第22話:モブからスターへ、銀幕の「無効(キャンセル)」不能な輝き
「……ちょっと待て。俺は『ほとぼりが冷めるまで』って言ったよな? なんで火に油を注ぐどころか、国中のガソリンをかき集めて着火してんだよ!」
裏山の岩陰。俺は、手元に届いた「学園外」の新聞を見て、持っていたメロンパンを落とした。 そこには、アルが不敵な笑みを浮かべる写真と共に、デカデカとこう書かれていた。
【世紀の発見! 伝説の王族の再来か? 彗星のごとく現れた超新星アル!】
事の始まりは、アルのあの「傲慢な暴君演技」だった。 あまりに迫真すぎる(必死すぎる)彼の演技を、学園に潜んでいた「国内No.1脚本家」のゴールデン・ベル氏が目撃してしまったのだ。
「あの傲慢な眼差し、あの世を捨てたような冷たい美貌……! 彼こそが、私の新作『滅びの王』の主演に相応しい!」
スカウトされたアルは、当初「役者になれば学園から出られる(=親衛隊から逃げられる)」という安易な考えで承諾してしまった。 ……だが、それが間違いだった。
一週間後。 アルが主演した短編映画が公開されるやいなや、国内は未曾有の「アル・パニック」に陥った。
「(……ねえロラン、街の掲示板見た? アルが『微笑むだけで枯れ木に花が咲く』っていう噂がマジの奇跡として広まってるわよ)」 「(……ああ。ミナ、お前の隠密魔法でアルのポスターを剥がして回るの、もう無理だ。追いつかねえ)」
今やアルは、学園のアイドルどころか、王国の「国家的至宝」へと昇り詰めていた。 学園の門には、クラリス先生率いる70人の親衛隊だけでなく、国中から集まった数千人のファンが押し寄せ、もはや学園機能は麻痺状態。
「ロランくん……助けて……! 今度は『隣国の姫』から求婚の親書が届いたんだ……!」
死にそうな顔で、ステルス状態のミナを頼って俺の元へ逃げ込んできたアル。だが、その衣装は映画の撮影用と思われる「純白の軍服」のままだ。……いや、その格好で来たら一発でバレるだろ。
「……アル、お前。もう『ほとぼり』なんてレベルじゃねえ。お前は今や、この世界の中心だ。……役者デビューしてスターになるなんて、モブの対極だぞ!」
「だって……演技をすればするほど、みんなが『本当の僕じゃない』って幻滅してくれると思ったのに……! 演技が上手すぎて『ミステリアスな隠れ家(Dクラス)の貴公子』って設定が追加されちゃったんだ!」
アルが頭を抱えて叫ぶ。 その時、学園全体を揺るがすような大歓声が聞こえてきた。脚本家のベル氏が、王国の近衛騎士団を引き連れてやってきたのだ。
「アル様! 次回作の舞台は王都の劇場です! 国王陛下も首を長くしてお待ちです!」
「(……ロラン、これどうするの? このままじゃアル、王宮に幽閉されてマジの神殿に住まわされるわよ)」
俺はアルの絶望的な顔を見て、一つだけ無茶な作戦を思いついた。
「……よし、アル。こうなったら、『スターとしての自分』を自分で『キャンセル(無効化)』するしかねえ。……ただし、これには俺とアリスとミナの全力のアシストが必要だ」
「やるよ! 何でもやる! 僕は、ただのDクラスのパンの耳をかじる男に戻りたいんだ!」
銀幕のスターへと駆け上がってしまったアル。 彼を再び「背景」へと引きずり戻すための、国家を巻き込んだ壮大な「モブ復帰大作戦」が幕を開ける。




