第27話:回想・蹂躙の入団試験(ご褒美のために)
「……兄様、あの日のことは今でも鮮明に覚えています。私の人生が、本当の意味で『兄様のための剣』として決まった、あの輝かしい一日のことを」
裏山でフィオナが語り始めたのは、数日前、彼女が騎士団の門を叩いた「あの日」の回想。 ロランの目論見とは裏腹に、そこにはモブの欠片もない「蹂躙の記録」があった。
あの日、王都騎士団の訓練場は、新入団希望者たちの熱気に包まれていた。 だが、受付に現れた銀髪の少女——フィオナは、周囲の男たちなど路傍の石か何かのように無視し、試験官の前に立った。
「ド・モール家が娘、フィオナです。最短でトップになれと兄様に命じられました。……今すぐ、一番偉い人と戦わせてください」
「ははは! お嬢ちゃん、ここは騎士団だ。まずは基礎体力測定から――」
試験官の言葉が終わるより先に、フィオナの魔力が爆発した。 彼女がただ一歩、踏み込んだだけ。それだけで訓練場の石畳が同心円状に砕け散り、居並ぶ受験者たちはその風圧だけで壁まで吹き飛ばされた。
試験①:対集団戦闘
「……面倒です。まとめてかかってきてください」
試験官たちが慌てて招集した現役騎士100人。彼らは「新人の教育」のつもりで剣を抜いた。 だが、フィオナは剣すら抜かなかった。 彼女が「身体強化」を施した掌を地面に叩きつけた瞬間、衝撃波が地走りのように広がり、100人の騎士は一瞬で宙に舞った。
「(兄様は仰いました……『効率的な掌握』こそが肝要だと。なら、立っている時間を削るのが一番の効率です)」
試験②:対・副団長(第5位〜2位)
「おいおい、冗談だろ……」 騒ぎを聞きつけて出てきた、騎士団序列第5位から第2位の猛者たち。 彼らは、フィオナの瞳に宿る「兄への狂信的な執念」を見て本能的に悟った。これはただの入団試験ではない、狩りだと。
第5位の剛剣使いが斬りかかるが、フィオナは紙一重でかわし、彼の喉元に指先を添えた。 「……隙が多すぎます。兄様なら、今の間に三回はあなたを『背景』に変えていました」
そのまま第2位までの副団長クラスを次々と「技術と魔力の暴力」で圧倒。 訓練場は、数分前まで王国の精鋭たちがいたとは思えないほど、静まり返った「死体(気絶者)の山」と化していた。
結末:そして第1位、騎士団長
最後に現れたのは、不動の第1位・騎士団長グレイ。 彼はフィオナの剣筋を見て、冷や汗を流しながらもその一撃を受け流し、老練な技術で彼女を制した。
「……そこまでだ、娘。今の君では、私を倒すにはあと一歩、執念が足りない」
「……くっ、ご褒美まで……あと一歩だったのに……ッ!」
こうして、フィオナは「入団初日にトップ以外を全員ボコボコにする」という、前代未聞の記録を打ち立てて5位にランクインした。 騎士団長は、その日以来「夜も眠れないほど恐ろしい少女が入ってきた」と、胃薬を常用するようになったという。




