第24話:最強の妹は、兄(モブ)を追い詰める
「……何かの間違いだろ。あいつが、なんでここにいるんだ?」
アルが「国家守護神」という名の生き神様として神殿に隔離され、学園にようやく(物理的な)静寂が戻ってきたと思った矢先。俺、ロランの平穏なモブ生活を根本から揺るがす、最大の「イレギュラー」が校門をくぐった。
新入生入学式。Aクラスの精鋭たちが華々しく紹介される中、一人の少女が注目を集めていた。 俺の妹、フィオナだ。
銀髪のポニーテールを揺らし、凛とした佇まいで歩く彼女は、我が家系における「突然変異の天才」だった。魔力量はカイル以上、剣術はマリア会長と互角。本来なら、王宮魔導師団が内定していてもおかしくない逸材だ。
(……あいつ、実家で『兄様と同じ道を行きます』って言ってたけど……。まさか、Aクラスの特待生枠を蹴ったのか?)
嫌な予感がした。 その予感は、クラス分け発表の掲示板の前で確信に変わった。
「……いた。Dクラス、ロラン・ド・モールの次……『フィオナ・ド・モール』。……ふふ、やっぱり兄様のお隣ですね」
「……フィ、フィオナ!? お前、何考えてんだ! お前の成績ならAクラスどころか、飛び級で卒業できるだろ!」
俺は周囲にバレないよう、物陰に妹を引きずり込んで問い詰めた。だが、フィオナはどこ吹く風で、俺の胸元にスッと顔を近づけてクンクンと匂いを嗅いだ。
「兄様。Aクラスなんて、目立つだけでメリットがありません。真に効率的な修行は、監視の薄いDクラスで行うべき……。これ、兄様が昔、寝言で言っていた『モブの極意』ですよね?」
「(……俺の教育が、変な方向に英才教育しちまってた……!)」
フィオナは、俺が必死に作り上げた「背景技術」を、その圧倒的なスペックで完璧に模倣しようとしていた。
「(……ちょっとロラン、あの美少女、あんたの妹なの!? オーラが全然『背景』じゃないわよ。隠しきれてない『主役』の波動が出てやがるわ!)」 アリスがヤカンを震わせながら警告する。
「(……ロランくん、ダメだよ。あの子が入ってきたせいで、Dクラスの平均魔力値が爆上がりして、学園の観測装置が壊れちゃった……)」 ミナも、透明化したまま絶望の報告をしてきた。
「兄様、安心してください。私は兄様の『静かな生活』を全力でサポートします。……邪魔な存在(カイルやマリア会長)は、私が裏で『処理』しておきますから」
「やめろ! お前が一番目立ってるんだよ!」
妹は、兄を慕うあまり、兄の「モブ活動」を「最強の武力」で守護しようとする、本末転倒な守護神へと覚醒していた。
こうして、アルという「外からの光」に続き、フィオナという「内からの爆弾」を抱えることになったロラン。 俺のモブ人生は、身内という最強の敵(味方)によって、いよいよ修復不可能なレベルで崩壊し始めるのだった。




