Destiny.4 クラスメイト
「お前……なんだよそれ……」
男子の一人が私の右腕を震えながら指差している。
「お前、なんで戦えてるんだよ?」
「なんでって……分からない……」
私は突き刺さる視線にたじろぎながら、今分かること、つまり分からないという事実を伝えた。
「なんか白い空間が現れて、謎の声が聞こえて、そしたらスマホが変な機械になって……」
「そんなの信じられるかよ!」
男子の声が揺れながらも強く私の胸を貫く。
「あの魔物の仲間なんじゃねえのか?手を組んで俺たちを嵌めてるんじゃねえのか!?」
「そんなわけないじゃない!」
私は声を荒げた。
「私だって何が何だか分からないのに……それでも……」
「そうだよ!さくらはみんなのために勇気を振り絞って戦ってくれたのに、そんな言い方酷いよ!」
言葉に詰まった私を、沙知が援護する。その言葉は、沙知の本心に聞こえた。
沙知の言葉で潮目が変わったのか、クラスメイトの目が和らぐ。
「さくらは私を守ってくれた……今までもずっとそうだった……」
「サチ……」
しゃがみ込み涙を床に垂らす沙知の背を、私はそっと撫でる。
――沙知には、私はそう見えてたんだ……。
「さくら……さんでいいの?」
一人の女子が私に歩み寄ってくる。
「わたし、要千代といいます。あの……さっきはありがとうございました。あなたが居なかったら、わたしたちはみんな死んでたかも……」
千代は両手で私の右手をギュッと握る。温かな温度がダイレクトに伝わる。
「でも、そのスマホ?から剣とかが出たのよね?」
「うん……なんでかよく分からないけど」
「わたしたちのスマホは……」
そう言うと、千代はスカートのポケットからスマホを取り出し、電源ボタンを長押しした。しかし、画面は一向に光らない。
「起動しないんだよね。びくともしない」
「じゃあ、私だけ?」
「そうみたい」
千代が首を縦に振る。眉を若干ひそめながら。
――私だけ……。
その言葉の意味が、皆の胸に浸透するまで時間はかからなかった。
「あいつだけが戦えるのか?」
「私たちは戦えないの……?」
期待と不安が入り混じった視線が、再び私に集まる。さっきまでの疑念とは違う、もっと厄介な種類の視線。
――頼りたいという、視線。
「でも、ずっとなんて無理だよ。今回だってまぐれかもしれないし、なにより、頭が真っ白で……」
皮肉な話だった。
さっきまで死に場所を探していたはずなのに、今じゃ恐怖心に怯えている。
皆の期待に応えられないことへの、恐怖に。
「でも」
誰かが小声で呟いた。
「あいつがいたから、俺たちは今生きてる……」
――生きてる……。
言葉が重りになるように、私の視線が右腕のデバイスに落ちる。
――これ、いつまで使えるんだろう?
――私が死んだら、どうなるんだろう、これ……?
そう思った時だった。
キィン……。
あの音。
全員の目が黒板に向く。
「まただ……」
「今度は何……?」
やがて光の文字はとある単語を形成した。
"SCHOOL EXPLORATION"
"POPULATION:36"
「学校探索?」
私は首を傾げながら言った。
「学校って普通の教室しかないんじゃないの?」
「でも、購買とかパンもありそう」
沙知の言葉に私はハッとした。
――食料ないと、私たち生きられないじゃん。
すると、千代がポンと手を叩いた。
「じゃあ、全員で食料とか探しに行きましょう!他にも仲間がいるかもしれないし」
男子女子問わず皆がざわつきを見せる。
「そうか、他にもいるかもな!」
「俺たちだけってのもありえねえよな」
「そうなると俄然やる気も出るよね」
千代が再び手を叩く。
「なら、そうだな……。戦えるの、さくらしかいないからなぁ……。一人にやらせるのも気が」
「やるよ」
「え?」
千代が私の方を驚いた顔で見る。
「私、やるよ。戦う。一人で」
「さくら……」
「だってそうしないと、満足に生きることも、死ぬこともできないし」
私は沙知の方を向いて、緩やかな笑みを浮かべた。
――弱いと、死に場所すら選べない。藤原くんのように。
だから、戦うんだ。
「でもさぁ、その前に」
「前に?」
「みんなの名前、知りたいなあ。私」
私は千代の胸に付けられた名札を指差して言った。




