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プロローグ 魔王の嫁拾い


 月が仄かに夜道を照らしている。

 長い白銀の髪を月光に煌めかせながら、紫色の貴族風礼装姿で機嫌よく歩く男が一人。

 彼は王都での”仕事”が終わり、自分の屋敷に帰る前にちょっとした夜の散歩を楽しんでいたのだ。


「あれ……? なんだろう?」


 男の紫色の瞳が、道端に倒れ伏している娘の亡骸に気づいた。


 月を映さない漆黒の髪、血の気の失せた白い肌、痛々しく焼け爛れた跡の残る頬、瞼は冷たく閉ざされて長い睫が目立っている。粗末な衣服の裾には繊細な刺繍が施されていた。


 男はそっと、娘の亡骸を抱き起す。背中から胸にかけて深く貫かれた傷があり、彼女の命を奪った証である血は既に黒く変色しかけていた。

 娘の首には紐で通された首飾りがかけられている。深紅で、蝶の片翅を模したもののようだった。


「なんて可愛いんだ!」


 娘を間近で見た瞬間、男はうっとりと目を細めた。

 細くて、壊れそうで、美しくて、可憐で、彼はすぐにその亡骸を気に入った。


「連れて帰ろう。それで、綺麗にして、お嫁さんにしよう!」


 男は亡骸を優しく抱き上げると、柔らかく微笑みかけた。


「おいで、僕のお人形」

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