表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

Destiny.4 クラスメイト

「お前……なんだよそれ……」


 男子の一人が私の右腕を震えながら指差している。


「お前、なんで戦えてるんだよ?」

「なんでって……分からない……」


 私は突き刺さる視線にたじろぎながら、今分かること、つまり分からないという事実を伝えた。


「なんか白い空間が現れて、謎の声が聞こえて、そしたらスマホが変な機械になって……」

「そんなの信じられるかよ!」


 男子の声が揺れながらも強く私の胸を貫く。


「あの魔物の仲間なんじゃねえのか?手を組んで俺たちを嵌めてるんじゃねえのか!?」

「そんなわけないじゃない!」


 私は声を荒げた。


「私だって何が何だか分からないのに……それでも……」

「そうだよ!さくらはみんなのために勇気を振り絞って戦ってくれたのに、そんな言い方酷いよ!」


 言葉に詰まった私を、沙知が援護する。その言葉は、沙知の本心に聞こえた。


 沙知の言葉で潮目が変わったのか、クラスメイトの目が和らぐ。


「さくらは私を守ってくれた……今までもずっとそうだった……」

「サチ……」


 しゃがみ込み涙を床に垂らす沙知の背を、私はそっと撫でる。


 ――沙知には、私はそう見えてたんだ……。


「さくら……さんでいいの?」


 一人の女子が私に歩み寄ってくる。


「わたし、要千代(かなめちよ)といいます。あの……さっきはありがとうございました。あなたが居なかったら、わたしたちはみんな死んでたかも……」


 千代は両手で私の右手をギュッと握る。温かな温度がダイレクトに伝わる。


「でも、そのスマホ?から剣とかが出たのよね?」

「うん……なんでかよく分からないけど」

「わたしたちのスマホは……」


 そう言うと、千代はスカートのポケットからスマホを取り出し、電源ボタンを長押しした。しかし、画面は一向に光らない。


「起動しないんだよね。びくともしない」

「じゃあ、私だけ?」

「そうみたい」


 千代が首を縦に振る。眉を若干ひそめながら。


 ――私だけ……。


 その言葉の意味が、皆の胸に浸透するまで時間はかからなかった。


「あいつだけが戦えるのか?」

「私たちは戦えないの……?」


 期待と不安が入り混じった視線が、再び私に集まる。さっきまでの疑念とは違う、もっと厄介な種類の視線。


 ――頼りたいという、視線。


「でも、ずっとなんて無理だよ。今回だってまぐれかもしれないし、なにより、頭が真っ白で……」


 皮肉な話だった。


 さっきまで死に場所を探していたはずなのに、今じゃ恐怖心に怯えている。


 皆の期待に応えられないことへの、恐怖に。


「でも」


 誰かが小声で呟いた。


「あいつがいたから、俺たちは今生きてる……」


 ――生きてる……。


 言葉が重りになるように、私の視線が右腕のデバイスに落ちる。


 ――これ、いつまで使えるんだろう?


 ――私が死んだら、どうなるんだろう、これ……?


 そう思った時だった。


 キィン……。


 あの音。


 全員の目が黒板に向く。


「まただ……」

「今度は何……?」


 やがて光の文字はとある単語を形成した。


 "SCHOOL EXPLORATION"


 "POPULATION:36"


「学校探索?」


 私は首を傾げながら言った。


「学校って普通の教室しかないんじゃないの?」

「でも、購買とかパンもありそう」


 沙知の言葉に私はハッとした。


 ――食料ないと、私たち生きられないじゃん。


 すると、千代がポンと手を叩いた。


「じゃあ、全員で食料とか探しに行きましょう!他にも仲間がいるかもしれないし」


 男子女子問わず皆がざわつきを見せる。


「そうか、他にもいるかもな!」

「俺たちだけってのもありえねえよな」

「そうなると俄然やる気も出るよね」


 千代が再び手を叩く。


「なら、そうだな……。戦えるの、さくらしかいないからなぁ……。一人にやらせるのも気が」

「やるよ」

「え?」


 千代が私の方を驚いた顔で見る。


「私、やるよ。戦う。一人で」

「さくら……」

「だってそうしないと、満足に生きることも、死ぬこともできないし」


 私は沙知の方を向いて、緩やかな笑みを浮かべた。


 ――弱いと、死に場所すら選べない。藤原くんのように。


 だから、戦うんだ。


「でもさぁ、その前に」

「前に?」

「みんなの名前、知りたいなあ。私」


 私は千代の胸に付けられた名札を指差して言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ