第35話:中盤戦開幕! 魔王軍四天王、来襲
「……兄様。西の空から、不吉な魔力の揺らぎが接近しています。……どうやら、お遊びの時間は終わりのようですね」
裏山でいつものように静寂を楽しんでいた俺の隣で、フィオナが剣の柄に手をかけた。その瞳は、これまで家族に向けていた慈愛ではなく、獲物を屠る「死神」のそれに切り替わっている。
平和(?)だった学園の空が、突如として紫黒色の雲に覆われた。 それは伝説に語られる「魔王軍」の復活を告げる予兆。そして、王都を蹂躙せんと飛来したのは、魔王の懐刀、四天王の一角だった。
「(……ロラン、冗談でしょ!? あの空に浮かんでる巨体……古の竜騎士、四天王の一人『嵐のゼノス』じゃない!)」 アリスがヤカンから激しい蒸気を吹き上げ、戦闘態勢に入る。
「(……ロランくん、学園の結界が紙切れみたいに引き裂かれてる。……逃げなきゃ、モブのレベルじゃないよ!)」 ミナが半ばパニックになりながら、俺の手を引こうとする。
だが、俺は知っていた。 この学園には、もう「逃げる」という選択肢は残されていない。なぜなら、俺の周りには、世界最強クラスの「規格外」が揃いすぎてしまったからだ。
「……ふん、下等な人間どもめ。我が竜の息吹で、この学園ごと塵に――」
空中で偉そうに口上を述べるゼノス。だが、彼の言葉は最後まで続かなかった。
「……五月蝿いですね。兄様の昼寝を邪魔する権利が、貴方にでもあると思っているのですか?」
フィオナが、地面を蹴る音すら残さず空へと跳んだ。
「一人一人、丁寧に処理して差し上げます。……まずは貴方からだ、トカゲ擬き」
俺の「モブ生活」を脅かす最大の敵、魔王軍。 対するは、兄を愛しすぎる最強の妹、神に祭り上げられた親友、そして透明すぎる少女と沸騰するお湯使い。 史上最も「モブから遠い」中盤戦の幕が、今、切って落とされた!




