表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

Destiny.6 変貌

 食堂から出て真正面にある細い廊下の途中に、職員室はあった。一般的な教室三つ分の広さがあるその部屋は、いつ来ても異質な雰囲気をまとっている。


「ここ……か」

「魔物がいるかも」


 私は確かめるようにデバイスをそっと撫でる。


 ――もし、また魔物が出たら……。


 鼓動が高まり、胸がざわつく。覚悟を決めるように息をすーっと吸い込む。


「じゃあ、いくよ……」


 千代が「いっせーの、せ!」と鼓舞するように声を上げ、扉をガッと開ける。私も咄嗟に右腕で顔を守った。


 ところが。


「……なに、これ……」


 沙知の声の通り、扉の先には誰も想像すらしなかったものがあった。


 一般的な職員室からはかけ離れた無機質な内装。大きく横に広がる大小様々なモニター群。教室のそれとは似ても似つかないテーブル。


 それはまるで、ロボットアニメに出てくるような指揮室のようだった。


「え?職員室は?」

「ここのはず……だけど」


 私の疑問に、千代は確信のない答えを返した。


「一応、入ってもいいんだよね?なんかレーザービームかなんかで殺されないよね?」

「じ……じゃあ試そっか」


 千代は右足の上履きを脱いで、職員室の中に投げてみた。ドサッという音と共に上履きが着地する。


 結果は、特に何も起きなかった。


「安全そう……かな?」


 千代は上履きを拾うべく室内に入った。それに釣られるように、私たちも職員室に足を踏み入れる。


 各々が変貌した職員室の姿に驚きを隠せずに、その一方で興味深そうにテーブルやモニターを眺めている。


「ここ……本当に職員室だったの?」

「なんかSFっぽくてワクワクするな」


 そんな会話を横目に、私は部屋の奥に据えられた巨大な中央モニターへと足を向けていた。


 他のモニターより一回りも二回りも大きく、まるでこの部屋の主人のように鎮座している。その見た目は、まるでガラスのようだった。


「これ、何を表示するものなんだろ」


 私はモニターにそっと触れた。何かが熱くなるような、不思議な違和感が胸に走る。


「なんだろ、この感覚……」


 そう呟いた瞬間だった。


 右腕のデバイスが、激しく光った。


 私の意思とは関係なく、腕全体が白く輝き始める。皮膚の上を光が走り、脈打つように強弱を繰り返す。


「さくら……!?」


 沙知の声が背後で跳ねた。


 私は腕を引こうとしたが、身体が固まったように動かない。デバイスが、何かに強く引き寄せられている感覚だけがある。


 思わず瞑った目を開けた時、職員室の雰囲気はガラリと変わっていた。


 モニターが一斉に起動したのだ。暗かった部屋が白い光で満たされていく。


「なにが起きたの……!?」


 千代をはじめ、室内の全員が驚きの目でモニターを見つめる。


 さっきまで沈黙していた画面に、次々と映像が浮かび上がる。


 校舎の廊下。


 階段。


 食堂。


 校庭。


 しかし、中央のモニターだけは全く異質の映像を映していた。


 細い線が重なり、曲がり、接続し、幾何学的な図形をいくつも形成していく。


 私は言葉を発することすらせず、ただその線の連なりを見つめた。


 数秒後に構築されたもの。それは。


 謎のロボットの図だった。


 人型、だけれども各所が人間とは異なる比率で描かれたロボットの図。


 大きく出張った肩と戦車のように太い脚部。胸には巨大なコアのような円環が存在し、背部からは翼のようなものが伸びている。


 そのモニターの隅に、とある文字が書いてある。


 "MODEL:ZESDIVA"


「ゼスディヴァ……?」


 思わず、私はその文字を口にした。


「これが……このロボットの名前?」

 

 ――こんなものが、この世界にあるの……?


 ビーッ。


 突如、警報音が部屋中から響いた。何人かが耳を咄嗟に塞ぐ。

 

 "WARNING"


 ロボットの図に重なるように、『警告』の文字が表示された。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ