表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メインヒロインの視界に入ったら即死? ~ギャルゲーの背景キャラに転生したので、魔法を極めてログアウトを目指す~  作者: 沼口ちるの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/40

第2話:モブとモブが手を組むと、だいたい変なことになる

「……ねえ、本当にこれで強くなれるの?」


隣でジト目を向けてくるのは、同じDクラスの女子生徒、アリスだ。 彼女も俺と同じ。茶髪を適当に結んだだけの、ゲームの立ち絵すら怪しい「モブ女子A」である。


「たぶんな。ほら、アリス。その指先に魔力を込めて、こう、シュッとしてドカンだ」


「説明が雑すぎるんだけど!? そもそも私、魔法適性『生活魔法』しかないんだよ? お湯を沸かすとか、服を乾かすとか……」


「いいじゃねえか、お湯。沸騰するってことは熱いんだろ? それをギュッと凝縮して飛ばせば、相手はアチチってなる。立派な攻撃だ」


俺の適当な理論に、アリスは「はあ……」と深くため息をついた。 だが、彼女も俺と同じ「魔王軍イベントで死ぬ側」の人間だ。 俺が「死にたくなかったら特訓しようぜ」と誘ったら、半信半疑ながらもついてきた。


「いいかアリス。メインキャラたちは『聖なる光』とか『爆炎』とか派手なのを出すけど、あんなの燃費が悪いだけだ。俺たちの目標は、省エネで確実に生き残ること。つまり――『見えない、避けられない、でも当たると超痛い』だ」


俺は指先から、極細の熱線をスッと出した。 それは音もなく空気を切り裂き、遠くの木の枝を一本だけ、音もなく地面に落とした。


「……今、何したの? 魔法の音もしなかったけど」


「音を出すのは魔力の無駄遣いだ。ただ熱だけをそこに置く。アリスもやってみろ。お湯を沸かすイメージを、指先の1ミリ先に集中させるんだ」


アリスは渋々、俺の真似をして指を突き出した。 彼女は俺と違って真面目だ。俺が教えた「魔力の圧縮」を、バカ正直に、一分、二分と繰り返す。


「……あ。なんか、熱い。指の先が、すごく熱い気がする」


「いいぞ、そのまま……あ、待て、出しすぎるな!」


シュンッ!!


アリスの指先から放たれたのは、細い針のような「超高圧熱水」だった。 それは弾丸のような速度で飛び、背後の大岩を貫通。さらに後ろの木々をなぎ倒して消えていった。


「…………え?」 「…………あ。」


アリスが呆然と自分の指先を見つめている。 ちなみに、今の威力は中級魔法『ウォータージェット』を遥かに凌駕している。生活魔法の「お湯」を圧縮しすぎて、物理的にすべてを貫通する凶器に変貌させてしまったらしい。


「アリス、お前……才能あるな」 「いや、絶対おかしいよこれ! 生活魔法だよ!? お茶淹れるための魔法だよ!?」


「まあ、お茶も熱けりゃ武器になるってことだ。深く考えるのはよそうぜ。次は『気配を消して背景になる練習』だ。ほら、あそこに王女様たちが通りかかったら、スッと岩になりきるんだぞ」


「そんなことできるわけな――」


その時、山のふもとから、キラキラしたオーラを放つ一団が見えた。 カイルとリュミエール王女たちだ。どうやら野外演習の最中らしい。


「来た! アリス、岩だ! 岩になるんだ!」 「えっ、ちょ、無理……んんんっ!!」


俺とアリスは、魔力で自分たちの存在感を極限まで薄め、泥をかぶって道端にうずくまった。 名付けて、極限魔法『背景透過テクスチャ・バイパス』。


「……ねえ、カイル。今、何か凄い魔力の余波がしなかった?」 「気のせいだろう、リュミエール。このあたりには強い魔物もいないし……。それより、次の課題の相談なんだが」


王女様たちは、俺たちのすぐ横――1メートルの距離を通り過ぎていった。 俺たちのことは、道端の小石か何かだと思っているらしい。


「(……やったぜ、完全勝利だ)」 「(……ねえ、これ本当に騎士の特訓なの? 完全に不審者じゃない?)」


アリスの心の声が聞こえてきそうだが、俺は気にしない。 命を守るためなら、俺は喜んで背景の一部になってやる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ