表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メインヒロインの視界に入ったら即死? ~ギャルゲーの背景キャラに転生したので、魔法を極めてログアウトを目指す~  作者: 沼口ちるの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/40

モブは背景に徹したい

「……よし、今日も俺の顔は薄いな」


朝、寮のひび割れた鏡を見て、俺は満足げに頷いた。 どこにでもいる茶髪、どこにでもいる三白眼、そして覇気のない顔。まさにギャルゲーの背景に描かれる「その他大勢」のテンプレだ。


ここが前世でやり込んだギャルゲー『聖エトワール騎士学園の乙女たち』の世界だと気づいたのは、三日前。 普通なら「聖剣を探そう」とか「ヒロインを攻略しよう」とか考えるんだろうが、俺は違う。


だってこのゲーム、中盤の『魔王軍襲撃イベント』で学園の生徒が半分くらい死ぬんだもん。 特に俺みたいな名前も顔グラもないモブは、悲劇を演出するための「死体役」として真っ先に処理される運命にある。


「難しいことはよくわかんねえけど、とにかく死ぬのは嫌だ。なら、強くなるしかないよな」


俺は学園の裏山にある、誰も来ない崖っぷちに向かった。 授業? そんなもん出たって、先生はメインキャラにしか熱心に教えない。モブの俺が行っても「あ、いたの?」くらいの扱いだ。だったら自習した方がマシである。


「えーっと、確か設定資料集だと、魔力ってのは『お腹のあたりをぐーっと熱くして、指先からピピッと出す』感じだったはずだ」


我ながら、実にアホっぽい理論だと思う。 だが、この世界はイメージがすべてだ。俺は目を閉じ、腹の底にある熱い塊を、右手の指先に集中させた。


――パチッ。


「お、出た」


指先から小さな火花が散る。 普通の生徒ならここで「魔法の基礎ができた!」と喜んで教室に戻るんだろうが、俺は考えるのが面倒なので、そのままその火花を一日中出し続けることにした。


「これを……こう、細く、長く……。針の穴を通すみたいに……」


気がつくと、日は暮れていた。 指先からは、レーザーカッターみたいな細くて鋭い熱線が出ている。 目の前の大岩に向けて指を振ってみると、チーズみたいにスパスパと切れた。


「……あれ。これ、意外と簡単じゃね?」


まあいい。これだけ切れれば、魔王軍の雑魚くらいなら追い払えるだろう。 俺は満足して寮への道を歩き始めた。


その時だ。


「……待ちなさい」


背後から、鈴を転がすような、でも氷のように冷たい声がした。 振り向くと、そこには銀髪をなびかせた超絶美少女が立っていた。 このゲームのメインヒロインにして、王国の第一王女。リュミエール・ド・ラ・ヴァリエール様だ。


(……やべえ。メインキャラだ。関わると死ぬ)


俺は直感した。 ここは、反射的に逃げるべき場面だ。


「あ、すみません。俺、門限なんで」


「待てと言っているわ。……今、その岩を切ったのは貴方?」


彼女は俺がさっき細切れにした大岩を指差している。 やばい。目立っちゃったか? いや、でも俺はモブだ。モブが岩を切るわけがない。


「いいえ、風の仕業じゃないっすか? 自然の力ってすごいですよね。じゃ!」


俺は全力で走った。 背後で王女様が「そんなわけないでしょう!?」と叫んでいるのが聞こえたが、聞こえないふりをした。


あー、お腹空いた。今日の食堂のメニュー、なんだっけ。 メインヒロインの顔より、明日のパンの硬さの方が、今の俺には重要だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ