第23話:抗えぬ光、避けられぬ運命
「……無駄だ。俺たちがどれだけ足掻いても、こいつの『因果律』が輝きすぎてやがる」
学園の裏山、秘密の作戦会議室(ただの洞窟)。俺は、アルを「背景」に戻すための108の作戦が書かれたメモを、無造作に焚き火へ放り込んだ。
俺たちが仕掛けた「スター引退大作戦」は、すべてが最悪の形で裏目に出た。
まず、舞台上でアルが光に包まれて消える「昇天偽装作戦」。 ミナの風と俺の空間転移で完璧に消したはずが、観客たちは「神が奇跡を見せた! アル様はやはり天の御使いだ!」と確信。翌朝には学園の正門前に、アルを祀るための巨大な石像が建立された。
次に、アリスの特製「お湯(超高温蒸気)」で周囲の視界を遮り、アルをデブにする魔法をかける作戦。 蒸気が晴れた後、むくんだ顔で現れたアルを見て、ファンたちは「役作りのために自らの美貌すら犠牲にする、真の芸術家魂!」と号泣。かえって評価が爆上がりしてしまった。
「(……ねえロラン。もう諦めたら? この子、呼吸してるだけで世界が勝手に物語を更新していくわよ)」 アリスが、沸騰したヤカンを見つめながら乾いた笑い声を漏らす。
「(……僕も、もう風で噂を消すの疲れたよ……。消せば消すほど『神秘性が増した』って言われるんだもん……)」 ミナも、透明化したまま力なく地面にへたり込んでいる。
「ロランくん……。僕、もう無理だよ。今朝、学園の食堂に行ったら、僕が座った椅子が『聖遺物』としてオークションにかけられてたんだ……。僕はただ、座ってメロンパンを食べたかっただけなのに……!」
アルの嘆きは切実だった。 だが、その時。学園のスピーカーから、クラリス先生の狂喜乱舞した声が響き渡った。
「全生徒に告ぐ! 本日、アル殿の『国家守護神・叙任式』が執り行われることが決定した! これを祝し、本日は国民の休日とする!」
「……国家守護神?」
俺は天を仰いだ。 もはや一学園のスターなどという次元ではない。 アルはついに、この国の「概念的な守護神」として、憲法レベルで特別扱いされる存在になってしまったのだ。
「……アル、おめでとう。お前、もう『モブ』の対義語になったな」
「嫌だぁぁぁ! そんなの嫌だぁぁぁ!!」
アルが叫ぶと、空から祝福の光が差し込み、彼の周囲にだけ美しい花びらが舞い散る。……彼の「無効」の魔力すら、この「世界そのものからの寵愛」を打ち消すことはできなかった。
こうして、ロランたちの「平穏な日々」への抵抗は、無残にも敗北に終わった。 どれだけ泥を塗ろうと、どれだけ影に隠そうと、アルセウスという男の輝きは、世界がそれを許さない。
俺たちは、眩しすぎて直視できない「守護神」となった親友の背中を見守りながら、せめて自分たちだけは「ただの背景」であり続けようと、固く誓い合うのであった。
(完……? いや、モブたちの戦いはこれからだ!)




