトップになれば王族の首すらすげ替え放題だぞ』と魅惑的なオファーをいただいています」

「くくく、あの義兄さんも相変わらずだな。……まあいい、使える毒はすべて使え」


頼もしい我が息子だ。

……ただし、彼が知らない事実が一つある。


王太子の不正資金流用の証拠も、アリアの魅惑魔道具の特定も、すでにアイリスが完璧に完了させているということだ。


アイリスは「レオンが私を守るためにヒーローとして活躍する舞台」を整えるために、あえて王太子たちを泳がせ、レオンに最後の手柄を譲ろうとしている。


(我が娘ながら、なんと恐ろしい演出家(弟プロデューサー)だろうか……)


レオンは「僕が裏で汚い仕事をすべて片付けて、姉さんには綺麗で無垢な世界のまま生きていてもらうんだ!」と鼻息を荒くしているが、実際はアイリスの手のひらの上で楽しく踊らされているだけなのだ。


だが、それでいい。

レオンが誇らしげに胸を張り、アイリスがそれを愛おしそうに撫で、2人が幸せならそれでいいのだ。


「レオン。カミラには『レオンが優秀すぎて早くお姉ちゃんに会いたがっている』とだけ言っておくぞ。カミラに裏工作の話をすると、嬉しさのあまり拳で壁をぶち抜いて王都まで飛んでいくからな」

「もちろんです、父様」


ふっ、本当にカミラは可愛いな。

もし妻が真相を知ったら、「あら! アイリスもレオンも頼もしいわね!」と叫んで学園の校門を物理的に叩き割りかねない。それだけは伯爵家の世評のために阻止せねばならない。


◇


一階の食堂から、カミラの明るい声が聞こえてきた。


「あなたー! 朝ごはん冷めちゃうわよー!」


私は書斎の書類を仕舞い、冷徹な腹黒伯爵の顔から、一人の愛妻家の顔へと戻った。


「今行くよ、私の天使。今日も君のオーラは春の陽だまりのように美しい……」


あ、もしかして、子供たち2人が学園へ旅立ったということは?夫婦水入らずのNEO新婚生活なのでは??

これはもしや、第三子誕生も近いのでは?

あーーーー私はなんて幸せなんだろう。

裏で王族を失脚させようが、国家の裏社会を牛耳ろうが、ローゼンベルク伯爵家の平和は今日も保たれている。

可憐な娘と、健気な息子と、破天荒な妻。


……ふふ、我が家を敵に回した王太子とヒロインの末路が、今から楽しみでならないよ。

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