第13話:モブとゆかいな仲間たち(収拾不能)
「……おかしい。何かがおかしい。俺は平穏な背景ライフを求めていたはずなのに、どうして周囲にこんな『濃い』やつらが集まってやがるんだ?」
放課後。俺、ロランはいつもの裏山の隠れ家(という名のただの崖っぷち)で、ため息をついていた。 隣には、もはや「お湯」の概念を物理法則の破壊に使い始めたアリス。 そして、気配を消しすぎて時々俺でも見失うミナ。 さらに、なぜかここに「当然のように「ロランくん! この『お茶』、すごくいい温度だよ。アリスさんが淹れてくれたの!」
透明化したまま声をかけてくるミナ。空中でお茶入りのカップだけが浮いている光景は、初見なら間違いなく怪奇現象だ。
「当たり前でしょ。分子の振動数を茶葉が一番喜ぶ状態に固定したんだから。……あ、じいさん! 勝手に私のお湯で足湯しないでよ!」
「ほっほっほ、アリス君。君の『加圧熱水魔法』は、老いさらばえたわしの腰に実によく効くわい。これぞ真の癒やし魔法よ」
そこには、世界最強の魔導師、大賢者ブラスタがタライに足を突っ込んで寛いでいた。……おい、あんた一国の守護神だろ。
「ロラン、あまりブラスタ様をいじめるな。彼は彼で、君たちの『不自然なほど自然な動き』を研究しているのだから」
さらには、生徒会長のマリアまでが、大剣を傍らに置いて俺の隣で弁当を広げている。
「……なぁ、会長。ここ、Dクラスの、それも『名前もないモブ』のたまり場なんだけど。Aクラスのキラキラした連中とランチしなくていいのか?」
「何を言うんだ。あそこは肩が凝る。君たちと一緒にいる時が、一番『自分を消せる』気がするんだ。……あ、卵焼き食べるかい?」
(……だめだ、こいつら。俺たちが必死に作った『モブの防壁』を、土足で踏み越えて楽しみ始めてやがる!)
その時、森の茂みがガサリと揺れた。
「……いた! ロラン、そこにいるんだろう! 僕と勝負――」
現れたのは、ゲームの主人公カイルだ。 だが、彼は俺たちの姿を見つけるなり、その場に固まった。 大賢者が足湯をし、生徒会長がモブと卵焼きをシェアし、空中に茶碗が浮いているという、地獄のようなシュールな光景を目の当たりにしたからだ。
「……あ、カイルくん。お疲れ。今、忙しいから後にしてくれ」
俺は死んだ魚のような目で、カイルに手を振った。
「……え、あ、うん。……お邪魔しました」
流石の「勇者の血を引く主人公」も、この異様な空気には勝てなかったらしい。彼はそっと茂みに戻っていった。
「(……よし、カイルを追い払ったぞ。これで少しは静かに……)」
「ロラン! 大変よ、あっちの茂みにクラリス先生が潜んでこっちをスケッチしてる!」
アリスの声に振り向くと、木の上で必死に俺たちの動きをメモしている聖騎士の姿があった。
「……もう、どいつもこいつも『背景』になれよ! 俺みたいにな!」
俺の叫びは、今日も夕暮れの裏山に空しく響くだけだった。」馴染んでいる想定外の面々がいた。




