表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メインヒロインの視界に入ったら即死? ~ギャルゲーの背景キャラに転生したので、魔法を極めてログアウトを目指す~  作者: 沼口ちるの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/40

第4話:極まったモブは、概念すら置き去りにする

「……ねえ、何してるの? それ」


アリスが指差す先で、俺は空中に浮かべた「水球」をじっと見つめていた。 ただの水じゃない。魔力で極限まで密度を高めた結果、黒光りして周囲の光を歪ませている。


「いや、ただの圧縮の練習だよ。もっと小さく、もっと重く……ってやってたら、なんか周りの景色が吸い込まれ始めたんだよな」


「それ、ブラックホールって言うんじゃないの!? 止めなよ、世界が滅んじゃうでしょ!」


「大丈夫だって、ちょっと『これ以上吸い込むな』って命令してるから。それよりアリス、次は『距離』をいじってみようぜ」


「距離……?」


俺は一歩、足を前に出した。 普通なら30センチほど進むはずのその一歩で、俺の体は一瞬で100メートル先の崖の向こう側に移動していた。


「……は?」


「あっちに行きたいなーって思って、地面を『ギュッ』と縮めたんだ。名付けて『縮地モブ・ステップ』。これなら朝寝坊しても教室まで一瞬だぞ」


「……あんた、それ『空間転移』の最上位魔法じゃない。それを寝坊のために使うやつがあるか!」


アリスが叫ぶが、俺の特訓は止まらない。 次は「存在感」の制御だ。


「アリス、俺を殴ってみろ。本気でだ」


「いいの? さっきの全自動防壁で返り討ちにされない?」


「今回は防壁じゃない。ただ、俺のことを『そこにいない』と思い込んでくれ」


アリスが半信半疑で、魔力で強化した拳を俺の胸に叩きつける。 だが、その拳は俺の体をすり抜け、空を切った。


「え……? 手応えがない……。幽霊になったの?」


「違う。俺の存在を、この世界の『レイヤー』から0.01ミリだけずらしたんだ。名付けて**『背景バックグラウンド・レイヤー』**。これなら物理攻撃も魔法も、全部空振りだ」


「……もう、意味がわかんない。ねえ、私たち本当にモブなの? ラスボスより強くない?」


「バカ言え。俺たちは名もなき生徒AとBだ。ラスボスはもっと派手な演出で出てくるもんだろ? 俺たちの魔法は全部『地味』だからセーフだ」


その時、森の奥からけたたましい爆音と、女子の悲鳴が聞こえてきた。 リュミエール王女の声だ。


「助けて、カイル様! この魔物、魔法が効かないわ!」


見れば、学園の演習範囲外から迷い込んだらしい、Aランク指定の凶悪な魔獣『グランド・ゴーレム』が暴れていた。カイルが剣を振るうが、岩の体には傷一つ付かない。


「(……ちっ、面倒なことになったな。あいつらがやられると、後で学園中が大騒ぎになって調査が入る。そうすると俺たちの特訓場がバレるな)」


「(……ねえ、助けるの? それとも逃げる?)」


「(……助けない。けど、**『邪魔』**は排除する。アリス、あれをやろう。特訓の成果だ)」


俺とアリスは、互いの手を握った。 モブ二人の魔力が合わさり、とんでもない密度の「無色」のエネルギーが生まれる。


「生活魔法・出力最大――『お湯』」 「……の、温度だけを抽出して、あいつの内部に**『直接固定』**する」


俺が指をパチンと鳴らした。 次の瞬間、ゴーレムの巨体が内側から真っ赤に白熱し、一瞬で蒸発して消えた。 爆発も、衝撃もない。ただ、そこにあったはずの巨大な質量の物体が、一瞬で「なかったこと」になったのだ。


「……え? どこに行ったの? 魔獣が……消えた?」


呆然とする王女たちを尻目に、俺たちは**『背景バックグラウンド・レイヤー』**を維持したまま、音もなくその場を立ち去った。


「ふう、危なかったぜ。今日の晩飯、ハンバーグらしいから急ごう」 「……あんた、今の絶対『神の裁き』とか呼ばれるやつだよ。自覚しなよ、マジで」


俺たちは夕暮れの学園へと、あくまで「背景」として溶け込んでいった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ