表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/67

第15話 ヴァレンティーヌ家の暗雲(前)(★メアリー視点)

 私はメアリー・ヴァレンティーヌ。

 忌々しいあのカナリヤを追い出して、名門ヴァレンティーヌ伯爵家の一人娘になれたのよ。


 これで順風満帆。

 私の未来は明るいと思っていたのに、何だか最近うまくいかないの。


 今朝だって食事の時間に、お父様にドレスをおねだりしたのに――。



「お父様、そろそろ新しいドレスが欲しいですわ」


「すまないな、メアリー。今は余裕がないのだよ。春に買ったものがあるだろう?」


「あれはもうデザインが古いです。流行遅れのドレスでは、ロイドにも恥をかかせてしまいます」


「……とにかく、無理なんだ。仕立て屋に行って直してもらったらどうだい」


「そんな、貧相な! 仕立直しのドレスなんて、まるでカナリヤのようではないですか!」



 私がどれだけ抗議しても、お父様は困ったような顔をするだけだったわ。

 お母様に助けを求めようとしたけれど、怖い表情で黙り込んでいて、話しかけられる雰囲気ではなかったし。


 

「なによ、なによ! これまで、私のおねだりを聞いてくれなかったことなんてないのに!」


 拗ねて自室に戻ってきた私は、力任せにクッションを壁に投げつけた。

 クッションは棚の上に飾っていた陶器の人形を掠めて、人形は床に落ちて割れてしまった。


「あっ……」


 ガシャンという音と共に、その残骸を見つめる。


 ――これはロイドと出かけた時に、彼が買ってくれたものだったのに。

 

「なによっ。何よ、何よ、何よぉ……!!」


 苛々と悲しみが混ざりあって、私は棚をガンガン蹴りつけた。

 それでも怒りは全然収まりきらず、ベッドの上に乱暴に飛び乗ってシーツを叩いた。


「ロイドも最近、全然、構ってくれないしっ」


 カナリヤを追い出した日以降、ロイドからのデートの誘いはすっかり減ってしまった。

 折角、邪魔者がいなくなったのに、どうして?

  


 ロイドはいつも私に言っていたわ。


『メアリーは本当に綺麗だね。カナリヤとは大違いだ』


『フレアリス家とヴァレンティーヌ家は古い付き合いだから、どうしてもカナリヤの世話をしなくてはいけなかったけど、うんざりしていたんだ』


『こんなに素敵な君が、ヴァレンティーヌ家に入って来てくれて良かった』



 ほらね、ほらね! 私って、愛されているの!


 私も初めてお父様からロイドを紹介された日、一目で恋に落ちたわ。

 鮮やかな赤い髪、炎のような深紅の瞳、凛々しく逞しい立ち振る舞い、全てが理想的だった。


 彼が勇者の末裔だと聞かされた時、心から納得したもの。

 そして思ったの。ロイドが勇者で、私が守られるお姫様なんだわ。



 ……でも、彼がカナリヤを気にかけているのは分かっていた。

 

 子供の時からの付き合いで幼馴染らしいから、優しいロイドは、カナリヤを切り捨てられないのだと思おうとしたわ。

 けれど、どれだけ辛辣な言葉を使っても、彼がカナリヤを見つめる瞳が、ときどきどうしようもなく熱を帯びていたの。


 私はそれが許せなかった。


 私の方が本命だって、勿論、確信はしていたのよ?

 それでも、少しでも彼の目がカナリヤに向くことが、許せなかったの。



 ――だから罪をかぶせて、家から追放してやったのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ